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魔法想花の小さな庭園  作者: 流水一
3章ー発芽21日目~40日目ー動きだす都市
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元凶

社員旅行で仙台へ行ってて更新が出来ませんでした。ごめんなさい。

読んでくれてありがとうございます。

刹那さんは少年の元に向かわなかった。

五月さんが逃げようと説得をするが刹那さんは一歩も引かないようだ。


「義姉さん逃げて!今生きているのは義姉さんの子供と義姉さんしかいないんだよ!今なら......まだ間に合うわ。」


「五月さん、逃げてどうするのですか?終らない鬼ごっこはごめんです。それに......」


そういう刹那さんは林に厳しい視線を向けた。

林の入り口からぞろぞろとこの場所に不釣り合いな黒覆面が湧いてきた。

数は30をとうに越していた。

いまだに増え続ける不愉快な存在。


こちらを扇形に囲み伺ってくる。

刹那さんはただ無言で立っていた。

お互いの間に静寂が訪れた。


五月さんの息を呑む声が、辺りに響いたような錯覚。

動きはない。


五月さんはどっち付かずな困った様子だ。

義姉に向かって構えるのか、それとも自らの家に敵対するのか。

迷った末結論を出した。

しかし、


「五月さん本当に頼みましたよ......」


「え?そんな終わりみたい、な。」


五月さんは振り向こうとして首に手刀を暗い意識を落とし、草原に倒れ込んだ。

黒覆面はまだ動かない。

なにかを待っているようだった。


五月さんを寝かせ、覆面の方に優しく放る。

周りの覆面は慌てたように受け止めていた。


「魔皇シュレイ......見ているのでしょう?」


その問いかけには言葉はわかるが意味がわからなかった。

その場にはシュレイさんがいなから。

その問いの答えは空から降ってきたように感じる。


『エルシュを通じて見てるわ。こっちも術士がわんさか来てるわよ。』


突然の声に黒覆面たちは辺りを見回し偵察を出していた。

口の中にある血を吐き出し、声を掛ける。


「あの子達は......『エルシュに頼んだわ!安心して。』」


......エルシュ?

重なる声にホッとした表情の刹那さん。

刹那さんは雰囲気をガラリと変えた。

睨みつけるは元凶。

ついに姿を見せる杖を付く老人とその隣に立つ30過ぎの彫りが深く渋い男。

だれなんだろう。


前に出てきた杖をつく白髪頭の老人は黒覆面に抱えられる五月さんをゴミを見るような眼で見つめていた。

隣の渋い男は一別もしない。


「ふん、子供が囮くらいにはなったか、対してお前は.......しかし、お前の子供は才能の塊だからのぅ。こまーーー。」


「あら、私を無視して当主の嫁に首ったけですか。」


「抜かせ、死に損ないの化け物の親よ。」


そんな言い合いが続く中、私は心中穏やかでは居られなかった。

この人が元凶!この人さえ!!

