その目を知っている。
遅れましたー
「ギル、相手は誰ですか?苦戦しているようですね。」
「あぁ、結構な。それにもう4日目だぜ......げんなりさ。」
セラフィにフリードさんが状況説明をしています。
もしかしたら、セラフィが助太刀するのかも?
私?今も昔も雑魚だよ!!
「相手はオリジンに聞いたんだが......」
「オリジンさんがいるんですか!?どこです!?手をふりましょぶわ!!」
「............【念話】にしましょうか?」
痛い!いきなり口元に針で刺されたような激痛で悶え、その場で芋虫のようにうずくまっている私を無視して会話を再開させています。許すまじ......あとセラフィ、地味に凝視するのやめてください。
「そうだな、こいつフレイアにすら手を振ったって聞いたからな。」
フリードさんの言葉にセラフィが呆れていましたが、いいじゃないですか!エルフですよ!ちょお、美人でしたし。
今は口元が痛すぎて、『え、あ、いう。』ぐらいしか発音できませんけど、フリードさん今までで一番の威力でしたね......
あれ、もしかすると、今は男だから?手加減してないのかも......
「ううおいま。ということは、フリードさんは女の私の方が当たりが......優しい?」
「何言ってるのかわかんねぇーけど、もう喋れんのか?今【異常付与】の【沈黙】掛けたのに抵抗値が高いのか?」
「いえ、たぶん所持品の加護でしょうね。私達の。」
少し誇らしそうなセラフィが言っているのは、私が私の体から.......なんか説明が変だ!!
おほん、えっと......城から出るときに、心配な使用人ズが宝石を持たせてくれたので、その宝石の加護のことでしょう。
あと、シュレイさんに言われた通りにセラフィを宝石を使って転移召喚し、今に至ると言うわけです。
余りはポーチですね。全部で6個貰ったのでひとつ使って残り5個です。
そしてその中には、【身体異常緩和】の効果を持っている宝石があった気がします。
そんなことより、あの衝撃は物理攻撃ではなく【絶叫】スキルの【異常付与】らしいのですが、どこも絶叫してないよね?スキルの使い方でしょうか?まぁ、それは良いとして、昔はスキルを掛けてくることすらなかったのに、積極的に掛けてくるなんて......
まぁ、ビシビシ叩かれはしましたけど......しかもそれ、小学男子が好きな子にちょっかいをかけるというあれと同じ気がしてきました。ふふん。
「あっれぇ!もしかしてフリードさん私のこと「殺すぞ?」......ですよねー。」
私がフリードさんをからかおうとしたとき、声に被せるように否定されました。
擬人化したフリードさんは確かにカッコいいですけど、視線で殺されそうになり、涙目です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー。
戦いは激しさを増し、時折響き渡る魔法やスキルの発現言語。
この閉鎖された空間で戦いを求め、そして死力を尽くし、最高の結末へと駆けていく。
ハートフルな......
嘘です。こっからじゃ、何も見えないし聞こえません。
先程調子に乗って殺されそうになったんで、二人の隣で体育座りで待機していたんですけど、目線と表情だけで会話しているように見える二人においてけぼりを食らっています。
もう、アテレコしてやろうか、コノヤロウ。
ぶっちゃけ、ジッとしてるのが飽きてきた私は、『一応』言いつけ通り、この陰から出ませんけど周りをキョロキョロと探索します。
動ける範囲は神殿にありそうな大きな柱の残骸から6mくらいなので、戦闘が行われている方向に視線を向けて異常がないか確認しながら、うろうろしました。
時折、フリードさんとセラフィの様子も確認します。
『おいおい、僕が浮気するわけないだろう?』
両手を広げるフリードさん。
フリードさんに食って掛かるセラフィ。
フリードさんの仕草に胸元を掴みあげるセラフィ。
『分かってんだからね!あんたなんか!あんたなんか!』
修羅場ですね......ハラハラ。
まぁ、アテレコしただけですが......
実際は念話で何を話してるんでしょうか?
