放たれる一撃
「なんて無謀な!?」
「いや、意外に行けんじゃねぇ?」
「......障壁は砕いたらしい。」
「ふ、骨は燃やしてあげるわ!」
「リラ......拾う.....」
三人が呑気にいうことに焦って窓を開け飛び出した。
「アナタ達は!!」
冒険者ギルド『イシュリカ』でギルの話を聞いたコーラルが翼を光らせ、弾幕のように襲いかかる魔法や弓の攻撃を、魔法障壁と周りに浮かせた光の球体で弾きながら、速度を上げて遥か上空に飛翔していった。
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場所:フルエンク空中都市ー下層の外表面ー
ごつごつした金属を繋ぎ合わせている表面に足をつき周りを見渡している銀髪金眼のウサミミ少女がいた。
少女は右手に厨二心をくすぶらせる指ぬきグローブを装備して、その手に淡い黄色の球体を握っていた。
「ふん、障壁を抜けるのに7発も撃っちゃったじゃない!意外に固いわ。」
そういってポンポンと球体を弄ぶ。
黒髪赤眼から銀髪金眼に変化したリストリアのメンバーの一人である銀は重力を無視しているかのごとく、フルエンクの下層表面を歩いていた。
彼女に掛かっている星の重力が反対になっていて、まるでフルエンクの下層表面が中心部に対して重力が展開しているように見える。
足元の地面......いや、フルエンクの下層表面から一斉に可能な限りこちらに向けられる魔導銃の銃口。
銀はそんなことは関係ないとばかりに足を前に踏み出し表面を闊歩しようとした。
その時、魔導銃から侵入者排除のための魔法で威力も上がった弾丸が襲いかかってきた。
足元から此方を向く銃から逃げ出せる筈もなくボロボロに成り果てた姿をさらすだろう。
そう思われる驚異の弾幕に対して、弄んでいた球体を右手で横方向のスピンを掛けるように弾く。
すると、全方位から襲う弾のすべてが彼女に触れる1m手前でねじ曲がった。
まるで弾丸が勝手に避けるような不自然な現象。
さらにねじ曲げられた弾丸の半数近くは射ち出した魔導銃とは違う魔導銃に着弾し破壊の音を響かせている。
「甘い甘い。ん?」
そう言って襲いくる弾丸をねじ曲げつつ歩いていき半円の小さな盛り上がりが暗がりの奥から見えてきた。
今までの自動機銃と違い中に人が入っていることが見えた。
ドームから伸びる長い銃身が、連続発射音と発射光が断続的に続いた。別のドームと合わせて2ヶ所から。
しかし、結果は変わらず、横スピンが掛かった球体による現象が最強の防御と化していた。
弾かれた弾丸による被害もドームから放たれる弾丸の威力が高いのか、ねじ曲げた先の着弾地点に弾丸と同じサイズの穴が開いていることがわかった。
銀は回転が眼に見えて落ちてくる球体に眼を向けた。
さすがに高威力で連続性能が高い攻撃のため回転速度も落ちてきたようだ。
今までの曲げる角度が段々と少なくなって来ておりいずれは蜂の巣にされそうだった。
「ははっ、いい加減面倒ね。」
そういってうんざりした顔を浮かべ銀髪にはえる同色の毛並みのウサミミが垂れ下がった。
その場からランダムに走り回り、追ってくる銃口に照準させないようにしてまた、止まった。
「はいはい、終わり。」
ふう、と息を吐きその場に止まった銀は、照準されてしまい弾幕にさらされそうになるが、また避けもせずに球体を右手でスピンさせる。
ただし縦方向に。
すると此方を向いていた近場の銃身から一斉に下<銀から見て>を向き発射音と同時に不快な音を鳴らした。
ところ所で破壊音と金属にぶつかる弾丸の音が反響する。
遠くのドームから出ていた銃身も例外なく足元に大穴を空け煙を発生させていた。
「ふん、どうよ!アイスの恨み.......3倍返しよ。あははははっ」
そう叫ぶウサミミ少女はまるでダンジョンのボスクラスの化け物だった。
とドームで攻撃を担当していた人物はそう思ったらしい。
その後、フルエンク側の対下空防衛システムの6割を潰し周ったとき、流れは変わった。
安全地帯と化してしまった下層表面に立ち、これからどうするか今更ながらに考えていた銀は目の前の上空に逆さまに浮く人物に眼を向けた。
「あ、あなた一人で.......これを。」
そういう長い黒髪の少女は唖然としていたようだが、即座に切り替えて銀に問う。
「リストリアの銀、さん......かな?」
「そうよ。なに?やるの勇者。」
見た目の年もあまり変わらなそうな黒髪の少女の問いにアッサリと肯定した。
