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魔法想花の小さな庭園  作者: 流水一
4章ー半精霊化ーフルエンク攻略
62/105

T-REEW『ヒトカタの符』

「ほらほら、いくわよ!【サンダー・アローX3(えっくすスリー)】」


シュレイさんの手から、周囲の空間を歪ませて放たれる電撃の矢を横に走りかわしていく。

しかし、数分前にも全く同じ魔法を使われてるので、矢がワンピースの腰元を掠め、通り過ぎた瞬間に私はのけ反って腰元の位置より上に上半身が来ないようにした。うん、最近身体の柔らかさが半端なく上がってきている気がします。


私がのけ反った数瞬の間に電撃の矢はすでに通りすぎて消えているのに、矢を触ってしまった腰元の位置から突然斜め上方向に電撃の矢が発射されたのだ。私は避けるので精一杯でわかりませんけど、この魔法名のようにある機転を中心にXの字が描かれているのでしょうね。

一回目は肩を掠め、その後の2撃目で斜め下方向に発射された電撃で下腹部を貫かれ、意識を数秒ほど飛ばしてしまいましたが、さすがに二回目は避けきれたようです。のけ反った姿勢でシュレイさんを視界に納めていますが、シュレイさんは感心した顔を見せていました。


「......やるじゃない。」


(まだここからですよ!!)


心の中で返答して行動に移した。

身体を起こし、シュレイさんに駆け出していきます。

シュレイさんの戦い方は、【想天花】スキルでの近接・遠距離の多彩な攻撃だと思っていましたが改めて思うのが、電撃による遠距離戦闘が主になってる気がしてきました。手加減して接近戦をしてこないだけかと思っていましたが、どうやら違うようです。

まぁ、記憶世界で、私よりシュレイさんの方が息が切れるのが早かったことから、体力が少ない、純性の魔導師タイプなんじゃないかと最近感じてきました。


それなら、接近すれば......


とかよく簡単に言いますけど、シュレイさんから放たれる魔法が豊富すぎて、全然近づくことが出来ず、私への電撃の余波ダメージと疲労が蓄積されているのを感じます。

しかし、さすがに、庭園内の模擬戦とはいえ、一発は入れたいと思う私は無謀なのでしょうか......


繰り出される電撃の槍。

追尾してくるレーザー光線。

近い所まで行くと紫電の網で強制麻痺。

しかし、遠くまで離れていると遥か頭上からピンポイントで落ちてくる、雷属性を纏った宝物庫の武器群。

唯一の救いは宝物庫から一本ずつ放たれていることでしょう。


故にシュレイさんを出し抜くには、シュレイさんが予想もしないことをするしか無いわけです。

そして、この戦いに勝てたなら、約束通り、私も外の世界に連れてって貰います。

いい加減に軟禁生活は辛いですよ......私の為だとしても......それでも、私の好奇心は止められないんです!!

そう言ったら、シュレイさんからどす黒いオーラが視覚出来ましたけど......

それで、何故か私のフォローをしてくれたエルシュさんの計らいで、『模擬戦である程度戦えたらOK』という条件を貰ったのです。

エルシュさんは......何故私のフォローを......


つまり、そんなわけで、かれこれ戦いはじめて20分。

その内訳はー

開始ー15秒で【サンダー・アローX3】で撃ち抜かれる。

2分後ー背後を取り、掌底を繰り出すも、全方位範囲魔法【スパーク・ウェブ】で強制麻痺(パラライズ)

10分後ー超遠距離から【霧の(ミスト・クロス)】で隠れて様子を伺うが、上空からの落雷槍【ライジング・トライデント】で胸のど真ん中を貫かれる。霧の衣?そんなん蒸発した。

それ以降は、なんやかんや、致命傷はかわしている私です。


しかし、流石に敗色濃厚ですね......

頭を捻ってもシュレイさんに一発いれる未来が見えてきません。

うんうん唸りながら、中距離で攻撃をかわし、反撃とばかりに先程プレゼントして貰った『高枝切りバサミ』の10cmくらいの(エッジ)を分離し浮遊させて、シュレイさんの身体が菱形で片刃の槍先みたいな片割れと、結構前に設置しておいた曲刀のように沿っている受けの対角線上に来た瞬間にハンドルを握り込みます。


「これでどうです!?」


「!おわぁ!?」


シャキンーーー!!


