強襲②
遅くなりましてごめんなさい。旅行に行っていました。
誰かの暇潰しにでもなれば、いいな。
日が沈み外が暗くなる中、小人族の町と魔性の森の丁度境目に光属性の自然魔法によって照らし出されていた草原があった。
ここは、魔性の森と町を繋ぐ街道で、他には何もなかった。
昼間はきっと見渡しがいいのだろう。
「500名近く集まりましたね。これより作戦開始です。各自事前に言った通りに準備してください。」
淡く照らし出されるだけで、人が密集して暗く周りの人の顔がよく見えなかったが、他の人たちはてきぱきと準備したり行動に移しているものもいた。
どうやら素人は混じっていなく、本格的の精鋭メンバーのようだ。
まぁ、種族は沢山いるが......
「あいてっ!ごめんなさい。」
「あぁ?気を付けろよ、貴族の坊主。」
キョロキョロしていたら、大剣を背中に背負う長身で筋肉質の男性の腰元に振り向き様にぶつかってしまった。
目をバッテンにしながら謝ったが、どうやら許してくれるようだ。
去り際に『なんで貴族の子息がいるんだ?』と呟いていた。
がやがやしている会場で不安が大きくなるし、それにしてもよくこんな暗い中を平然として歩けるな。
と感心していると後ろから声が聞こえた。
「アンさん、大丈夫ですか?」
「へ、へーき。」
おでこを押さえながら部分的に痛いところをさすっていく。
当たりどころが悪かったらしい、じんじんした。
私がさするのが平気じゃなさそうに見えたらしく、『治癒の奇跡を使いますか?』と聞いてくるので遠慮させて貰った。
溜めた魔力により、死後数十分程度なら回復させることが出来るらしい。
そんな魔法をぶつけただけのおでこにかけて貰うわけにはいかなかったし、これから戦場に出るのに魔力を下手に消費できないと思う。
「そうですか、でも、なぜこんな密集地帯にいるのですか?これではぶつかって当たり前です。」
「それは、目立たないように紛れるためだよ!セラフィさん目立つし。」
「そんなことは......オプシディアほどでは......」
「どっちもどっちだと思うよ。」
まぁ、そういう私も、今は天使のメイドつき貴族の子供が武勇でも立てに参加してるのか?足手まといじゃないのか?とかこそこそ言われているんだけど、それも500人の密集地帯だけなので、光魔法で自分達の周りを照らして作戦行動のおさらいをしているリストリアのメンバーとその周りにいる部隊長には気づかれていないから安心だ。
セラフィはオプシディアさんと比べられて少し苦笑い気味だった。
さて、そんなセラフィはなんと私が魔皇城で戦闘訓練と常識(お金とか買い物方法とか色々)を教えて貰っているときに常識について教えてくれた先生であり、結構話をする仲になった。
基本的には全員と支障がない限り毎日時間を作って会っていたが、セラフィに会いに行くと大抵オプシディアと一緒にいることが多かった。きっと仲がいいのだろうと思う。セラフィの見た目は色と翼以外はオプシディアにそっくりだ。
今現在は密集しているため6つある翼を小型にデフォルメして背中でピコピコ動いていた。
ショートヘアーでストレートの白髪に服装は魔皇城の使用人服。
おまけで背中から可愛い6つの翼。
さらに頭の上に浮かぶ光の輪。
上から下まで見ていたら、セラフィが問いかけてくる。
「なんでしょうか?どこか変ですか?翼は仕舞いましたので、目立たない筈ですけど......」
「......今思うと、セラフィさんが目立つのって翼じゃない気がしてきた。」
「?」
首を傾げるオプシディアとそっくりな顔の物質精霊は自分でキョロキョロと確認していたが、頭上の光の輪については触れていなかった。
もしかして、私の頭にあった花と同じで取れないかもしれないな.......
