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魔法想花の小さな庭園  作者: 流水一
新章ー大陸を歩くー『精霊の住み処』
84/105

『じゃぁ、お片付け手伝いますね!それでどうでしょうか?』

「アン、そんなに深く考えることじゃないわよ?」


シュレイさんは好きに選べば良いといいますが、誰か一人を選んだら残りの精霊に何されるか分かったもんじゃ有りませんよ。しかし、そういうことですか。


「争っていたのは誰が一番か....ということですね。」


「そう言うことよ.....」


呆れた顔をするシュレイさんは、後ろに立つエルシュさんに紅茶のおかわりを催促していました。

うぅ、シュレイさんを除く精霊からの視線で体に穴が開きそうです。


「しゅ、シュレイさぁん.....」


「私も口を挟みたいけど、今回はそうもいかないのよ.....アンには自らが信用できると思う精霊を選んで欲しいって話しちゃった手前ねぇ?」


「謝罪.....私も、他に運ばれた重傷者の輸送のために、主様のフォローに手が回りませんでした。」


エルシュさんは、ポッと喋ってしまったシュレイさんをフォローできなくて申し訳なさそうだった。

そんな二人も、当初争いに発展するなどと思っていなかったようだ。

これからシュレイさんは、自らの領域に引きこもり、損害を受けた魔皇城の物質精霊の魔法人形(オートマト)を精製するために、私の常に側で、アドバイスをしたり、守ってやることはできないため、代わりの人物を宛がおうとしていたようだ。

嬉しい反面、なんて過保護なんでしょうか!!


「私だって一人で旅くらいできますよ!安心してください。」


「ほう、私がいない間に何回殺されそうになったか忘れたの?」


ちょ、怖い顔で睨まないでくだいよ......2?いや3回......ごめんなさい。

そういう話をしている間にも剣呑な空気はそのままだったんですけどね。


「というわけですので、アン.....私が一緒にいてあげますよ。」


だから私にしときなさいっと言いたそうな、対面に座るミストレニアは、自身の胸に手を置き微笑みました。

って、あれ?


「そうですね......って、ミストレニア様とはもう契約しているじゃないですか!!」


そうですよ、なにチャッカリ混ざってるんでしょうね?このお方は。


「ええ、そうですが......それ故に、他の誰とも契約する必要なんて皆無ですよ。」


「「「!?」」」


そ、そういうわけにも、行かなそうな......

要らない発言をしたミストレニア様に物凄い殺気が向けられた気がしましたけど、それ.....私に流れてきませんよね?


「おほん、いいですか?」


咳払いをして手を上げたのは淡い月光色......金の髪を持つルナリアさんだった。

彼女は両手をポンっと胸の前で合わせ良いことを思い付いたという仕草をしている。

彼女の髪からポワンポワンと淡い光が出ているのが幻想的だ。


「このままでは、その子もよく分からないまま契約することになってしまいますよね?」


「まぁ、あんた達絶対退かないからそうなる可能性は高いわね。」


苦笑いしてそう返すシュレイさん......

あ、やっぱり、全員と契約するんですね?うん、何となく分かってましたよ。

私もいやじゃないんですよ.....でも、そのなんというか、一癖も二癖もあるメンバーが契約というと、なに要求されるか困ったもんじゃないですよね.....

ざわざわと枝を揺らす私の庭園の大樹を遠い目をして眺めてしまいました。

皆の注目を集めるルナリアさんはニッコリ微笑み指を立てて説明します。


「そこでーーー。」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。


【小さな庭園】の入り口から横に進んだ所にある霧に覆われた場所にみんなして集合していました。

ここは私が最初に契約したミストレニア様に献上した場所で、一緒に庭園を一から作る楽しい出来事が思い出されます。


「この先にあるのですか?」

「ミストレニア、これじゃ何あるか分からないですぅ。」

「おおー、私の森の横ある湿地に似てるかなー。」

「ふ、ミストレニア、これじゃあ右も左もわからないじゃない......やるわね。」


目の前にある真っ白に染まった空間を指差す、ルナリア。

霧の中にボフンボフンと浮遊する小型な体を行ったり来たりさせるルシャ。

霧の境界線で大きな杖を伸ばし、何かを確かめているナチュリオレ。

数メートル先も見えないくらいの濃度の霧に感嘆の声を出すアサギリ。


「あ、やっぱり辞めませんか?ほら、今なら私誰とでも契約しちゃう気分ですよぉ!!」


私は近くにいたリコリスさんの綺麗な色彩の浴衣の裾を引っ張ります。何故ならこの先にあるのは、私の元居城.....拠点とも言える残骸が無惨に転がってるのです。それについて深く触れて欲しく有りませんので.....


