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魔法想花の小さな庭園  作者: 流水一
新章ー大陸を歩くー『精霊の住み処』
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なんと!?

「ん?来たか......」


私とアクセルさんの二人は、先行していたシユウさんとアサギリさんに追い付きました。

そこは、周りに飛び散る気色悪いゲル状の体液を撒き散らして絶命したモンスターの死骸と、そのすぐ側で、アサギリさんに介抱されている少年がいました。


「ごほっごほ、うぅ」

「もう大丈夫ですわ」


咳き込む少年の背中をアサギリさんが擦っていました。

少年は黒髪黒目の前世の世界の住人のような出で立ちでした。

身長は今のチビな私よりちょい高いくらいでしょうか?

あと服が溶けていて全裸でした。


「この木を溶かす粘液からしてスラポンですか?」

「うむ、来たときには呑み込まれたあとだったのでな」


危なかった、そういうアクセルさんとシユウさんの話を聞きつつ、周りを見回すと確かに、ここら一帯が、じゅうう、という音を立てて溶け出していることに気がつきました。

あれ?確かいつも誰かに、スラポンくらい倒せとか言われた気がして来ましたけど......


「植物である私にこんなの相手に出来るわけがないです!!」

「アン?突然叫ばないでくださる?」


叫んだ私に少年がビクッとしてしまったようで、アサギリさんに呆れた目を向けられました。

でも、ですよ?

生えてる木がステーキを焼く音立ててるんですけど!?

私は絶対に近寄りませんからね!!

大体なんでみんな平気なんですか!


ジリっ、と後ずさりする私。


「ここら辺はスラポンの生息地ってありましたっけ?」

「いや、聞いたことないぞ?大方その少年と一緒に売り捌く予定だったと思うぞ」

「うへぇ、ニンゲンは考えることがわかりませんね」

「しかし、どこの世も闇があるものだぞ?」


話を聞いて嫌悪感を顕にするアクセルさん。

シユウさんは仕方ないという顔をしていました。


話を聞くにつまり......


「奴隷の子供ですか?」


私が言った奴隷という声が聞こえたのか、少年はビクッとして、助けてくれたアサギリさんをすがるように見ていました。


「まぁ、頼られてますわ私!!」

「だめ、あのひ.....や、やだぁ」


アサギリさんはいつも通りなんでスルーしますが......少年が私を見たときの震え様.....

心外ですね!なんで怯えた目で私を見るんですか?

私に向けられる視線は明らかに拒絶を示していました。

ある意味ショックです.....しょっく。


がっくり項垂れて、少年から更に距離をとりました。

というか、私はあんな惨状の中心に近づく気は起きませんけど.....

だってゲームで言うところの毒継続ダメージ受けそうですよ!

シユウさんやアクセルさんはまだしも、なんで同じ植物系のアサギリさんが平然としているのか訳がわかりませんよ。

この粘液どう見ても植物特化している気がするのですけど....解せません。


私が更に離れたことで、少年がホッとしたように、表情を和らげているところを見てしまいました。

泣きたい気持ちで一杯ですよ。

私が発見してあげたんだから、感謝して欲しいところですよ!!


『Pipi?』


若干不貞腐れた私を、頭の上から心配してくれるメリーさんの優しさが胸に染みます。

はっはっはっ、こやつめ、可愛いやつよ......

頭から下ろしたメリーさんを抱き抱え、やさぐれた心を癒していると頭の中に声が響きました。

そう、ルシャです。


『......思ったんですけど、武器(これ)のせいじゃないのですぅ?』


ルシャが示したのは私が、遅れを取らないように庭園から呼び出した高枝伐りばさみを指しているようです。しかし、これは確かにエルシュさんがやり過ぎた魔改造をしてくれましたけど、特別怖がられる要素なんて......あ!


でも、そうなるとあの少年は......


