表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法想花の小さな庭園  作者: 流水一
3章ー発芽21日目~40日目ー動きだす都市
35/105

封印の先

複合スキル【想天花(黒/白)】の『境界』の力で、封印されていた空間に再び戻ってきた。

最初にシュレイさんに話しかけたときと一緒のセピア色の景色。

『境界』の力で別の記憶領域で過ごしていたけど、ここの時間は止まったままだ。

風に舞う葉っぱも、

水路を流れる水も、

そこにいる生物も、

すべてが止まっていた。


「......」


「シュレイさん?」


シュレイさんは私と繋いでいた右手に力を込めていた。

思いきり握られたわけではないけど、シュレイさんの表情は真剣そのものだ。

まるで、覚悟を決めるような.......


「アン......今の私はアンの魂の一部でしかない、それに今を生きているのは魔皇の私じゃなくて、あの少年と私から生まれた新たな人格......」


シュレイさんはこちらに体を向け、両手を握り優しく言い聞かせるように言った。

そう、私は私なりに生きていくと生まれたときに決めたから、私がシュレイさんになることは出来ないし、少年になることも。

分かっている。


「封印した記憶はたった1日の出来事。私が終わり......そして貴方が始まった軌跡。」


「わたし、が?」


そう、と微笑むシュレイさん。


「アンが神様の神域で分けられたときから、これまでの記憶を見せて貰ったの。」


それって私がシュレイさんの記憶を見ているのと同じことですか。


「貴方はあの子の記憶を持っているけど、このときの記憶だけはないはずよ。」


そう言って、大きな木の側で走り出した姿勢で止まっている少年に視線を向けました。


「思い出してみて.......母親や家族のことはなんとなく覚えているけど、その家族がいつどこで、どうやって亡くなったのかが分からない.....違う?」


「そう言われれば、小学校低学年の記憶がポッカリない......でも、知らないけど知っている?え!わかんない。」


ダメだ、頭がおかしくなりそうだ。

私は、昔を知っているのに、知らない!?


「落ち着いて、混乱するのはしょうがないことなの、貴方に私の記憶が無くても、あなたの中に封印と一緒にその時を知っている私がいるから......」


シュレイさんは苦笑いをした。

少し悲しそうな......いや、気のせいかな


「でも、今日で混乱するのも終わりになるわね。」


「なんでです?」


そう言って首をかしげる私に微笑んだ。


「だって、封印が解かれるのよ?こうモヤモヤが解消されてスッキリッみたいな。」


「いや、どっちかというと私的には封印の理由が深イイと感じると思います。」


「なにそれ、どんなときよ。」


そんな冗談も交えながら会話をした。

やはり、シュレイさんはなにか重大なことを隠している。

私の予測としては想天花のスキルを4つ覚えた辺りから、一昨日辺りからだ。

もうずいぶんといる気がする......だからかな、何と無くシュレイさんとお別れ的なことになりそうだ。

でも、私はそんなつもりはこれっぽっちもない。

私はシュレイさんが好きだ。

ちょっ......照れる、まぁ端から見れば一人芝居だろうけど......


恋愛感情とかじゃなくて、家族みたいな愛情?うん、生まれたばかりの私には説明しづらいけど、

母親に向けるあい......ええい恥ずかしいナシナシ。


「何真っ赤になったり、くねくねしたりしてるの?キモいわ。」


「あ、あんっ、たが.......」


「......なに?」


人の気も知らずにシュレイさんは淡々と封印門に異常がないか調べている。

異常はないようだ


では、扉を開き封印を解こう。

濃厚な一日。

終わりの日。

残酷な結末。


「「複合スキル【想天花】4種(6種)『原色のトリニティ』封印解除!!」」


シュレイさんと私の声が重なる。

ふふふ、可笑しい、魂は一緒なのに声の質が違う。

今気づいた。


封印の門は赤、青、緑の鎖でガッチリ閉ざされていたが、声に応じ、私たちの魔力がごっそり無くなる感覚と、何か失う感覚。

シュレイさんの方をちらっと見るが、微笑むだけで......


成功のようだ。

三色の鎖が様々な色に塗りつぶされていく。そして、激しく色を変え発光をし、最後には砕け散った。


「......わぁっ!ちょっ、と!」


視線を扉に向けたら、勢い良く吸い込まれてしまった。

後ろ向きに吸い込まれたからシュレイさんと不意に目があった。

なにも言う暇もなく、即座に暗闇に閉ざされた。


「......泣いていた?」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。



燃える。燃える。なにもかもが燃える。思いは踏みにじられ、助けは届かない。

目の前で人としての尊厳を奪い。犯し。最後には殺す。その繰り返しの......


あぁ、またこっちに来た。ここは地獄だ。

叫び声が木霊する。

助けはない。

大きな屋敷に、黒覆面のおぞましいモノ。

あれは、人なの?

うそ、うそうそうそ。

標的はやはりこの少年......

金眼の『化け物』といわれ忌み嫌われてきた少年

ああ、魔の手が迫る。逃げてと叫ぶ声も枯れ果てた。

もう私は.......こんなのヤダ。

誰か助けてよ。

この涙を流し声をあげ、必死で逃げ、時に屋敷の家族や使用人に助けられ、

でも少年の変わりにみんな死んでいく。

ただ死ぬだけじゃなくて、死体に.......吐きそう。見たくない見たくない。

なんで、それでも、少年はみんなに後押しされて......助けたひとが死んでも!

