欲張りの代償
もうシュレイさんの姿が薄い。
時間が残り少ないことは明らかだ。
「な、何をいってるの.....?そ、んなこと。」
「当然できます。」
戸惑っているシュレイさんに素っ気なく返してしまう。
時間がない、魔力を集める。
集中しろ私。
頼まれなくても私は何かしら手を打とうとしたけど、その場合失敗したら仕方なかったね、で済ませそうだ。
でも今回は、自分の意思と星の思い.......それに悲しそうなシュレイさんの顔を見たら.....そんなの!
失敗は許されない。
ごめんシュレイさん。
今は外に意識を向けてられないの、だから、何を言っているのか分からないけど泣かないでほしい。
きっと私はやって見せる。
よし、貯まった。
私は汗でびっしょりになっている自分と頭の痛さから、この世界に来たとき魔法世界でやったことを思い出していた。
あの時の感覚ににている。
高速に動く心臓。
体の全身を襲う痛み。
顔を蒼白になってるのかな?
カチカチとなる音はどうやら私の口からのようだ。
シュレイさんが私を止めさせようと抱きついてきたけど、そのときの衝撃が痛みとなり私を襲った。
口から悲鳴が漏れたけど、ごめん、シュレイさん。
今は......触らないで。
「アン!バカなことはやめて、やめなさい!私の言うことを聞いて!!」
耳元から声が聞こえる。だいじょうぶ......だから。
まずは......【想天花(黒/白)】『境界』で私自身の魂を半分に。
お願い成功して!
そう願う私が右手に握る金色の結晶にも力を込める。
ーーーーーーーー。
『『成功した。』ようね。』
私が......ぶれている。
まだ意識は繋がっている。
私は分けた私......結晶を握っている私にシュレイさんの手を握り【想天花(青)】の合成......魂の合成を実行した。
シュレイさんは何かを感じ取って離れようとしたけど、私が思いっきり掴んでいて身動きが出来ないでいる。
もう一人の私は私に口で何かを言った。
わかってる。
ちゃんと聞き取れた。
ありがとう。
私の半身と私の中に残っていたシュレイさんの封印がさっぱり消えた。
シュレイさんは私の半身と統合されて、薄かった体がちゃんとした実態を持っていた。
よかった......
でも、終わりじゃない。
私は魂しかない世界で血を吐き出してしまい、シュレイさんが駆け寄ってくるが、今はまだ近づいてほしくないので【想天花(黄緑)】を使って遠ざけようとして.......できなかった。
スキルが発動しない。
呆気に数秒とられるが即座に次に移る。
このままでは現実に戻ったとき、私の体はひとつだから戻れる魂は一つ。
入れ物は一つ。
だから、更なる手を打たなければならない。
私が消える?
それはない。絶対しない。
大事な人を置いて消えることは『私』は絶対にしない。
「!」
「これ以上はやらせないわ!!」
シュレイさんが泣きそうな顔で叫び、私の行動を封じようと魔力を高めていた。
今は不味い。
でも、あることを閃いた。
私は自分の中に意識を向ける。
ここではカードが開けないけど、意識すればプロフィールが見れる。
目的のモノを見つけた。
よし、あとはタイミングだ。
「アン!ごめんね。私はアンにだけは、「なんですか?シュレイ母様は私を残していなくなりたいと?私にやっと見つけた家族を失えと」.......ちがう。のよ。」
シュレイさんは頬に涙を流し、でもーーー。
「今はそれでも、きっと未来は......【想天花】6種ーーー。」
今だ!
私はスキルを発動する想天花の植物精霊であるシュレイさんに向かって『吸収』と『合成』の力を合わせて使用した。
「シュレイさんと私のありったけのスキルをーーー。」
シュレイさんのこちらに向けた右手に私は左手で指を繋ぐようにしてーーー。
閃光に呑まれた。
わたしはーーー。
閃光が収まったその場には黄色い大きな花がパサリと地面に落ちていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー。
目が覚めると、私は深い懐かしさに襲われた。
目の前には身の丈ほどもある白い髪で目元すら隠す人物が覗き込んできていた。
「アン?戻られ、ました、か?」
そういうセレナイトは恐る恐る声を掛けてきた。
私は、ニッコリと微笑んだ。
それを見たセレナイトはホッとしたようだった。
「セレナイト......さん、ハサミを持ってきて貰えますか?」
「え?」
不思議そうな顔をしていたが頷いて部屋を出て取りに行ったようだ。
私はベットから起き上がり、頭から何かが落ちたのを感じた。
頭の上に乗っていたのは大きな6色の花だった。
それを大事そうに胸に抱える。
そうしていたら、セレナイトが銀色の髪をもつオリジンを連れて戻ってきた。
「お目覚めですか。」
やはりホッとした様子を見せる彼女達。
私は一体どのくらい寝ていたのか聞いたところ約20日らしい。
その間、外で起きたことを聞き流していたため詳しくは分からなかったけど、オリジンなら必要になったら再度教えてくれるので目の前でハサミをチョキチョキと開いたり閉じたりして動かしていく。
「......」
「え?......え?」
「......あんさま?」
私が突然セレナイトの床に着くほど長い髪を優しく掴み、ハサミをそこに差し込んだとき。
戸惑うようなセレナイトと私に対して何かを思うオリジンの声を聞いた。
ジャキッーーー。
「っ!?あ、あん、なに、して!?」
「.......」
「何って?セレナイトに『あ・り・が・と・う』の忌みを込めて。」
「意味じゃ、なく、て忌み!?」
「......」
私からすかさず距離を取ろうとして立ち上がろうとするが、私が髪を引っ張りそれを阻止した。
「あぅ。」という声を上げその場に座らされるセレナイトと私を見透かすように射抜くオリジンの眼。
しばらく髪を引っ張っていたら。
オリジンが口を開いた。
たぶんあり得ないと思っているのだろう。
「......シュレイさま?ご主人様です.....か?」
不安げに問うその言葉に私はニッコリと微笑む。
「1000年ぶりね?あなた達。」
そういう私の優しげな声にオリジンも髪を捕まれたセレナイトも眼を見開きこちらを見つめてくる。
宝石・結晶系の物質精霊は見抜く力が優れているため理解したのだろう。
しかし......
「よくも、余計なことをしてくれたわね。」
アンの姿のシュレイの雰囲気が本当に怒っていることを感じ汗が首をながれる二人。
息を呑む二人にさらに言葉を重ねる。
「よくも私のアンを!!」
言っていることはわからないが、アンだった本人はどこにいったのだろうか。
とりあえず何があったのかシュレイ様に聞こうと決めた二人だった。
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