強襲⑧
夕闇を切り裂く一条の光がフルエンクに直撃し、純白の閃光と着弾による衝撃で辺り一体の全てを揺るがす、大地震が発生した。
巻き起こった轟音は大気が泣いているように心に響く振動音だ。
地上から見上げると、地平線の向こうから伸びる綺麗な光の線がフルエンクの一部を境に斜め上に屈折し、遥か向こうの地平線の彼方へと消えている。
光の軌跡を追うとフルエンクを貫通する軌道から逸れていることに気づいた......何かの外的要因があったのだろう。
屈折の中心点では、第二の太陽かのような熱を感じさせ、色もよく見るとオレンジ色になっているようだ。
また、それを境に目映い光が全方向へ降り注いでいた。まるで、流れ星のように。
ひとつひとつの分かれた光でもってしても、降り注がれた所は昼間のような暖かさと明るさを感じさせる。
そのせいで、コンクレント湖上都市はちょうどフルエンクの真下のために、こちらの集落から見ると真っ暗な暗闇に閉ざされているような印象を受けた。
「うひゃぁ~、オレ行かなくて良かったっす。あんなんひとたまりもないっすよ.....」
小人族の町外れに宿屋を構える小人族の青年は先程の爆音と家を揺らす衝撃から外に飛び出し、そう呟いた。
ため息を吐きつつ、疑似太陽と化しているフルエンクを見つめた。
フルエンクに直撃した光も次第に弱まり、再び辺りが暗くなり始めたようだ。
みんな無事に帰ってきてくださいよ。
声には出さず、心の中で呟きながら。
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時を同じくして、小人族の町と魔性の森を繋ぐ何もない平原にて、万人が息を呑む様な光景が広がっていた。
辺りを埋め尽くす青白い存在と腐臭を漂わす多種族のゾンビで、普段は綺麗な景色が広がる所が、死の世界に変わっていたのだ。
辺りに散らばるアンデットの『残骸』
群がる彼らの先には暴虐の限りを尽くす、銀髪金眼の獣人。
ウサミミを揺らし踊るように、舞うように蹴散らしていく。
霊体であるレイスは黄金色に輝く槌で叩かれ爆散され、スケルトン・アーチャーやソーサリーの遠距離攻撃に彼女は目も向けず、彼女の周りを周回している月色の球体によって不自然に逸らされている始末。
一斉に彼女へ群がると、彼女は地面に手を触れ、無重力エリアを造り、群がってきた彼らを無重力状態にした後、動きが緩慢な彼らに一撃必殺を与えていく。
黄金色の槌のフルスイングをスピンさせて飛び回っている球体にぶつけるだけで簡単に彼らを四散させていた。
ただ、彼らアンデットも数だけは健在だ。
彼女にダメージを与えていないわけではない。
数打てば当たるを地で行うアンデットは着実に相手にダメージを与えていた。
が......
「あはははは、いいの?全滅させるわよ、ハーディア!」
楽しそうに笑いながら、遥か遠くにいるアンデットを統べるハーディアに声を掛けてくるA級パーティー『リストリア』の銀。
スケルトンの中でも上位存在のスケルトン・ジェネラルナイトと、他とは違う変わったレイスであるユニーク・レイスの2体を随伴させていたハーディアは片手をあげ、指揮を取った。
銀に群がっていたスケルトンやゾンビが一斉に地面に潜り、レイスはケタケタ笑いながら空間に溶けていった。
周りを警戒するも、奇襲はないと踏んだ銀はウサミミを少し萎れさせる。
「なに?ああ、一対一ね!サドンデスってわけ、いいけど1対1だと術者であるアンタが私に勝てる可能性のーーー」
「いえ、気づきませんでしたか?あの閃光と轟音。あと、1対1でも私が勝ちます。」
「あん?」
銀が何か喋ろうとしたが構わずに、ハーディアは問いかけた。
あんな爆音と閃光に兎は気づかなかったのか......目の前の人物を見た。
ウサミミ少女の口許がピクピクとしていたが、今は気にせずに話を続けるハーディア。
「貴女との決着はいずれ、今はテルヤ様が心配です。3日も離れてましたし。」
「......なによ、また逃げるの?」
そう、出した指示は撤退命令だ。
フルエンクを直撃した閃光。
(もしかしたら、私の予想を超える事態になっているのかもしれません。)
ハーディアの予想は当たっており、ハーディアはこのとき魔王テルヤの体を乗っ取られていることを知らなかった。
「そもそも、私の本来の任務は貴女達の作戦の妨害ですが、気づくのが遅かったみたいでして、なら貴女だけでも足止めをしておこうと思っただけです。」
「ふっ、つまり私が優秀。そうでしょ?そうなんでしょ?」
「......そうですねー(棒読み)」
「ふふん。」
胸を張る銀に適当に返すハーディア。
満足げにする銀も物量作戦で結構な深手を負っていたが、今宵は満月......月の光でもって傷が修復されていく。
その光景を嫌そうに見つつ、ハーディアは、2体の配下を引き連れ踵を返す。
「フレイアを回収して、魔王様の様子を見に行こうかと思います......止めないのですか?」
立ち止まり振り替えるハーディア。
「はぁ、興味ない。パス。私は戦おうとする意思を持たない相手に後ろから襲う趣味はないわ。」
隙だらけの今のハーディアに攻撃をしてこないことに不思議に思い質問をするが、銀はどこ吹く風だった。
「そうですか......三度お逢いしましょう。」
最後にそう言って懐から出した転移石を握り魔力を流す
「次は昼間でもいいのよ?」
「ふっ、冗談を。【座標軸転移】対象フレイヤ!!」
ハーディアが光に呑まれて消えたすぐあと、屈伸運動をした銀は口許に笑みを浮かべつつ、目線の先は遠くに浮かぶフルエンクを捉えていた。
「なんか、面白そうなこと起きてそうじゃない!!私も参加するわ。」
右手で【臼球】を縦にスピンさせ、先程とは違い自らが浮遊しだしたら、回転蹴りの要領で回転する球体を下から掬い上げるように叩き、足元にサッカーボールのようにトラップさせていた。
すると、彼女の体が上下逆さまになり『空へと落ちていく』。
(ん?空気中の月粒子が増えてる??)