なんで、止まらない?諦めない。

違う......少年は背負ってるの?みんなの意思を......

希望、少年に生きていてほしい。

それだけを.......大切な人を失っても......

ダメだ......意識が遠退く。

少年はどうなっーーー。


はっ、気がついたら、綺麗な着物の女性と合流していた。

少年は抱きついていた。ははおや......

お母さん!刹那さんじゃ!?

え?刹那さんの左袖が不自然に......ない。あるべきモノがない。

なんで?

え?

刹那さんは優しく少年の頭を撫でていた。

『ーーーさん、行きますよ。ここは危険です。』

『でも、皆が......わかった。行く。』


後ろ!来てる。黒い覆面達が!!

ダメだ、首の後ろがチリチリ痛い。

心臓は飛び出そうだし。


刹那さんは隻腕であっても、刀を振り回し襲ってくる4人の覆面を圧倒していた。

振るわれる刀は刹那さんの数センチ前を通りすぎ、その近さまで接近された覆面の胸を抜き手で射ぬく。

飛沫をあげる覆面。

激しさを増す攻防。

一人、また一人と倒れていく覆面。

あるものは刀を白羽取りされて破壊され、そのまま息つく暇もなく破壊された刀の先端で脳天を貫かれ。

またあるものは、ナイフ両手に接近し振り回すが、着物の袖を使った奇妙な技にていつの間にか奪われたナイフで首を跳ねられ。

手榴弾を放った者は、先ほど奪ったナイフで手榴弾を弾かれ反射され巨大な爆破音をとどろかせていた。


見ている私ですらあっけにとられる。

ある程度進み、刹那さんは左袖を真っ赤に染めながら辛い顔を見せずに進む。

『はは!りっちゃんが来る。』

『え?』

少年が刹那さんの手を引いて右を向かせるとそこには......

『ーーー!ごめん。』

襟首を捕まれ通路奥に投げ飛ばされる少年。

刹那さんの元に泣きながら走ってくる少女。

刹那さんは少女を少年を投げた方向へ抱え倒れ込む。

そこに、局地的スコールのような一斉射撃と爆薬の大音量。

煙の先には足を引きずるように逃げる刹那さんとその脇で袖を一生懸命引っ張る少年。

刹那さんは残った手で少女を抱えていた。


「......もう、いい見たくない!やめて!終わりにしてよ!!」


その声は届かない。

目の前で血を吐く刹那さんにも、少年にも、

ここに送ったシュレイさんにも。


ーーーーーーーーーーーーーーーー。


屋敷を抜けた。もういやになるほど死と憎悪と絶望を見た気がする。

すんだ空気に意識が洗われるようだ。

『はは?』

『だいじょうぶよ。ゴフッ。』

『うぅ、ぐず、うぅ。』

血を吐く刹那さんは私から見れば限界を越えていた。

生きているのが不思議なくらいだ。

いや、この人の意思の強さかもしれない。

左手はなく、腹部も血で染まっている。

全身の服装は着物の残骸を纏っているようなものだ。

背中には金属片がたくさん刺さり、肩には槍の先端が刺さったまま。

右目は斬られ血を絶え間なく流している。

それでも......

『はは、は休みます。先にあの方のところへ。』

『うん。元気になってよ?』

『......ええ』

『りっちゃん行くよ。』

『うえぇ?』

そう言って歩き出す少年たちと、その場で立ったまま目を瞑る刹那さん。

私は......刹那さんの所に残りました。


少しして、刹那さんは少年とは反対に来た道を振り返りました。

ここは林の出口。

この先には大きな木と、少年の姉しかいない場所。

『義姉さん!ごめんなさい!私が、わたしがぁ。』

林の中から姿を現したのは......

ショートヘアの黒髪控えめな身長。

六花の中学生の時の姿をした少女が刹那さんの腰元に抱きつき涙を流していた。

『だいじょうぶ。六花はこの先にいます。』

『っ、ご、ごめんなさい。私がちゃんと止められたら......』

私には何を話しているか分からないけど、この人が五月さんと言うことはわかった。

刹那さんは五月さんの頭を撫でようとして、でも右手の平に穴が開き血が流れていることから撫でるのを断念した。

『六花を人質に取られたのでしょう?仕方ありません。だって親ですからね。』

『義姉さんは!優しすぎる......でも、ありがとう。この恩は忘れないから。』

刹那さんは少し咳き込んで、血を吐き出し驚いて青白くなる五月さんを無視して言いました。

『すぐに、恩は返してくださいね。』

『え?なに。』

『私は長くありません。昔言ったように代わりにあの子......『バカ言わないで!どうして!』』

しゃべろうとする刹那さんの肩を掴み大きな声をだす五月さん。

『どうして、家族を、一族を皆殺しにした家に預けるなんてことを考えるの!』

困った顔をする刹那さん。

『いえ、私は星光(ほしひかり)家ではなく、五月さん......あなた個人に後見人として預けたいのですけど......』

五月さんのこと好きって言ってましたよ。あの子。

そう言う刹那さんは可笑しそうに笑った。

『なに、よ。なによ。なん、で、ぐず、ばらってるのよ。』

涙声になりながら突っかかる五月さん。

『え?ごめんなさい。思い出しちゃって『でも、一番はははだから』ですって。』


「......ごめんなさい。はは、五月さん。私は.......星は後悔してないのかな。ごめんね星......私と離れた星にはこのことは伝えられないよ。」







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