「あ、ありがとうご、ざいます」

「おほほほ、いいのですわ!」

「はいはい、それより服を着なさい」


だんだんと落ち着いてきた少年は、恥ずかしそうに体を隠していました。

少年に感謝され嬉しそうにするアサギリさんを手でどかし、少年に服を渡すアクセルさん。

たぶんですが、アクセルさんの予備の服でしょう。

シユウさんのものではでかすぎますし、それにアサギリさんと私は魔力で生成しているので持っていませんから。


アクセルさんにお礼を言った後、その場で服を来ていくのですが、下着を手に取り一瞬躊躇ったのち着ていきました。

ん?ああ、女物だからちょっと戸惑ったんですね。

アクセルさんの予備の服はスカートではないにしても可愛らしい服でした。

サイズはちょっと大きいくらいで問題なさそうです。

少年は着終わった後もちょっと恥ずかしそうにしてましたが、触れないのが吉ですね。

でも......


「ちょー似合ってますよ!」

「えぁ、うぅ」


私の言ったことで更に顔を赤くしてうつむく少年。

私が受けた精神的ダメージの分だけ仕返ししてやりますよ!!

でへへへ。


『......ほんとにそういう所がそっくりなのですぅ』


飽きれ気味のルシャの声をスルーします。

受けたら返す!これは真理ですよ!心理!


恥ずかしながらもこちらを睨み付ける少年に私は、ハートフルな笑みで.....


「めっちゃかわいっっったあああああああ!?」

「おほほほ、少しおいたが過ぎるようですわね?」


私はアサギリさんに頭をガシッと持たれ、木陰に運ばれていきました。



――――――――――――――――


はっ、頭が痛い。

私は何をしていたのでしたっけ?


目が覚めた私は痛む頭を押さえ、ついさっきの出来事を思い出そうとしますが、思いだせません。

唯一覚えているのは、アサギリさんコワイってことだけです。


「あぁ、起きましたか?」

「アクセルさん?」


私が体を起こして周りを見ると、そこは私たちが始めに訓練していた場所でした。

日はもう沈み、周りは真っ暗。

闇夜に浮かぶ月は三日月。

仄かな明かりでした。


パチッと何かが弾ける音をしていたので視線を向けると、焚き火がありました。

私たちは焚き火を囲んでいるようでした。

隣にはアクセルさんが座っており、焚き火の灯りに照らされた顔は真剣で、足元に何かしらの魔方陣を書いているようです。


私右隣、つまりアクセルさんと反対側の位置にはシユウさんが腕を組んだまま目を瞑っていました。


「ん、どうした?」


私の視線に気づいたシユウさんは問い掛けて来ました。


「いえ、今どういう状況なのかな?って思いまして」

「ああ、今は闇奴隷商人の撃退戦の最中だぞ」


.......はぁ!?


私が寝ている間に何を!?いやいやいや。

あの人は、私が気を失ってる間に!!


「アサギリさんはどこに!?」


ぱっと周りを見回す私ですが、アサギリさんは見つかりません。

あ、あと、あの女装少年も。

メリーさんに至っては私が気を失ったことで魔力供給が切れて送還されています。

ルシャの探知能力はなぜか半径50m以上は関知できないですし。


「うむ、安心するといいぞ、ここ一帯は魔女殿の幻惑結界が張られているのだぞ」

「はぁ、はぁ.....」


探知できないのそれですか.....納得の私です。

私はアクセルさんを見ますが、物凄く真剣な余裕のない表情から、感じたことは違います。

シユウさんはそういいますけど、どうみても切羽詰まっているようにしか見えないんですけど.....

不安になる私に新たな声が聞こえました。


「闇商人諦めないみたいですわ」


現れたのはアサギリさん。

と腕を繋ぎこちらを睨み付ける少年。


ってあれ?なんで探知にかからないんでしょうか?

ここまで視認するまで気づきませんでした。

ポカンとする私。


『植物精霊というか精霊種は【サーチプロテクト】を掛けれるのですよ』


私の思ったことをルシャが教えてくれました。

いわく、長い歴史のなかで精霊狩りなどが蔓延った時代に、新たに生まれた魔法なんだとか....


まぁ、それはいいとしてこの状況の説明をしてほしいのです。


「アサギリさんどういうことです!?」


私の問い掛けにやれやれといったしぐさをするアサギリさんと、私の声に何かとビクッと反応して私をイラつかせる少年....


「実はこの子は混血種らしいのですわ」

「混血種ってハーフのことですよね?」


頷き不安そうな少年の頭を撫でる。


「植物と.....」


それは何となく予想していましたけど....

溜めを作ったアサギリさんは言いました。


「魔王のハーフですわ」


.......うっそぉ




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