ルナリアの憂鬱ーバカ共のデットヒートー
フルエンク空中都市の中央エリアの外に出たアサギリ率いるメンバーは、中央広場でルナリアと合流していた。
「やぁ、ルナリア。」
「はぁ~やっとついたよ。」
「ルナリア、エンドウを見っけたぜ。でもルシャはいなかったがな。」
「ミズキにナラにシーダ、お疲れさまです。そうですかルシャはいませんでしたか......」
三人に声をかけるルナリアと、広場へと入った瞬間に、その場に倒れ込むように座る彼らにルナリアは不思議そうな顔を向けていた。
「あらら、どうしましたか?潜入作戦なのに戦場を徒歩で3つくらい跨いだ疲労感漂う感じは......」
不思議そうにこっちを見るルナリアに三人とも『察してくれ』というばかりの目を向ける。
「いや、あるお方が緊急スイッチを押しまくるわ。」
「監視カメラに決めポーズするわ。」
「下だっていってんのに!『こっちから好敵手の気配が』とか言って上に上がってくし。」
「はぁ、はぁ......相変わらずのお馬鹿さんをしていたと言うわけですか......」
ルナリアはその場でグテっとする三人に心の中で同情した。
して、彼らの疲労の元である人物は少し遅れて彼らの後ろからから現れた。
「いま、バカと言ったかしら?バカと言った方がバカなのです、分からないのですかバカ。」
「え?ルナまで来てんの?聞いてないよ!!なんか悪いね。」
三人と同じ位置まで来たのは、胸を反り指を突きつけるアサギリと今まで捕まっていて申し訳なさそうにするエンドウ、さらには後ろからビクビクしながら十代前半くらいの少女が現れた。
「......エンドウ、無事で何よりです。そちらのウリエも。」
ルナリアはアサギリを無視して二人に労いの言葉を掛ける。
「ルナリア、一人忘れていますわ。」
ルナリアとエンドウとウリエの視線を遮るようにアピールするアサギリ。
「ッ......は、はい。」
して、ルナリアに声をかけられてビクッとするウリエ。
ちゃっかりアサギリの服を掴み覗き込むようにルナリアを見つめる。
しかし、ウリエが萎縮するのも仕方がないことだろう相手は一桁台の実力を誇る存在なのだから、精霊使いとして、精霊から発せられる魔力のでかさを感じ取ってしまったため怖いのだろうと推測できる。
「そうですか、ごめんなさい、私の力で怖がらせてしまって。」
「い、いえ、平気です!!」
「ふふ、ありがとう。」
ルナリアはウリエにニッコリ微笑んだ後、視線を自らがいる中央広場から見える北エリアのゲートを眺めた。
「ちょっと聞きなさいよ、私もいますわよ?」
「あなた達は潜っていたので今状況を説明しますと、【亡者】は私たちで沈め、魔導師達はほとんどが撃破されていはいますが、この広さを探しきることは不可能です。そこで、」
少しでもルナリアに近づき視界に入ろうとするアサギリを軽く無視して話始めた。
ルシャさえ見つかればこんな所今すぐに落としてやるのに、そう思うルナリアだが残念かな屋内に入れない特性のため、中に探しに行けないのだ。そこで早く見つけるために先程訪れた中々の強さの彼らに託すことにしたのだった。それを伝えようとしたところ
「さっきこちらに到着した冒険者にルシャの捜索クエストを依頼しまして......報酬としてここにいる植物精霊達でサポートすることになったので、ふぁふん。」
「なに無視してますの?ふぁふぅんって?プププ。」
後ろに回り込まれたアサギリに髪を一房捕まれ下に引っ張られたことで変な声が出てしまったルナリアをバカにするアサギリがいた。
「チッ......」
「おほほほ、本性かしら?舌打ちしたかしらねぇぇ?」
「.......で、ですね、彼らは【王族特区】という場所に向かって貰いました。ほら、王の屋敷があるところです。」
「あら、でしたらどのくらいボッ......至高の時だったのかしら?ププ。」
頭に青筋が浮かぶが、徹底的に無視を決め込むルナリアの周りを視界に入るようにポーズを決めてくるアサギリ。
「わぁぁあ、居たんですか?アサギリ。」(棒読み)
「ええ、いたわよ。バカ。」
今更ながら初めて気づきましたという顔をするルナリアと、彼女の足をヒールで踏むアサギリ。
火花を散らしお互いに『うふふ』『おほほ』と笑顔でにらみあっていた。
彼女らの関係を端から見ていた者達はそれぞれの反応を見せた。
エンドウは『またか......』と呟き苦笑いを。
険悪な雰囲気になる彼女らをオロオロしながら見つめる半植半人のウリエ、始めて見たのだろう。
まぁ、植物精霊達にとっては日常茶飯事で見慣れた光景だ。
アサギリとルナリアは見た通り反りが合わない。
ルナリアが一方的にアサギリを嫌っているように見えるが、彼らは知っている、遥か昔から色々あったんだと言うことを。
だから無理に止めようとは思わないし、そんな勇者はいないだろう。
故にエンドウのように苦笑いをしつつ、収まるまで待つのみだ。
まぁ、全く見ていなかった者もいるが......
