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魔法想花の小さな庭園  作者: 流水一
4章ー半精霊化ーフルエンク攻略
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強襲⑥

光に呑まれていく魔王の体を乗っ取ったフルエンクの王に続いて、明らかにホッとした仕草の5人のローブの人物達。

彼らも、フルエンクの王が発動した転移陣に入っていった。

全員が乗り終わったとき、光の中から王の声が聞こえた。


『ああ、忘れていた、これは手土産だよ。』


「何を.........?」


すると、光の中から突然飛び出してきたものがあった。

物質精霊達は身構えるが、中央庭園に落ちて来た物に見覚えがなかった。

故に、魔力反応も感じない『それ』に対してほとんどの精霊が対処に遅れてしまった。

侵入者を包む光が消失した瞬間。


カチッーーーー。


という音が聞こえた。

投げ込まれた物『10cmくらいの筒が10本束になっていた』この世界には無い硬い地盤さえ削るダイナマイトが連鎖爆発を起こし、辺り一面を爆発音と閃光、さらには衝撃と粉塵に魔皇城は呑み込まれていった。


湖の底にある魔皇城の強固な結界を内側からの衝撃でヒビを入れるほどの威力だった。

衝撃は密封された魔皇城内を荒れ狂い、中の状況は全く分からない。

分かるのは、湖の底に巨大なドーム状のひび割れた結界が灰色一色に染まっていることだけだった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーー。


魔皇城を襲った衝撃の余波は結界により阻まれ、魔皇城直上にあるコンクレント湖上都市の中心、コンクレント城で行われいた戦いに影響はなかった。


半壊したコンクレント城の至るところを戦場に変え、ところ構わず魔法の爆発、斬撃・剣撃の甲高い音が木霊している。

そして、エントランスにて、切断された右手を口にくわえ、左手に光沢を持つ柄から刃先までが同質の漆黒のナイフを、細身だが貧弱さを全く感じさせない長身の男の胸元に突き刺している黒髪にキラキラと虹色のラメが輝く女性がいた。


ナイフを引き抜き、先程まで激しい剣撃の相手を務めていた男性から距離を取った。

右手の付け根から血が流れてくるが、行動への支障は今のところ50%って所だろう。

肩で息をしつつ、貫かれた時のままで佇む男性が致命傷を受けた筈なのに顔をあげた。

女性を見る彼の表情は清々しかった。


「恐れ入った、まさかこの【剣神】に右手を失いつつも勝利するとはな。」


切り刻まれたメイド服だったモノを着る女性は、自らの服の端をさらに破き、右手の付け根に器用に撒いていく。


「あなたとやる前にこっちは【剣匠】を相手にしているから剣筋が似ていたってのもあるかも......ね!よし。」


剣神は顎に手を当てていた。


「ふむ、弟子か......だがあれはどちらかというと鍛冶の才の方があったが......ワレとやる前に相当苦戦したみたいだな。」


剣神の視線が注意深く上から下まで行き来する。


「いや、ホントにねー。あの【剣匠】のせいで服はボロボロ、魔石も使いきるわでねー。」


魔石というのはMP回復効果があり、魔核を持つ種族にとってはHP回復薬でもある。

それを使いきった状態で、同じ世界から呼び出されたこの剣神は小細工無しの実力の持ち主だった。


「なんだ、お主......蘇生の秘宝の他にまだ持っていたのか.......」


「秘宝じゃなくて輝石だけどね......これ。」


嫌そうな顔をする剣神に、まっぷたつに割れた黒い宝石を見せる。よく見るとキラキラと中が輝いている。

これは物質精霊の(コア)であり、これが破壊されると別の核に移動して蘇生することが出来るが、物質精霊は核の他に『魔法人形(オートマト)』という肉体が別で必要になるため、その予備肉体を保管している魔皇城から離れた場合、懐に核だけ持ち歩くことで、肉体が即死する攻撃を受けたとき、身代わり効果を発揮する。ただし、肉体が受けた部位欠損などは治らず、即死攻撃のみである。


「死霊術師かと疑ったが、この世界は我らの世界より摩訶不思議が溢れているようだな。」


剣神の体が足元から薄れていく。


「誓約者がいるかぎり、界は繋げられる。いずれ会いまみえようぞ!黒耀の剣!!」


消え行く剣神に後ろを向き歩き出すメイドの女性は残っている手で後ろ向きに手を振った。


「あー、はいはい、あんた『も』か.......」


完全に気配が消失したとき、女性は息を吐き、ある一点に視線を送る。


「君も、関係者じゃないのー。」


そういう、間延びした声に答える声の主が、剣神によって切り裂かれたエントランスの柱の影から現れた。


「む、(それがし)に気づいておったとは......さすがは我が師の師を倒す実力者よ!!」


女性はため息を吐いた。

名乗りを挙げる先程と同じ世界から召喚された剣格に、今の現状で対処するしかない状況。


(嫌になるわねー、こういう展開......)