腕を組みつつ、落下していった。
どうやら本当に先程の砲撃に気づいていなかったようだ。
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場所は変わり、フルエンクの中央エリア『中央管制棟地下4階』。
鳴り響くけたたましい警報。
赤いランプがクルクルと回り、通路の前後のシャッターが降りる。
さらに、前後を閉じ込めた後、壁から現れる防衛機能の魔導銃。
打ち込まれるのは金属銃弾ばかりではなく、氷・爆発・麻痺・レーザーなど種類は様々だがーーー。
『おいぃいいいぃいいい!?アァァサギィィリィィィ。』
『バカなの?マジで。』
『なぜ、押したし。なぜ監視カメラに決めポーズしてるし。』
ものすごい弾幕の中でも平然と.......いや、結構な叫び声が聞こえた。
立ち込める煙で何も見えないが散弾の嵐を何とか凌いでいるのだろう。
すると、三名の焦った声とは別にため息混じりの声が聞こえる。
『はぁ~、アンタ達は分かっていないわね。』
いい?と続けて弾幕の中でも構わず話す。
『聞いた話とさっきの衝撃から、ルナ・ヒマリそして、ボッチグループのナチュリ・シュレイに負けてるのよ!私たち。』
『ばか野郎、この野郎、聞きたくないけど聞いてやるよおぉ!』
『そう.....私たちはあっちより目立ってないわ!!これは大問題よ!』
『お前の頭と今の状況の方が大問題だよ!』
彼らの叫びはむなしく弾幕の中に消えていく。
『悔しく、ハンカチを噛む羽目に.......とそこでなんと非常ボタンが!!』
『分からねー、お前の頭がわからねー。』
『なに?やっぱりバカなの隠密行動ってわかってるの?』
『はっはっはっはっ!広葉樹の密度舐めないことだよ!どんどんこいよぅぅぅ!』
『ちょっナラさんが涙流しながら切れてる!!』
『私の話聞いているの!?最初から言いますよ!『そう......私たちは』』
『おい、誰かアサギリを止めろ!うぜぇんだけど!!なんでオレこいつと一緒に来ちゃったの?』
『まじで言うと、オレらよりアサギリの方が倍以上強いからだな。』
『......悲しくなるから防御に集中しよう。たぶんオレ、出番これだけだと思う。』
そんな三名の叫びとマイペースでお馬鹿な一人の会話に入らず、彼らに守られているハーフの少女は縮こまっていた。
(どうしよう......連れてきて貰ったけど、さっきの地震からアサギリ様の様子が可笑しくなっちゃったし。)
少女が声を出そうとしたとき、こっちを向いたアサギリが頭に手を置いて微笑んだ。
『大丈夫ですわよ、私に任せなさい。』
(あ......うん。)
こくりと頷く少女。
『私が使う、私だけのオリジナルーーーーー。』
して、アサギリが攻撃に周り僅か数秒で沈黙する防衛機能。
『ドヤ......ですわ。』
満開の笑みのアサギリにゲンナリした三人。
『いや、こんな状況作ったのお前だかんね!』
『言ってやるな、さすがに反省してるはずだ。』
『アサギリさーん!だから監視カメラに写りに行かないでよぉおぉぉ!』
『ちょ、ナラ!なんで私のアピールタイムをーーー』
羽交い締めにされて引き摺られるふんわりドレスのアサギリと三人の同族の彼らを見た少女は言った。
『クスクス。みなさん仲いいんですね。』
ピクリと止まる4人の精霊。
『ふっ、そうでしょう!私がいちばーーーー。』
『ミズキと......ちょ、黙ってアサギリ話できない。』
『おいアサギリ!いま下僕って言ったか!?』
『まぁ......うんそうだよ。って言っておくね。』
最後に掴み合いを始めそうな状況を眺めつつ、ミズキと呼ばれた精霊が少女に答えた。
そして、このまま騒がしくなり、防衛システムに感知のは言うまでもない。
次回ー合流①ー