結果シュレイさんに回避行動を取らせることに成功しましたけど、それだけです。

【接続】されたハサミは私が握る『高枝さん(命名)』に戻ってきました。

一回分離して、挟み込むと、自動的に元の形状に戻るようです。


「それチート過ぎるでしょ!?なによ!【対植物】って私の防御【スキル】軒並み無効化とか。」


「接近・中距離・遠距離を網羅するシュレイさんが言うことですか!!」


「ばかね、努力の結晶と言いなさいよ!あとはエルシュね。【サンダー・ウェーブ】」


「ちょ、わ。」


シュレイさんが叫びつつ、今度は身体の前で思いきり合わせた両手から電撃の衝撃波を放ってきました。

衝撃波の速度はゆったりとした速度で広がっていきますが、なにぶん広範囲過ぎて、数秒後に飲み込まれて、結構強めの電気マッサージくらいの感覚で意識を飛ばしてしまいました。きっと、あのあと強めの衝撃が身体を襲ったんでしょうけど、精神がすでにノックダウンで痛みを受け付けてなく感じませんでした......ある意味よかった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。



「よかった、また培養槽じゃなくて......」


「なによ、結構きもちよかったでしょうに......」


「いえ、動けないのは結構来ます。」


「落ち着きがないわね......あ、私もよく言われたわ。」


私が目を覚ました場所は、【小さな庭園】の中心に聳える大樹の根本でシュレイさんに膝枕をされていました。

私のちょっとした呟きに苦笑いを返すシュレイさん。


確か電撃の波に飲み込まれて......そうか。


「私は......ダメダメでした?」


わかってる、結果なんて火を見るより明らかだけど、私は受け入れる。自分の弱さを。

決意新たに考え事をしてると、シュレイさんの膝に乗せた私の頭が撫でられました。


「そう、卑下することはないわ、あなたも私、私はあなた。一人じゃないもの。私や、エルシュ......もいるじゃない。」


そうですか......ん?


「はっ!では、シュレイさんは私でもある。ということは私が外に出ても問題ない?」


「......ごめん、さっきの話忘れていいわ。」


シュレイさんはコイツぜってーわかってねーよ。みたいな顔をした後、目を逸らしました。

あれ?そういう意味じゃないのですか?あれ?

どうやら、この反応からダメっぽいですね......

じゃぁ......


「じゃあ.....仕方ないと言うと思いますか?否!ならば奥の手を使わして貰いますよ!」


「え?へ、ああぁ、うん。え?なに?」


しおらしかった私の急変に着いてこれない様子でした。

いやぁ......もう、正攻法はダメとなれば絡め手ですよ!搦め手!!


「お、奥の手って......」


飽きれ気味のシュレイさん。

シュレイさんの膝から頭を上げ起き上がり、シュレイさんから後ろを向き距離を取ります。

はい!そこで【制限(リミット)】でロリ化!


「ちょっと、アン?なにしてるの......」


私の奇行を心配そうに見つめ、こちらに手を伸ばしたり引っ込めたりする立ち上がったシュレイさん。

条件は......整いました。

が、ひとつ問題発生です。


「経過。主様作戦行動まであと2時間ですが......なにしてるのです?」


(チッ、不安要素が出現しちゃいましたけどいけるか?)


問いかけられたシュレイさんが隣に立つエルシュさんに説明しようとしていたところに。


「エルシュ!あのね?ってわぁ!こらアン......あ、ん。」


100cmの小さい身体を精一杯使って150後半台の身長を持つシュレイさんにダイビングハグをしました。

少しよろけたシュレイさんですが、持ちこたえてくれました。

私が突如普段取らない行動をしたことで驚いているシュレイさんと目を会わした瞬間ーーー


「母さま、ここから出して出して出して。アンは外に行きたいのです。」


さらに上目使いで目をうるうるさせます。


どうです!?秘技駄々っ子モード!!