と納得することにして、頭に疑問符を浮かべるセラフィに気のせいだったと伝えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
「思うに、今の私って良いとこの坊っちゃんに見られるんだけど、衣装持ってきたのセラフィさんだよね?」
「似合ってるから良いじゃないですか。生意気な貴族に支える薄幸メイド.......いけませんご主人様、そんなことまで......ああ。」
「ちょっとまって、ここでそんなこと言うと洒落にならないから!?隣のイヌミミ冒険者が短剣シャキンシャキン言わせてるから!!」
なにもしていないのに、いきなり腰元に抱きつきそんなことやるもんだから、周りから距離を取られ、殺気を向けられてしまった。
セラフィに責任をとって貰い誤解を解いていると、この密集地のど真ん中で私たちの方へと人垣が割れた。
「いえ、ちょと辛かっただけですので......おきになさらず。」
「辛かった!?違うでしょ?か・ら・かった・でしょ!!......んあ?」
人垣が割れた方へと視線を向けると、悪魔さんがいた。
悪魔のリリエスさんは頬を人差し指で掻きつつ、困った顔をしていた。
「えっと、セラフィナイトさん?ここで何してるのよ?」
「ああ、リリエスですか?私はこれからフルエンクを観光しに行きたいと言うアン......リ様をあそこまでつれていこうかと。」
そう言って、コンクレント湖上都市の上に覆い被さるように浮かぶ巨大な建造物に指をさしていた。
観光って......いや、強襲作戦に加わっても足手まといは確実かな。
きっと、偽名まで使って取り繕ってくれたんだろう。さすがセラフィ。
バレなくてよかった。
そう思ったのも束の間、悪魔さんに冷たい視線を向けられてしまう。
「は?観光って......今どうゆう状態か分かってるんですか?」
「え?まぁまぁ。」
「貴族様が参加されても護衛とか........」
この世界に貴族がいることは教えて貰っていたが、護衛や世話をする人が同伴するのが普通らしく、悪魔さんは強襲作戦でそんなことしてられない。と遠回しに言いたいようだ。
一応貴族相手だからか丁寧に話すが......
恐い顔で説教を始めだす悪魔さんをセラフィが取り持ってくれた。
「そこら辺のことはお任せを、それゆえに仕えていますからね。気にせずに。迷惑にならぬように別行動を取りますので。」
「まぁ、それなら。」
渋々了承する悪魔さん。
話を変えるセラフィ。
「で、私に何か用でもあったのでは?」
悪魔さんはハッとした顔をしていた。
わ、わたしを怒るよりそれやれよぉ......
「セラフィナイトさん!想天花のシュレイはどこに!?」
「「はい?」」
声を揃えて返事をしてしまう私とセラフィ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
「いいですか!絶対離さないで下さいよ。」
「はいはい、わかってま!あぁ強風が!」
「ぎゃぁぁぁああ。」
「あははははは。」
眼下に広がるは大きな湖。
頬を撫でる風。
足が地面についていない浮遊感。
上空には日の光を遮る大きな建造物。
唯一良いところは雨に濡れないこと。
真っ暗な夜。後方では上空に向けて打ち上がっていく光を纏う強襲隊。
大きい地盤が人を乗せたまま上昇していく様は神秘的.......まさにファンタジー。
これ、打ち上げてる人って魔法使いじゃないんだぜ?
「アンさん、後ろ向いていると......トリトリの排出物が。」
「ごめん、せめて避けるかなんかして欲しかったかな。直撃してるんだけど。」
「大丈夫ですよ。ここは教えて貰った浄化魔法【クリーン】の練習も兼ねて。」
「手が使えないと無理......って言っても離さないでよね?」
「......」
「なんで残念そうな顔してるの?」
結局セラフィに浄化魔法を掛けて貰った私は現在、両手をセラフィさんに持って貰い空中をコンクレントに向けて飛んでいた。
途中、何度も揺すられたり離されたりしたが、体が変わったからか、手足を動かせなくなるほどの恐怖を感じるとこはなかった。
ショック療法?あり得るかもしれない。
「まさか、ご主人様の尻拭いとは......懐かしいです。」
「シュレイさんがいけないんだ......空中都市探索の方がたのしそうだったのに!」
悪魔さんから、シュレイさんがコンクレントに向かっていなく、行方不明と言われ、唖然とした私たちは、とりあえずシュレイさんが言われていた援軍要請のためコンクレントに向かうことになった。
移動はセラフィの【飛翔】スキルで6つの翼を駆使して結構な速度で飛んでいた。
理由は、ギルドとして魔皇城に依頼をした形らしく、セラフィの任務の扱いになっている。
つまり、報酬がでる(多額)。
それを聞いたセラフィが私の話を聞かず、即座に飛翔していった次第だ。
「そろそろ着きますね。」
「あっちも上陸したのかな?」
セラフィは速度を緩め、段々と旋回しながら高度を落としていく。
私は後ろを振り返り、上空の建造物でカラフルな閃光と爆破の炎を見ていた。