しかし、覚悟を決め残った左手で黒耀のナイフを軽く握る。


「戻られた我が師【剣匠】に聞いておったが、まさか【剣神】様まで倒されるとは、実力不足は否めないが某も【剣聖】の位を承った者!師に代わり、一太刀入れさせてもらおう!!」


袴をはいたいかにもな格好の20くらいの男性は腰にある刀に手を添え、居合いの構えをとっていた。

対して、口では適当に返事し、切られた腕をその場に落とす、ボロボロの服を着る女性。


「片手の私じゃ、相手になるか分からないわよー。」


そう言いつつも、エントランスを覆うお互いの気と魔力の高まり。


刀覇聖世(とうはせいせい)流、【剣聖】比良切(ひらぎり) 逆音(さかね)ーーー」


「これも三回目か......元魔皇城調理担当兼暇潰し相手、現魔皇城唯一の攻撃戦力、オプシディアーーー」


「押して参る。」

「君主の脅威を取り除く。」


同時に言葉を紡ぎ、再びエントランスに剣撃の音が響き始めた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。



コンクレント城のエントランスで始まった戦闘を物陰から覗き込む人物がいた。

真っ白い髪のおかっぱ頭の女性はハラハラと隻腕の女性を見守っていた。


「が、がんば、って!オプシー」


そしてその無防備な後ろ姿に襲いかかるこの世界にはいない1mくらいの異界のトカゲ。


「Sya----!!」


トカゲが女性に噛みつこうと口を開き肩口に触れようとした瞬間。


ザシュッーーー


「Gyau?」


トカゲは視界が回転していることに気がついた。

その回転の際に自らの体を上下逆さまに見ることが出来る不思議さに違和感を覚えるだけで、見かけた体と自分が首から切り離されて気づいていなかった。


「セレナイトさん......行きますよ?」


セレナイトと呼ばれた女性は振り向き、血に濡れた右手を振るい手についた血を落としている同じメイド服を着る人物に返事をする。


「は、はい、ユーディ、アちゃん。」


「ちょ、ちゃん付けは止めてくださいよ!!」


頬を赤く染める可愛らしいユーディアと呼ばれた少女は、セレナイトの腕を引きその場を移動していく。


「あれじゃ、近づけませんし、私が回復してあげることも......」


「う、うん、ユーディ、アちゃん......私たちじゃ足手まとい、になりそうだ、もんね。」


シュン、とする小柄なユーディアの髪を撫でつつその場を移動していく。


(無理はしないでね、オプシー......)




移動中、トカゲやらハチ擬きに襲われるが、襲ってきた異界の化け物はセレナイトに近づくことを極端に恐れていた、その代わりにユーディアが攻撃の対象になるが、ユーディアは小さな体躯を活かし、城内の壁や天井を俊敏に掛け的確に化け物の弱点だけを突いていった。


「ご、ごめんね?ユーディアちゃん。【浄化(特)】使おうか?」


「ダメですよ!その力は強力な切り札です!!あとちゃん付けは辞めてください。」


「で、でもね?おそわれて、いるのは、ユーディアちゃんだ、けだし、怪我も、しだしたし。私も、力に......」


「な!?け、怪我をしたのは私の実力不足なだけ、です!!」


おろおろして指と指を合わせることをしているセレナイトの言ったことに、少し切れ気味に返して襲ってきていた放電してくるハチを腕の一閃で真っ二つにする。


はぁはぁと息を乱しつつも、キッとした目付きでセレナイトをにらむユーディア。

ユーディアの視線を受け、驚きの表情を作り、その後優しく微笑んだ。


「私は頼りないですか?......セレナイト。」


「......ごめん、お任せしますねユーディアライト。」



二人は城内を敵を蹴散らしつつ歩いていく。



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