「金の......」


ビクッ。


「五階建て.....」


ビクッッッッッッ。


リコリスさんが漏らす言葉に体が強張っていくのを感じていました。

頭の中では、なんでリコリスさんがそんなことを!?という気持ちで一杯になり、身動きが鈍くなってきました。


「な、なんで......それを?」


リコリスさんと私がいる所は少し先で霧とじゃれているメンバーと離れているために何を話しているのか気づかれることはありませんでした。

伺うように問いかける私にリコリスさんは身体をふるふると振るわせて息も荒くなっていました。


「確信を切り込まれ狼狽え、慈悲を乞うアンの表情.....はぁはぁ。」


「い、今はどうして知っているかですよ!?」


だんだんと、リコリスさんの近くにいるのが危ない気がしてきたんですけど.....

少し離れようとしますが、リコリスさんの獲物を見る目に晒されると動け、ません。

強気に質問をして話を繋ごうとします。


「う、ふふふ、精霊に物を頼むときはそれ相応の対価が必要.....よ?」


「な、何が言いたいんですか?」


恍惚し火照った表情のリコリスさんが怪しく輝く赤色の目を私に向けます。


「まずは、私の足を、なべん!?」

「何しようとしているのですか?リコリス。」


リコリスさんは頭を押さえ地べたを転がるように悶えていました。

そ、それほど痛かったのですね.....

リコリスさんの頭を強打したのはホームセンターで売っている大きめのスコップでした。

それで頭を強打されたら確かに堪らないでしょうね......


「だ、だいじょうぶですか?」


とりあえず助け起こすことにした私はリコリスさんに手を差し伸べます。

というか、土で服汚れないとか、そういうのはやっぱり私と同じで魔素で作った服だからでしょうか......


「アン、そのトリップしてるおバカさんは放っておいて構いません、少し頭を冷やせば良いのですよ。」


少しきつめの声で言うのはリコリスさんを強打したミストレニア様でした。


「で、でもですよ?それは痛いじゃ済まないときもあるかと......」


「?」


私が言ったことに、何を言っているのか分かりません。

という顔をするミストレニア様はきっと、あれで手加減しているのでしょうね。

私がガツンなんて殴られたらもう死んでますけど.....精霊の耐久力は恐ろしいと感じた瞬間でした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。


遅れてきたミストレニア様はどうやら、シュレイさんの【空飛ぶ島】に置いてきた私の世界の便利アイテムを取りに行ってたようです。手にはリコリスさんを強打したスコップという名の凶器しか持っていませんでしたが、残りは自分の領域に容れてきたそうです。


「その、片付けて貰えるなら嬉しいとは言いましたけど.....自分でやるので辞めましょうよ?」


未だに抵抗を見せる私は、杖の代わりにスコップを持っていたり、浴衣なのに手にはチェーンソウを持っていたり、と見た目の華やかさに対してシュールを越えている......むしろ一周廻って似合っているとも言えなくもない序列トップクラスのメンバーの前に両手を広げていました。

この方達、見たこともないアイテムで盛り上がり過ぎですよ.....使いたくてウズウズしているのがよく分かります。

しかし、この霧を5m進んだ先にある私の黒歴史は、ミストレニア様に隠して貰っているのにそれを公開するなんて、精神的にダメージ大です!!


「アン、大丈夫ですよ.....それに、何時までたっても宿無しと言うわけにもいかないでしょう?」


そして何故か、何故か!!そっち側で私を説得しようとしているミストレニア様。


「いいですよ!!私にはシュレイさんがいますもん、シュレイさんに一室貰えば良いんですよ。わぁそうしましょう。」


うむ、勢いで言いましたが我ながら名案ですね。

え?なんで!?そんな視線で私を睨むんですか???

