ギクシャク
冒険者ギルド『イシュリカ』の出入り口のドアが吹き飛ばされ、雪崩込むように出てくる人たちがいた。
そう.......私たちだ。
「「出れたぁぁ!......さむっ。」」
「おい、てめぇ何が『少し』だ!」
「な、なんのことか分からないけど、元々凍った街だったじゃない。不思議じゃないわよ?」
「......雪?この世界にも......」
『イシュリカ』の結界が割れて出た外の世界は、冒険者ギルドに入る前と違い、雪が舞い始め、吐く息すら白くなっていた。
リラさんは『そもそも、フィオが凍らせたのがいけないのよ!』と言い出す始末。
レーゼンさんは懐から青い水晶を取りだし、水晶に貯めてあった魔力を吸収している。
『......最後の一つ。』そう呟いた。
『城の反応が......結界はあるようですが、内部に生命の反応が感じられません。つまり、全滅した......と言うわけですか。』
『防衛に回した戦力は十分だったはずですけど、【邪神】のこともありますし、何を使ってくるか判ったものじゃぁありませんので......主のいない1000年間で平和ボケしたのかもしれませんね。』
『となると、襲撃で間違いないですね......そして『工房』を潰されているのも間違いない。』
口元に手を当てて考え込んでいるオリジンさん。
深いため息をつくセラフィ。
『工房』っていうのは城にいたとき案内されたけど、【空飛ぶ島】の研究室に似た部屋だった。
そこで『魔法人形』を造っていたんだとか......今は作成者不在のため、在庫を使っていて、もしもの緊急事態のストックにしているのだとか。まぁ、そう簡単に殺されるほど弱くはなく、伊達に1000年この城で生きてはいない。と豪語していたのを思い出します。
しかし、今現在はここ1000年間の長い歴史の中、遂にヤられたということですね。
でも、なんで事務的な会話だけなんでしょうか......もっと取り乱すとか......ねぇ。
あそこでお世話になっていた私の方がドキッとしてますよ。
して、私の感慨を余所に話を続ける二人。
『そうすると、今の肉体を失ったら......誰かが造ってくれるまで宝石状態に逆戻りですね。』
セラフィの言葉に、コクりと頷くオリジンさん。
『レーゼン様も【蒼の雫】が底をついたみたいなので早めに決着をつけたい所ですけど......』
『......そもそも襲撃の相手は誰でしょうか?』
セラフィの率直な疑問に、ハッとしてメイド服の腰元からカードを取り出していた。
『いま精霊ネットに繋ぎ、サファイヤかファントムに話を聞いてみます!!』
『【邪神】を足止めに使うくらいだから何となくわかりますけど......』
苦笑いのセラフィ。
オリジンさんとセラフィは何やら襲撃者について話し込んでいるようですけど、私はそんなことよりも、あの紫色の巨大ドラゴンとラクダの王さまは何処に消えてしまったのか......そっちの方が気になります。
それに雪のせいかもしれませんけど、日付を跨いだ今、あれほど騒がしかったコンクレント城から何も音が聞こえないのはとても不気味ですね。
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場所は変わり、フルエンク空中都市では、内部探索をするアサギリ達がついに、囚われの植物精霊の一人である『エンドウ』を発見していた。
「よ、エンドウ助けに来たぜ......ペッ。」
「まったく、油断しすぎですよ......ペッ。」
「エンドウって親子丼狙いなの?ペッ。」
『え?みんな!......僕のために来てくれ.....唾吐くのやめてくれる!?』
場所はフルエンクの中心エリア、中央管制棟地下23階だった。
ちょうど全体図で見るとフルエンクのど真ん中だろう。
アサギリ達が相も変わらず、ワイワイと騒ぎ目立ったまま強行軍を続けた結果。
たどり着いたのがこの『精霊隔離エリア』なる場所だった。
3日......今では4日前にフルエンクの総人口を数える遊び(彼らにとっては暇潰し)をしている時には誰も見たことがない部屋だったようだ。
60個近い巨大な培養槽。
それが綺麗に整列している気味の悪い光景。
その培養槽の一つにエンドウがいたのだ。
しかし、もう一人の同族は発見することができなかった。
「え?じゃあアサギリと来てるの?」
「ああ、オレらじゃ心配だし、オレはエンドウからかいたかったし。」
「助ける戦力が多いに越したことにはないだろうけど、アサギリをエンドウに逢わせたたらどんなに恐ろ......まぁ、あれですよルシャのついでだったんです......」
「エンドウの裸体とか誰得て感じだな。」
「助けて貰っといてなんだけど、言いたい放題だな!?」
