合流①
フルエンク中央エリアと東側エリア先端の中間地点、『SE-11番ターミナル』には100名ほどの多種族集団が集まっていた。彼らはつい先程起こった瞼を焼き尽くす勢いの閃光と、立っていることもままならない振動、さらには光の着弾地点より放たれる余剰衝撃で吹き飛ばされたり散々な目にあっていた。
強襲開始時には500名いた人員も、対空砲撃で撃墜された数十名を除けば、9割方上陸できたが総人口10万を超えるフルエンクに対して塵も等しい。
上陸時には警戒に警戒を重ねた。しかし、500名近い強襲に防衛側のフルエンク軍が一向に現れず、魔導の最先端都市として、沢山の強力な魔法使いも姿を見せなかった。不気味な雰囲気に、100名単位でフルエンクの東西南北から分散して行動し情報収集と兼ねた侵攻作戦に取りかかることにした。連絡役を担う、機械人と妖精種よって、それぞれの状況から、フルエンク側の人員が居ないわけではなかったみたいだ。
ただ生きていなかっただけで、無人と言うわけではない。
ある程度進むと、情報の中に【亡者】の単語が多数飛び交っていることと、それが元フルエンクの住人という異端な事実が多種族の強襲部隊に衝撃を与えた。
東エリアは中央部に近づくにつれて【亡者】が全く目撃されなかったが、変わりに魔法使い然とした格好の人物の死体が数体発見された。体に無数の穴を開けていたり、上半身しか見つからず、床が溶けたガラス質になっていたりした。
西エリアでは、【亡者】がチラホラと目撃され、中央エリアとを繋ぐ『ゲート』に戦闘の痕跡だろう散弾の跡と魔法による地形変化があったらしい、あと散弾の銃痕から植物の種が発見された。
南エリアも【亡者】少なかった。また所々の地面に血飛沫の跡が多数見られるが死体は発見できなかった。
そして、問題は北エリア......連絡を受けたマキナやフェアリーが聞き返すくらいの異常事態が起きていた。連絡によると【亡者】の数が膨大で数えるのもバカらしいくらい確認できるとのことだ。
目測、10000はゆうに越すらしい......しかも、その【亡者】が二階建ての建物に手を伸ばし取り付こうとしていた。と報告された。
もしかしたら重要な施設かもしれないために、なんとか情報を集めようと【亡者】を潜り接近する。
という連絡を最後に、フルエンクを襲う砲撃。着弾場所は北エリアだという。
彼らの安否は不明だった。
しばらくして、ここ『SE-11ターミナル』に北エリアの連絡係をしていたフェアリーとマキナが満身創痍で現れたことで事情を聞くことになった。
『A級魔精以上の砲撃を盾で受け流している人物達がいた。』
『他のメンバーは即座に飛び降り全員無事かわかんないけど、光線で溶けた人はいない。』
らしい。
そして、拠点に定めた『SE-11ターミナル』で今までの話から導き出されることは......
「うん、私が思うに間違いなく植物精霊が介入していますね。」
手元にゴテゴテした装飾の本を抱えながら俯き考えを漏らす。
「でも、あり得るのかしら......私が生まれてから精霊同士のいざこざじゃなくて、具体的な介入なんて始めてよ?」
フルエンクから逃げ出してきていた艦長から貰ってあるテーブルに広げられた全体見取り図に印を置きつつ疑問を口にする赤い髪に褐色の悪魔。
問いかけられた天使のコーラルは『ここまできてフェイクだったら不味いですね.......』そう言い手元にある【カーラーン神書】を開く。
「ーー力を、全てを見通す天始の目をーー天燐光独奏、第37節、終『天眼のリューメリウス』。」
デフォルメして小型化した1対の翼が、純白の輝きを放つ元の大きさに戻り、コーラル自身から上昇するような淡い金色の光の玉。
手に持つ本自体も同色の光を発し、開かれたページの文字がなぞるように緑の輝きを灯していく。
彼の足元にある肩幅程の発光している魔方陣が2重線になり、少しずつずれていく、大体2mくらいまでずれるとその場に固定され、バシュッーーー。と言う音と強烈な光が発せられた。
『司書のおね......おにいちゃん!またまた『リュー』のお仕事だね!!』
そう言ってコーラルに抱きつく天使の少女は光と共に現れたヴァルキュリー......【カーラーン神書】に住まう天使の一人だ。
コーラルの鳩尾くらいの身長にオレンジ色の変わった翼。
この小柄な天使の少女は鎧甲冑を着けてはない。
いずれ、成長したら着けるだろうが今は見た目通りに子供のため、思い甲冑をつけて戦場を駆ける実力はない。