私の目の前で円陣を組こそこそと話し合いをしていました。


「やはり、強行突破して手早くやりませんか?」

「材質は木材よね?金属系でも【月面盤】で照射して切断しましょう。」

「いつまでも、くっつかせるわけには行かないのですぅ。」

「んー、私の元に来るなら考えてもいいぞー。」

「うふふ、バカねナチュリー、それはみんなそう思っているわ。でも今はこれで悲鳴をあげさせたいわ!はぁはぁ。」


何を相談してたんでしょうか......あと、アイドリングが恐いです、それ持ったままこっち来ないで下さいよ?リコリスさん。目が据わってますよ!?


「か、考え直して貰えましたか?」


そう問いかける私に、ニッコリとする精霊メンバー。


「ええ、結論はでました.....アンは気にせず『そこで眠っていて』ください。」


「!!?」


ちょ、結論は強硬突破ですか!!


そして襲い来る上位精霊に勝てる筈もなく【小さな庭園】を首元を捕まれ引き摺られていきました。

私が庭園主なのにね!!主なのにね!!

霧を抜け引き摺られた先にある光景に、皆さん息を飲んで声を失っていました。

私は顔が真っ赤になりつつも、皆がどう思っているのか耳だけは澄ませました。


「こ、これは.....」

「なんで、ここに?」

「あり得ないですぅ。」


そう言うのは、リコリスさん・ルナリアさん・ルシャの三人でした。

そうですよね、あり得ないですよね?でも、それが建っていたのも事実ですよ.....ぐすん。


「あー!!フライングしたなー。」

「もう、残骸すら無いじゃないですか......」


声をあらげるのはナチュリオレさん・ミストレニア様の二人.....

ん、『フライング』『残骸がない』????

何を、言ってーーー。


「あら、遅かったじゃない、もう終わってしまったわ!さすが私!私が一番ね。」


どうやら皆が目撃したのは粒子の山に変わった残骸と、その上で決めポーズをするアサギリさんでした。

そして、アサギリさんしか見ていなくて、黒歴史を晒さずに済んだ私は.....


「アサギリさん、大好きです。」


「え?」

「え?」

「んー?」

「は?」

「うそですぅ?」


アサギリさんに駆け寄り、手を握り締めそう言ったのです。

いや、ホント助かりましたよ!

アサギリさんなら問題ないよね!?

うん、きっとこの人ならね!

本当に心の底から助けて貰った気がしなくもない私はまずはアサギリさんと契約しようと思います。


「あら!あらら?私の時代来たのかしら!!」


おーーーーーほほほっほ。

と口に手を当てる意味などないかのように声をあげるアサギリさん。


「そ、そんな、アン....私と言うものがありながら....」

「あらら、空気を読めないことが逆にプラスに働いたとか?」

「この破壊衝動はどこに発散すればいいの.....はぁはぁ。」

「ありえないですぅ!これじゃ更にバカが増長するですぅ。」


絶望した表情のミストレニア様。

しょうがないわねと苦笑いのルナリアさん。

恍惚......。

悔しがるルシャ。

そして、少し考え込んでいたナチュリオレさんはーーー。


「んー、アン!次私なー?」


「え?いいですよ?」


「「「「え?」」」」

驚愕の表情でナチュリオレさんと私を交互に見つめる4人は.....当然名乗りを挙げてーーー。

ナチュリオレさんが次を名乗ると雪崩れ込むように順番も決まりました。

というか私は一番なんて誰でも良かったんですけど.....元々みんなとはいずれ契約するつもりでしたし。

ただ、私はさっきまで上位陣は契約の対価が怖かったといいますか.....

それももう、黒歴史の公開されるかもしれないという恐怖に比べたらへっちゃらでしたね。

どんとこいです。


「あら?終わったの?それじゃぁ、契約しちゃいなさいよ。」


最後に出てきたシュレイさんはそう言って南エリアに浮かぶ【空飛ぶ島】に転移していきました。

やはり、忙しそうですね。

会える機会が減って少し残念な気もします。

さてーーー。


「契約の対価ですけど、私が払えるのにしてくださいよ?あと過剰供給も辞めてくださいね。」


今から契約開始です。


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