幕間ー狂った王ー
次から場面が変わり、シュレイさんとアンさんのツアアアーーーンです。
読んでくださりありがとうございます。見切り発車過ぎて主人公出番が......
コンクレント城の崩壊を湖畔にある異種族集落に避難した住民、冒険者、総勢約12,000人が目撃した。
不安になる人々、憤慨する者、集落の守りを固めたりする者がいた。
しかし、意外と混乱し取り乱したものは10歳に満たない子供くらいだった。
コンクレント周辺地域では異種族間の小競り合いみたいなものがあるが、転送されてきた反りが合わない種族達でもすんなりと受け入れられていた。それはコンクレント湖上都市の初代領主の言葉が浸透しているからだろう。
非常事態は隣人と手を取り合って乗り越える。
一人がダメなら手を繋げる距離にいる者を頼っていこう。
そう常に口にしていたため、街や集落に浸透していき長い年月を掛け、今のコンクレント湖上都市を造り上げてきたと言える。
立ち上がり対策をねる人々。被害に合わないように遠くへと逃がそうと移動する人々がいた。
しかし、それでもフルエンク空中都市の戦力は大きかった。
翌日の朝ーーー。
コンクレント城真上から降りてくる多層型の空中都市。
何故か下部にある主砲みたいな大きな筒が途中で折れ曲がっており使えなくなっていること以外は憮然とした威圧感を感じる程だった。下手に動けば即座に殺されるかもしれないと思わせるほどだ。
そして、コンクレント湖上都市より遥かに大きい下層部がコンクレント城の最上階と接触し、重低音を響かせ動きを止めた。
押し潰す気ではにようだ。衝撃で風が吹き荒れるが凍っているために波は起きない。
レーゼン湖を影で覆い尽くすフルエンク空中都市から湖畔に住まう者達にフルエンクの王から声が聞こえた。
『手荒なことをしてすまない。しかし、君達に被害を加えることはしないと約束しよう。』
そういう優しげな声に不安が薄れゆく人々。
映像も魔工技術の結晶なのかフルエンクの下部から写し出される空中投影の超巨大スクリーン。
それに映る20代前半の長い金髪の青年が微笑んでいた。
『僕たちの目的はこの土地に巣食う魔王を倒すことにあるんだ。だからその間は周辺種族に手はださないよ。』
紳士的な振る舞いを見せるが、これを見ているのが一種族だけなら気づかなかっただろう。
故に、フルエンクの王の遠回しのお前らは後で片付けてやるという台詞に気づけなかったはずだ。
また映像に紛れて、光の点滅からの催眠誘導があったことも気づかない。
しかし、ここには街から移動してきた多種族達がおり、その中にいる魔族や天族が今の王の言葉で洗脳しようとしていることを伝え、また少しでも洗脳されているものを正気に戻すことが出来た。
このことは即座に湖畔集落全域が気づき、急ぎこの地を離れて身を隠し様子を見ることにした。
移動の際も警戒したが拍子抜けのように追っ手すらなかった。
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「ちっ催眠系をレジストする魔族と天使のゴミ共め......まぁいい、住民には興味がない。」
「.......」
映像の結晶石により、大移動をする彼らを虫のように見下しているのはフルエンクの王だった。
そういう王のすぐとなりには、片腕と頭に包帯を巻いている長い黒髪をポニーテールにした勇者がいた。
「それにしても驚いたな、こちらの最大武装である超巨大風氷因子収束魔導砲を破壊されるとは。」
そういう王の声にビクッとする勇者の少女。
その自分の願いが叶わないかもしれないと青ざめる顔をする少女をチラっとみやり満足そうにするフルエンク王。
「いや、いいよ、よくやったよ六花......取りあえずは一発撃てたからね。」
「い、いいのかな?」
「ああいいよ......ただ。」
不安げだった六花がほっとする顔を見せたが、王は言った。
「勇者なのにたった一匹の愛玩動物に押されていたなんて、召喚した僕の妹弟達はガッカリするだろうね。僕の助けがなければ退けることも出来ないとはね。」
「ちっちがうの兄さん!あの人が......あぁ」
冷たい目を向けられ背筋が凍り喋れなくなる六花。
「いいわけかい?六花、君は昔はそんな子じゃあなかったのにね。」
「もう、しわけありません......王様。」
そう決めつけるフルエンクの王に六花を唇を咬み、包帯で巻かれていない手を思いきり握りしめた。
(あれを手に入れたら必ず......)
そう心に決めた。
そんな六花の様子を、王は何が楽しいのか笑いながらフルエンクの中心にある王か関係者くらいしか入れない場所に気軽な足取りで入っていく。
その後に六花は続いていった。
「......ここは、精霊隔離エリアかな?」
周りの人一人が入れるくらいの大きさの培養槽に半透明な緑色の液体が入っていた。
それが部屋の中にたくさんあった。ここにあるのは全部で58個みたいだ。
ただ中には何も入ってはいなかった。
王がある培養槽の前でいとおしげにその表面を撫でていた。
近づくと声が聞こえる。
「これが精霊......あっちの世界で僕が何度声を掛けても出てきてくれなかった存在......」
うっとりとしていた王に六花は鳥肌が立った。
気づいていたらしく六花に説明をしてくれた。
「六花、これは風の自然精霊だ、名前はフィオって言うそうだよ。」
すごいでしょ!そういいって話す王に六花はぞっとする。なぜなら今まで六花が見たこともない子供みたいな笑顔を向けてきたのだ。
「に、にいさん......この人がなんでここに?」
「六花何言ってるんだい?僕が捕まえたんだよ。」
「なっ!?」
驚きを隠せない六花。
続けて楽しそうに王は言った。
「僕がたまたまフルエンク城の最上階でこれを眺めていたら出てきてね。」
そういって取り出されたものがあのカプセルに入った金色の眼だった。
六花は胸が苦しくなるのを押さえ話の続きを待った。
「興味を持っていてね、うまく騙して捕まえたんだ。」
「......は?精霊を騙す?」
唖然となる六花を無視して話した。
何てふざけた話だ六花はそう思った。
「ああ、この中に入ってくれたら、これを出てきたときにあげるよってね、誓約書も書いたし、こっちの誓約書って魔法で書くから逃れられないんだよね、約束やぶったら殺されるし......でも、期限を決めないなんて、『これ』はバカだと思うよ。いくら不滅存在でもこの中にいる限り永遠に利用されることにすら気づかないなんてね。はははっ。」
そういいて笑う王に虫酸が走るが堪えて、目の前の培養槽に入っていた緑の短髪少女......一回だけあったことのある赤い髪の精霊にそっくりな顔をした少女に視線を送っていた。
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精霊隔離エリアから出たら六花に王は言った。
「今の六花じゃ戦力になりそうもないし、ああ、一緒にいた勇者達も連れて、ここより東にある魔獣の谷に行って鍛え直してくるといいよ。それに、今は魔王が湖底魔皇城の攻略に行くからやることないしね。まとめて倒せなさそうだし、強くなってきなよ六花。僕のお人形さん。」
そういって六花は王が頬を撫でた後顎を撫でる手を払い除けるのを我慢していた。
「では、王様行ってまいります。」
そういって踵を返す六花は平然とした顔をしていたが、心の中では嫌悪感で一杯だった。