エンドウはチラッと男性精霊達を見てため息をつく。
若干融解が酷い北エリアのゲートが見える広場入り口の近くで、手を降るナラに言い争いをしながら駆けていくシーダとミズキのことだ。
『おーい、あっちで金塊拾ったッた!!』
『もっと詳しく!はよ。』
『おいおい、金塊ごときで何を、慌てているんだい?』
『じゃあ、何でダッシュしていくんだよ!』
『走りたくなったんだよ。キミこそ。』
『はぁぁあ、違いますこれは走ってません、早歩き健康法です。』
『植物が何をいうか!』
『そのまま返すわ。』
今中央広場はまさしく混沌としていた。
「ウリエ.....すべての植物精霊が変人や残念の集まりじゃないからね。」
エンドウはため息をつくしかない。
そして彼の呟きに「えっ?」と驚いた顔をして固まる娘に冷汗を流す。
なんとか誤解を解こうとウリエに話しかけるエンドウだが、ウリエと一番関わっていたのがアサギリだったために少し諦め気味だった。せめて、自分だけも、と話を移行していると、植物間ネットワークでの念話が聞こえた。
『「幻妖花のルシャ」見つけたけど、襲われているナウ。』
『あーれー、なんでかなー。シュレイが怒らせたんじゃなーい。』
植物間ネットワークに響くうんざりした声と、のんびりマイペースな声に全員動きを止め、耳を傾けた。
『こちらルナリアです。襲われるとは正確にお願いしますシュレイ。』
『ルナ!超正確だったでしょ!?それ以下でも以上でもないわよ!』
『えっとねー、ルナリアとヒマリの砲撃の後、地面が溶けたせいで落下したんだけどねー』
『やばい!撃って来たわよ!?盾、盾、盾、なんでこういうときに無いのよ!!』
焦った声だけは脳内に届くが周囲の音を拾っている訳ではないので、彼女らの声だけが聞こえていた。
『わーもー、【ナチュリオン・苔岩亀】。』
『バカバカバカー!ここ通路でしょう!?そんなでかい亀じゃ空間が壊れーーー』
どっごーーーーーーん。
と地面を揺らす振動と大きな音が北エリア側から聞こえてきていた。
『ナチュリオレ、位置はわかりましたが、ルシャは操られているのですか?』
そう聞くルナリアに受け答えする声があった。それはナチュリオレではなく。
可愛らしい少し高い声だった。
『ええぇ、ルシャは操られてなんかないですよぉー。ただ、体の自由がきかないだけですぅー』
それは、同じことなのでは、と広場にいた全員が思ったが無視しておく。
『おほほほ、敵に荷担するとはバカの象徴ですねルシャ!!ざぁぁまぁぁぁ。』
なぜか神経を逆撫でするアサギリ。
『うわぁぁ、アサギリブッ殺したいですぅー。』
うん、ここにいる植物精霊はみんなそう思ったと思いますよ。
そう思うルナリアだがどういうことになっているのか全くわからない。
話をしつつ、情報を引き出していくしかなさそうだった。
それぞれが、被らないように、混乱しないように場内デットヒートを続けるルシャとシュレイ&ナチュリオレに話しかけまくる。
ただし、追い付かれるか賭けをしだした三人はルナリアがシバき倒してゴミのように転がっている。
『ナチュリオレ!次右に曲がりやり過ごすわよ!』
『わかったー。』
ルナリアはルシャにも聞こえる回線で作戦を建てるアホさにあきれ果てる。
(シュレイ......私は少し泣きそうです。)
そして案の定。
『うそ、なんでよ!!なんでばれたのよ!』
『えー、迎撃するかとおもったのにー。』
『シュレイちゃん、そういう作戦はネットワーク内でしたら、当然相手に聞こえることは......』
『一応』と前置きして伝えたミズキの発言に反論するシュレイ。
『い、いや作戦よ!?』
『なんだーそうなのかー。』
『......こいつらアホですぅー。』
ルナリアは頭を抱えたくなったが操られているならとりあえず捕獲しなくてはならない。
爆走している位置は聞き出せたので誰か適役を、ナラかエンドウを送ろうと周りを見回すと一人足りないことに気づく。
さぁぁぁと顔が青くなるルナリア。
まさか......
『おほほほ、私も参戦いたしますわ!二組をのせばいいのでしょう?』
そう、予想通り無駄に参戦した目立ちたがり屋のアサギリだった。
アサギリがルナリアの作戦通りに動くとは『まったく』『これっぽちも』考えられないが、これ以上暴れまわって藪をつつきたくないと思うルナリアは状況に任させることにした。
『やばいなんかきたですぅー。』
『おほほ、追い付きましたわ。』
チャンス到来の予感を感じ期待してないが、アサギリに言ってみる。
『アサギリ、ルシャを捕まえてください。』
『おほほほ、ビリはルシャですわ!ざまぁぁ。』
『むっきー、こっちは自分で動いているわけではないのにくやしいですぅー!あと、アサギリ何しにきたです?』
どうやら通りすぎていったようだ。
......うん、まぁ期待していませんでしたが!?
そう思うルナリアだったがルナリアの側にいた4人の同族とエンドウの娘はルナリアから放たれる殺気と魔圧でガタガタ震えていたことに本人は気づいていなかった。
『なに?バカが来るの?上等よ!』
『なんだーなんだー。』
『バカにバカと終われたくありませんわ!ボッチーズ。』
なぜか仲間なのにあおるアサギリ。
マジこいつなにしに来たし。そう思う通信を聞く一同。
『おし、ブッころす。』
『やるんだな?やるぞ?』
『華麗に抜いてあげますわ。』
『いや、別にレースしてる訳じゃねーです、私を止めろですぅー。』
『『弾幕ばら蒔きながらこっち来るな!!』』
『見える見えますわ!』
私の目に写っていたら彼女らまとめて溶かしきってあげるのに、とぶつぶつ呟くルナリアをガタガタ震えながら見るしかないルナリア周囲の一同は、彼女が室内に入れなくてよかったと感謝してしまった。
もし入れたらを考えると恐ろしすぎると思った。
して、30分たったとき、15cmくらいの妖精族に近い容姿のルシャをカゴに入れたという通信がシュレイから送られてきた。