二人のいる場所に戻ったら話し合いは終わったらしい。
そして同時のタイミングで瓦礫に着地するメイドのオリジンと現魔皇レーゼン。
その二人が現れた。
「あぁん?何お前らもこっち来てんだよ!?誰があれの相手してんだ?」
フリードさんの声に神妙に答える二人。
「......魔力や体力が無くなるのを待つのは無理。あれ【アクティブ・ヒール】持ってる。」
「ええ、私たちとは違う回復スキルのようで、全体的には減っていますが動けば動くほど回復していくようですね。」
そう頷くオリジンさんと視線が合いニッコリ微笑んでいました。
でも、なんか嫌な予感がするので視線を逸らします。
「......だから、回復を上回る連続攻撃をするしかないけど、ギルが消えたから探しに来た。」
「て、言ってもオレらだけじゃ決定打を与えられないのはこの数日で証明してるしなぁ.....」
レーゼンさんの言葉にめんどくさそうに頭を掻くフリードさん。
「セラフィ、貴女も手伝ってください。」
「そうですね......見ていたらじり貧でしたし......良いですよ、了解しました。」
「属性攻撃は闇ばかりですので私でも対処できるのですけど、なにぶん身体異常を起こすスキルやらを沢山保持してるらしく、そっちの面が追い付きません。」
「なるほど、4人いて攻めあぐねているのはそういうわけもあるということですか。」
オリジンさんはセラフィに言い、セラフィもそれを受けるようです。
「......ギル、今はリラが【焔眼】使って生命力を燃やしているけど、それだけだとあと4日は掛かる.....」
「マジかよ.......さすが【神族】入りしただけはあるな。」
【焔眼】というのは城にいるとき使用人ズに聞いたんですが、火の自然精霊リラが持つ極悪の魔眼なんだとか、初日に魔性の森を破壊した黒炎とは違うみたいです。
そして【焔眼】は高威力で高速戦闘の中、味方に当てないようにするのが難しいらしので、少しの間リラに任せた。といっていました。
ということは、現れた二人は今から始まる戦いに巻き込まれないように一時撤退したらしい。
建物の残骸の陰に隠れ、遠く離れたところのチカチカ光っている方を見つめました。
遠すぎて見えない......けど、時折上がる灼熱色の光線や火系統魔法の応酬。
10万近い魂を取り込み、封印されるほどの力を所持する遥か昔の【勇者】が【邪神】になり神の仲間入りを果たした存在。
対するは、この世界に存在する5人しかいない自然精霊の一人。火の精霊リラ・ギュケル。
きっと熾烈な戦いなのでしょうね......
私にも何か協力できればいいですけど......
私が考え込んでいるとセラフィが私の頭をポンポン叩いて言いました。
「相手が【邪神】になるとこの子をどこに預けましょうか?」
「ああ、足手まといになるか......」
と言うフリードさん。事実なので反論できません。
オリジンさんとレーゼンさんはというと......
「......端にいるといいよ?」
「シュレイ様も今は近場にいないようですし、離れていてくださいね?」
優しい目で言われました。あれ、ちょっと堪えるんだけど......
胸が痛い......
(それにしてもその姿......記憶の抽出でしょうか......)
ぼそっといったオリジンの声はアンには聞こえていないようだ。
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私を除いた全員が【邪神】に向かっていってしまい、ここでボッチな私ですが、どうしましょうか......
状況は遠すぎてわかりませんし、近くに行くと足手まといになることは明白。
しかたなしに、目を頑張って凝らして見ますが結果は変わらず。
やることもないので、ここで仮眠でも取っておきましょうか?
けしてふて寝じゃないですからね。
段々と意識が微睡んで、そろそろ眠る、と言うときに体を駆け巡る不快感。
髪の先から爪先までを痙攣させるほどの凶悪な嫌悪感。
目を開け、震えながら見た先には、みんなが向かって行った方向で、ギリギリ見える範囲まで戦場が近づいたのでしょう。
この不快感の源を追った私の視線と【邪神】と言われる者の視線がぶつかりました。
「え?うそ。」
私の視線を受けた男性は黒い髪に長身で、そして私の封印されていた記憶の中に出てきた人でした。
その人は口元にイヤらしい笑みを浮かべています。
何かを喋りかけていますがこの距離で聞こえないはずなのに、明確に脳内で再生されました。
『久しいなバケモノよ。ここには守ってくれる刹那はいないぞ。』