この呼ばれた『リューメリウス』は嬉しそうに尻尾のごとく翼をヒラヒラ揺らしていた。
「さっそくで申し訳有りませんが......お願いできますか?」
抱きついてきた『リューメリウス』の肩に両手を置き、視線を合わせるためしゃがみこんだコーラルに彼女は元気良く返事をした。
『ま、まかせて!おね......おにいちゃん。『ローレンシア』様と『オクフェクト』様......ついでに『パージュ』を倒した相手を『リュー』がボコるんだね!』
「......ち、ちがいますけど......」
震えながらそう言いきった『リューメリウス』にポカンとするコーラルだが何とか今の状況を説明した。
どうしてそういう考えになったかと言うと、あちらの世界で『閃光のローレンシア』が『いずれ来るとき向かい撃てるように。』という説明をしていたらしく、呼ばれた『リューメリウス』が早とちりをしたのだった。あと『避雷のパージュリオク』の扱いが相変わらずだと思うコーラルだった。
「と、いうわけでして、この『フルエンク』を見通したいというわけです。」
『なーんだ、良かった.......『リュー』けんじゅつ全然だからね。』
ホッとした表情の少女が早速能力を使うための準備をする。
彼女の体がどんどん薄れ、胸の辺りに浮遊するオレンジに輝く核を残して消えていった。
『いっくねー。』
その光景を近くで見守っていた悪魔が天使の核の眩しさを嫌がるように目を瞑り手を翳し顔を背ける。
光の玉にになった『リューメリウス』がコーラルの体の中に入った瞬間、コーラルは頭痛が起こった頭を押さえながら、息を整えた。
今、コーラルの頭の中に一瞬の内に様々な情報で満たされていた。
その副作用のため多少の頭痛がするが、気にしなくていいレベルの違和感だ。
送られてくる情報は、『フルエンクの全体像2D・3Dマップ』『内部詳細データ』『スペック』『マップ上にアイコンと一緒に配置された自分達の小型モデル。』『現在の人数』『種族』『敵か味方か』といった答えだった
「どうかしら、コーラル行けそう?」
心配そうに話しかける悪魔の彼女に微笑みつつ、マップ上のアクティブなアイコン達が一斉に止まった。
そのことに気づきため息を漏らす。
(万能ですけど、やはりこのレベルの相手には感知されますか.......感知された瞬間に隠蔽した方もいるようですけど......)
この力があれば探索する必要がなくどんどん行動できるとみんなが言うが実際、この力は諸刃の剣だ。
こちらが相手の位置を特定できる変わりに、特定された相手にもこちらの位置を知らせてしまうのだった。
つまり、この力を使うときはある程度、覚悟しなければならない。
悪魔に指示を出した後、さらに下から向かってくるアイコンに気がついた。
「リリエス!下部から機龍が放たれてこちらに向かってきます!この速度だと10秒後で.......え?」
「了解、みんな来るわよ、機龍らしいわ、油断せずに倒すわよ。」
「そしたら、本拠地の占領だね。」
「侵略!侵略!」
静寂が続いてしばらくーーー。
『ーーーーー。ーーーーー。』
機龍との戦闘を身構える各々がその時を待ったとき、機械的で龍を真似た鳴き声が聞こえてきた。その声は段々と近づいてきた。
彼らも10mを越す大型龍との戦闘は冒険者の精鋭であろうとも経験したことはない未知の領域だったために、手に汗を握る。
すると、
『Gaaaa!!---gyaaaaa!?』
『はっはっはっは、もっと、逝けるわよね?さぁ、さぁ、さぁ!!』
『ターミナル』に留まっている大型船に機龍が悲痛の悲鳴をあげつつ、その体に取りついた銀髪の獣人と共に大激突した。
大型船の爆発が誘発され、ここにいた仲間達は即座に退避し煙が晴れるのをまった。
機龍はどうなったのか、気になるメンバーより先に、脳内のマップから機龍のアイコンが消失したことで安堵の表情をするコーラル。
『どうよ!私に掛かれば、主砲でも、古龍でも掛かってこいってことよ!!』
姿は見えないが勝利の余韻に浸る知り合いにため息を聞きつつ声をかけた。
隣ではバカをみるような目を煙に向ける悪魔の姿と好奇心旺盛に煙に突っ込み遊んでいる双子の姿が見える。
「いままで、何してたのですか?対空砲撃で撃墜されたかと思いましたよ銀。」
「ん?まぁ、野暮用ってやつね?」
煙から現れる人物は手を左右にひろげおどけたように返した。