そう思うがもう遅いのだろう。


老人は黒覆面の前に立っていた。

男性はその隣だ。

両者からは物凄い圧力を感じた。

覆面の彼らも距離を取っているようだ。

刹那さんは深呼吸をして、でも、それだけで噎せてしまい血を吐き出していた。


「なんで前線に来たのかは知りませんけど、その間合いは命取りですよ......」


「時間稼ぎのブラフだ......奴はもう動けない。」


渋い男性は即答する。

周りの覆面は警戒しつつ少し近づいてきた。

いつでも飛びかかれる距離だ。


刹那さんは老人の隣に立つ男に鋭い視線を向ける。


「自分の愛する人や子供まで利用されてなんとも思わないのですか?」


「当主としての務めを果たすために犠牲は付き物だ。」


「......それは本心?」


「ああ、そうだが?当主は俺だ、俺の決定は絶対であり......それに、コレには劣るが近い実力を持った女なんて幾らでもいる。」


そういう男性は黒覆面に抱えられてぐったりしている五月さんを顎でさしながら言った。

私はその男に殴りかかるが体がすり抜けてしまう。

触れることはできなかった。


刹那さんは私が記憶を見てきた中で初めてその体に殺気を纏っていた。

それを見ているだけの私の肌を刺す痛みを感じた。動きが緩慢になる。


「......あなた達だけは死んでも殺してあげます。」


「カカカっ、不可能なことを。」


そうして......両者の間に火花が散る。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー。


三人の戦闘時間は短く、すぐに決着がついた。


「ごはっ、き、貴様ぁあ!」


「どう.......しますか?」


血を吐く老人の胸を貫く刹那さん。

近くに倒れ伏す先程までいた渋い男性。


倒れた男性の地面は真っ赤に染まっている。


忌々しそうに視線を送る白髪の老人。


「おのれ、だが貴様も......それで、はな。」


「......うっ、ごふ、ゴホ。」


「あ、はぁ、か、カカカッ手土産だくれてやる......わい。」


刹那さんは老人の体を無造作に投げ飛ばし、自分の胸から生える白くて細い腕の主を振り向きざまに投げ飛ばす。


「.......」


「殺す、よくも!義姉を......私が敵を!」


わ、わたしは困惑していた。

だって刹那さんの胸を貫いたのが涙を流しこちらを怒り狂った目で睨んでくる五月さんだった。


でも、刹那さんは先程と違い少し驚いた顔をしたが、何故か満足そうにその場を......


「では、本当に頼みましたよ。五月......シュ、レイ。」


「え?義姉さ、ん......あ、あああ。」


五月さんの肩に手を置きそのまま倒れ込んだ刹那さん。

もう、起きない。

わたしは......さわれない。

ダメだ、息ができない。

唯一の家族の死に際を見るなんて......はは。


「うわああああああああああああ、あああああ、どうして!?だって今!貴方達.......」


景色が閃光と怒濤の雷に染まる。

視界に広がる先には、刹那さんに寄り添うようにしゃがみ泣き叫んでいた五月さん以外が真っ白な塵とかしていた。

そこに生える草すらも風が吹けば粉状に飛ばされ、この場に生きているのは五月さん一人になっていた。

死体すらも残らない。

範囲は私が見た中で最大級だった気がする。

屋敷もすべて飲み込まれていたらしく、急速に風化したように風に運ばれていく。

今の場所の林もなくなり、遠くの学校がある町からも白い粉が舞っていた。

それは視界を埋め尽くさんばかりの量だった。先が見えない霧に近いかも知れないと思った。


「ッ......だれ!?」


刹那さんを抱き抱え今の出来事を認識した五月さんはこちらを見つめる存在がいることに気づいたのか体を硬直させた。

私からは見える五月さんの真後ろで五月さんの頭に蹴りを放つシュレイの姿が。


「ぐっ、なん......え?」


不意に頭に掛かる蹴りの衝撃で吹き飛ばされ、起き上がり顔を向けた。

そのショートヘアの前髪側面からどこかを切ったのか血が流れていた。


「刹那......逝ったのね。良き来世があらんことを。」


記憶のシュレイさんは半透明な身体ではなく、しっかりと実体を持っていた。

シュレイさんが刹那さんを抱き抱えて顔に手を翳したら刹那さんの身体が粒子になってシュレイさんに取り込まれていった。


「なにして!?こ、この!!」


シュレイさんに止めさせようと攻撃を繰り出す五月さんだけど......


「あんたが、あの子の母親ね......そっくりじゃない。」


平然としているシュレイさん、その周りに攻撃を阻む緑色の花が五月さんの繰り出す攻撃を止めていた。


「どうして、触れられない!?」


シュレイさんの【想天花(緑)】の効果で触れることすら出来ないようだ。

段々と粒子になり消えていく刹那さんを見て焦る五月さん。

シュレイさんが刹那さんを粒子にして取り込んだあと、呆然とする五月さんに声を掛ける。


「さて、話は聞いたし、あんたが幻覚魔法みたいな影響を受けていたのは知っていたけど、一発は入れさせて貰ったわよ。」


「あなたはっ誰なんですか!?」


「誰ってシュレイ。魔皇シュレイよ。」


「しゅ、れい?それって六花から聞いた......」


「......知らないわよ、そうじゃないの?」


シュレイさんは淡々と受け答えしていたが六花の名前が出たら嫌そうな顔をしていた。








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