集中!集中です!!
「うわぁ.....」
「初めて見たって顔をしていますけど......外に出たことがないんですか?」
感嘆の声を洩らした私の隣を歩くアクセルさん。
アクセルさんに言われ、今までの外の景色を見たことがないか思い出してみますが、あるのは魔性の森とコンクレント湖上都市のレーゼン湖の上空を飛んだくらいですので、そう考えると.......
「そう言われれば、落ち着いて景色を見たのは初めてかもしれません」
「そうなんですか?」
少し考え込むアクセルさん。
それにしても、この景色!絶景ですよ!
南大陸サーセルブの北端に位置するこの都市は綺麗な港町が隣接していて、貿易も盛んに行われているようだ。北門を抜けて3キロ程歩くと、この都市に連なる大型港町『レビオル』があるらしい。
今回はそこへと繋がる街道で魔法講座を開いてくれるのです。
マニフェレンの街中にも魔導師が魔法講座を開いていたが、あっちも魔女族がやっているのかもしれませんね。
「アクセルさん!よろしくお願いします」
「はい!!それではさっそく.....」
丁度いいなだらかなスペースを見つけ、アクセルさんに頭を下げる。
アクセルさんは早速、杖を懐から取り出しました。
「では、アン......これを練習用に渡しておきますね」
私は受け取り杖を眺めます。
杖は丁度30cmくらいの小型なものでした。
てっきり、ナチュリオレさんやアクセルさんのような、身長並みにでかい杖でやるもんだと思っていましたが、どうやら違ったようです。
私的には、綺麗に磨かれてツルツルつやつやの杖でも十分満足です。
そしてあることに思い到りました。
ファンタジー映画では、杖で魔法発動の補助をしているように見受けられます。
ということは、例え適性値が低くても杖を持てばちゃんと属性魔法が使えるのではないか.......
私は早速集中して、体の中の魔力の流れを感じとります。
魔力を感じとる訓練は、シュレイさんに叩き込まれましたので抜かりはありません。
だんだんと杖の先に魔力が集まってくる感覚が......
私はキッと目を見開きま一点に向かって杖を向けました。
「ファイヤー・ボール!!」
溜め込んでいた魔力が四散する感覚。
杖に貯まった魔力が弾け、バスンという音だけが聞こえました。
「......」
どうやら失敗みたいです。
「やはり、そう簡単にはいきませんか......」
決めていたポーズを解き、遠くを眺め黄昏ていた私の後頭部に衝撃が走りました。
「って、何を勝手にやってますか!」
「いたい!」
大きな宝玉の付いた杖で頭をベシッと叩かれた私は、叩いた本人へと向き直ります。
「杖を渡した瞬間にこれですか.....少しは落ち着きを持ってください」
ため息を吐き、「それじゃ子供以下ですよ」というアクセルさん。
すいません、アクセルさん、子供以下ってどういう扱いなんでしょうか......聞きたいけど聞きたくないような......
「だいたい、そっちの適性はゼロって言ったじゃないですか!」
「う、もしや杖があれば使えると......」
そういう私に、アクセルさんは少し間を置きました。
「そんなこと......あるわけないじゃないですか!!」
「溜めてまでハッキリ言われた!?」
魔女族である自分が適性を見たのだから間違うはずない!
とのことで、私の才能の無さを強調したわけではないと思いたいです。
そうして、初めての魔法講座が始まったのですが......ですが!!
「ふむ、では先の対戦ではイシュリカの結界が張られたのか?」
「ええ、その亜種でしたが、華麗に突破したのですわ!」
「ほほう.....」
私とアクセルさんが色々とやっている場所から少し離れた所にレジャーシートを広げ、その上で朗らかに会談しているアサギリさんとシユウさんは、一体ここに何しに来たんですか!
そう言いたいです。
「ほら、気が乱れてますよ!しゃんとしてください」
「う、はい!」
あの二人を見て気を散らしてしまったので、アクセルさんに注意されました。
くぅ、あの二人はいないと考えることにして、再び集中を高めていきます。
魔力が体全体をオーラのように覆い、私自身も溢れる魔力を視認できました。
なんかサ○ヤ人みたいになってますね。
翡翠色の綺麗なオーラを纏った右手を開いたり、閉じたりしてみるとオーラもそれに合わせて増減しました。
私は纏ったオーラを眺めます。
「すごい、これが......」
『ただの障壁手前の魔力溜まりじゃねーですか.....』
私の周りを飛び回る光の玉が、『なぁんだ』と言いました。
そう、これを練り上げることで障壁を作れるのですが、今回はなんと!障壁ではなくて、これを攻撃用に変えるために、別の練り方を教えてくれるそうです。
確かに、属性が関係ないこの魔法なら私にも使えますけど、練り上げるのに時間と集中力がすごい必要なんですけど......
「では、安定してきたので次に行きますよ」
「はい.....え?」
私がオーラをなんとか安定させていると、アクセルさんは、私が数十分掛かって作り挙げたオーラをパパッと一瞬で作ってしまいました。
少しやるせない気持ちになりますが、あれですね?
「そう、これも年の功、年の功です」
「し、失礼な!まだ78ですよ!!」
「......」
どうやら魔女族は長命な一族のようですね。
気を取り直し、障壁を作る過程で、体を纏ったオーラの形を整えていきました。
手からオーラの剣にしてみたり、弾丸にして放ってみたりと手本を見せられ、私も出来る限り真似していきました。
「龍人族はお酒が好きなハズね!そうよね!」
「ふむ、否定はせんぞ」
「おほほほ、どう一戦交えないかしら?」
「ほう、つまり......」
「これで、よ?」
「なに!?これは!!希少銘酒『月燐』」
「昔、月光花の庭園から頂いてきた逸品よ!!」
......私に集中させない腹積もりなんですか?あの人たちは!!