培養槽から出てきたエンドウは咳き込むこともなく、魔力で即座に服を作り出した。
服に特徴はあまりなく、見た目、20そこそこのクール系で眼鏡を掛けた彼がいた。
彼は伸びをし、あることに気がついた。
「あれ?アサギリがいないんじゃないの?」
「ああ、今ここの門番みたいな魔導師と一騎討ちしてる。」
「なに?見に行くの?」
「マジかよぉ......もう終わってるよ?」
「な、なんだって!?大変じゃないか!!」
彼らの返答にポカンとするエンドウは急いで、一ヶ所しかない出入り口に走っていった。
三人の同族はある意味作戦通りでニヤリと笑っていたことにエンドウは気づいていないのだろう。
「さて、自分の蒔いた種だしね、どう反応するのか楽しみだよ!彼女には悪いけどね。」
「今度から真性の触手プレイヤーと呼んであげようかな......」
「契約者の子と自分の子だと気づくかね?」
三人は顔を見合わせ、「ないな。エンドウだし」そう呟いた。
そうして通路に向かって歩き出したときマンドラゴラのお株を奪うかのような絶叫が聞こえてきた。
「うっそでしょ?まじ?マジでオレのむす!!なんでさぁあああああああ!!」
「なんですの?騒がしい、一時の親として責任持ちなさい......この子の親はもう貴方だけなのよ?」
「え?そんな!?契約者と関係なんて......いや僕植物なんですけど!」
「だからハーフと言っているではありませんか。」
「いやいやいや、それに今までどこで何してたのさ!?」
「......私が遊び相手になっていましたが?」
「なんか、ごめんなさい。」
三人はやれやれとした顔をして音源地に向かっていった。
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父娘の初対面があったがここは敵地でありのんびり出来ない。
もっというなら、余計なことをしだす人物が大人しいうちに帰りたいと願う4人の同族。
「な、なぁ.....なんでイリスは僕に伝えなかったんだろう......」
「おほほっほ、そんなの頼りないからに決まってるではないですか。」
「ひでえ!そこは、うまく慰めてよ!」
「あと、私が伝えときますと言って4年くらい忘れていましたわ。」
「なんでさ!?」
エンドウが後ろで緊張した面持ちで歩く半植半人のウリエに視線を送る。
彼女の半植としての外見的特徴は髪を自在に動かせることだろう。
見た目はまんま人だった。
あと魔力が高く。植物魔法も使えるとのこと。
「ちなみに上級を習得中ですわ!」
先程から偉そうに語るのは隣を気楽に歩く植物精霊のアサギリだ。
彼女はこんな性格だが序列は8位。
本人は7位だと言っているが......
そんなことを考えていたエンドウの横腹に電流走る!
「ガハッ!?な、」
(ちょっと、いい加減何とかしなさいよ、折角会いたがっていたから連れてきたのに放置は良くないわよ?)
くそ、勝手に連れてきといて横腹を思いきり殴りやがって、とイラッとするエンドウだが解放してくれた恩人達は無下に出来ないと思っている。
エンドウがチラッと後ろを向くとションボリとした『私いま困っています。』オーラ全開のウリエがいた。
ここは同じ男性精霊として、気持ちが分かるだろうウリエの後ろを歩いている三人にアイコンタクトを送る+植物間ネットワークで援護を求む。
『やばい、僕どうしたらいいかな。援護頼も。』
『やっぱりお困り?そうだな......とりあえず土に変えればいい。ぺっ。』
『女の子を泣かすなんてよくないよ?ぺっ。』
『エンドウ深く考えなくていいから、自分なりに話しかければいいと思うよ。』
『ありがと!ミズキ!!あとお前ら覚えてろよ!!』
念話とは別に、からかうようなジェスチャーをしてくるシーダとナラを威嚇しつつ、地上に向かって歩いていくうちに仲良くなろうと決めて話しかけようとエンドウは思ったがーーー。
「いいですかウリエ、男はケダモノですので発言の7割は信じては行けませんわ。」
「え?そうなのですか?」
「......そうだな。ってその割合は一体なんだ!?」
エンドウが話しかけようとしたタイミングでの会話に乗り突っ込みで相槌を打ってしまいタイミングを逃すエンドウ。
(まだだ、まだ、いける。)
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「戻ってきましたわね!」
「ああ、月が......綺麗だな。」
エンドウが結局話しかけられたのが最初の1、2回のみだった。
こと如くアサギリに会話を潰されるエンドウ。
悔しいことにアサギリが計算でうごいていないことも理解しているため余計に現実逃避したくなる