内心ドヤ顔を決める私。

さりげなく、シュレイさんのスカートをパタパタさせます。


「うぇ?あ、うん、え?えええええ?あ、アンが素直に......」


お、効果抜群かも?

2秒くらい放心した後再起動したシュレイさんは叫び声を上げ、目に涙を浮かべそれを片手でぬぐっていました。

ちょっと、誰が素直じゃないって?


「出たいの!絶対でたいもん!」


「えっとね、外はいま危険だから、せめてそれをははが解決してからでね?」


「えーえーえー、やーやー。」


シュレイさんの目が泳ぎ始めたのでもう少しで行けるか!?


と、ところが......


「え?」


無言で私の襟首を持ち上げた緑髪の無表情さん。


「憎悪。虫酸が走ります、一昨日来やがれです。」


「上には投げないでええええええ!!」


いい、遠投。ありがとうございます。

遠くで延びている私を他所に何故か怒られているエルシュさん。


「ちょっと、エルシュ!なんでことするの『私の娘』なのに。」


「笑止。主様あんな分かりやすい手に引っ掛かったら植精の恥ですよ?」


「で、でもね?監禁は教育に良くないかな?って思ってきたり?」


おお、どうやら、私の全力のアピールがうまくいったのかもしれません!

しどろもどろで答えるシュレイさんにため息を付くエルシュさん。

私が立ち上がり、二人の場所に向かうと、何故かエルシュさんの鋭い眼光込みで正座を命令されました。

正直少しやり過ぎたかなって思ってきた私は素直に従います。いやぁ、調子のりました。でも謝るのは形だけです。


「驚愕。本当に最終兵器に相応しいと思いました。私が居なければやりたい放題できたでしょうが残念でしたね。」


「いえ、ただ、出たい一心だったんです。そんなにやり放題なんて.....」


無表情で坦々と答えるエルシュさんに顔色を伺いながら返事を返す私の図。

最後に反省してます。もうしませんと言ったところで眼光の鋭さ......いや、プレッシャーが消えた。


「疑問。ではあれをどうするのですか?」


「いや、すいません。どうしようもないかと、私も好きですし、いいんじゃないですかもう。」


二人が向いた先はーーー。


「はは、うふふふっふふ。『やーやー』とかもうー!うふふふふふふ。」


エルシュさんと私が見つめる先には、頭の上に花のが咲き乱れるエフェクトを撒き散らす、トリップしているシュレイさんの姿が......



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。


しばらくして、シュレイさんを元に戻し、話の軌道を修正させました。

シュレイさんはエルシュさんが耳元で何かを言った瞬間に青ざめて、私の手を握り、『捨てないでね?絶対よ!普通にするから!!』と言ってきました。何言ったエルシュさん!!


「あそこまでやるってことは諦めないわよね?」


そういうシュレイさんに頷く私。

流石にこれ以上時間をかけられないので、エルシュさんが宝物庫からあるものを持ってきてくれた。


「妥協提案。これを使いましょう。」


「ん?ああ、これならいいかな。」


エルシュさんが持ってきたものは、和紙のようなもので、できたヒトガタでした。


「それなんです?」


T-REEWシリーズ

【ヒトカタの符】

T-REEWシリーズのNo.09

分身をつくり、身代わりにしたり、別行動をさせたりできる。

紙に自分または対象の遺伝子または魔力波動情報を取り込ませることで、魔法人形(オートマト)が形成されて本人のように行動を起こす。【スキル】【魔法】【強さ】も同等に使用できる。

そこで、私と言う特異存在がこの符を使うと、現在私の身体の主導権を持っているのは何故かシュレイさんなので、私の精神がこの人形の中に入り、第二の身体として行動できるようです。


ということを二人から説明してもらい、これを使うなら外に行ってもいいらしい。

まぁ、万が一死んでも、どうやら庭園内に戻させるだけのようですね。唯一の欠点は、魔力が極端に低下し、種族が人種か亜人・獣人種の三種類しかなれないこと。


「ていう、条件だけど、どうするのアン。」


「そりゃぁ、もちろん。」

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