銀から放たれるこの世界で数度しか味わったことのない殺気に少女は喉を鳴らす。
「いま、ここを落とされると困るかな......兄さんのためにも私のためにも。」
「ははん、じゃぁ......止めてみなさいよ新米勇者。」
身構える黒髪の純人を見て、おもちゃを見つけたような楽しそうな笑みを向けるウサミミの獣人。
勇者の少女は空中を蹴り、ウサミミ少女は下層表面を蹴り、お互いが逆さまになりながら交差する。
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場所:フルエンク空中都市ーフルエンク軍管制室ー
勇者ルミナスとリストリアの銀がぶつかり戦闘が始まったころ、フルエンク全体は魔法障壁を砕かれたときと同じくらいの衝撃に晒されていた。
そんな中、フルエンクの王から通信が入りその内容に震撼する管制室のワーズとエレス。
「ばっ馬鹿な!?そんなことをしたら住民はどうなると思っているんだ!」
「エレス!!落ち着け.....で王よ、それが上層部の決定なんだな。」
通信が面越しに金髪の髪を束ね右側に流した青年は微笑んだ。
わかった。そう頷くワーズに満足の表情の王。
そして、驚愕の表情を浮かべ声も出せないエレス。
『ああ、そうだ。』
一瞬の沈黙の後、突然、王が今思い付いたとばかりの表情で言った。
『いい加減に管制室の治安維持を頑張る君たちに何か褒美をあげようと思ってね。』
「つまり、報酬をいただけると。」
そのあからさまな態度で、嫌悪感と警戒心丸出しのエレスを右手で然り気無く庇い話を促すワーズ。
『うん、さっき僕の元に勇者ルミナスがすごい剣幕で来てね。「色々と聞かせて貰ったんだ」。』
「そ、それでは!」
それを聞き、ぱっと明るい表情を作るエレスを横目で見つつ、ワーズは嫌な予感がした。
王はニッコリ笑う。
『本当は僕もなんとかしなければ行けないなって思っていたんだよ。だからね、立場の悪い君達が少しでも良くなるようにしようと思うんだ。』
いまだに警戒を解かないワーズは何が起きようとも対応しようと心に誓いを立てた。
『ついては一度僕の元に『来てくれないかな』。』
エレスは「え?そんなおそれ多い......」といい手を左右に振って対応しているが、ワーズは気づいていた。
(エレスには言ってあった筈なのに......)
そう思いエレスを見て唖然となるが表情に出さないようにした。
『いいんだ、エレス。僕の我が儘を聞いて欲しいんだ。だめかい?』
「で、でもぉ......」
そういってワーズをちらちら伺う赤い顔をしたエレスがいた。
「......」
無言を貫くワーズ。愉快そうにこちらをなめまわすように見る画面越しの王。
ワーズは考えているが思考が纏まらない。
(いつ?いったい、いつ催眠を掛けた!?やはり、勇者ルミナスはあっち側だったのか。しかし、浄化の勇者だぞ!洗脳系は.....)
いつまでたっても答えないワーズに王は言った。その口元の笑みを隠しもせずに。
『ああ、ワーズ艦長、【超巨大風氷因子収束魔導砲】の発射指示は僕が出しておくよ。』
「な、なに!」
『じゃ、よろしく。』
ハッとするワーズ。しかし時すでに遅く、機械人の彼女達全員が発射準備に取りかかっていた。
「超巨大風氷因子収束魔導砲の発射シークエンスを開始します。」
「フルエンク精霊隔離エリアへアクセス......成功しました。」
「本艦はこれより風の自然精霊フィオから強制的に属性魔力を抽出します。その際に発生する大気変化にフルエンク全域にいる皆様に警告いたします。けして外に出ないようにお願いします。」
「魔導エネルギーチャージを開始します。充填まで1700秒。」
「フィオからの抵抗を確認。抽出レベルを3から5に変更します。」
「......」
「ー」
そうして、滞りなく始まってしまったフルエンクが誇る最大武装の発射。
ワーズはもう止められないことを確信していた。
そしていつ洗脳されたのか、機械人達に指示を出すエレス。
先程までの考えでは発射を先送り、先送りにして撃たないように工作しようとしていたが、それすらばれていたのか。
声も出なくなるワーズ。
『ああ、ワーズ艦長、さっきの話だけど、毎晩襲われる子達がいるそうだね。僕がやめさせよう。』
「ああ、王さまぁ!」
うっとりしているエレスを見て、歯を食い縛り睨み付ける。
どうせこのあとあるのは茶番だろう。
しかし、なにも答えないワーズに代わり、エレスが答えた。
「は、はい、毎晩嫌々ながらつれてーーー」
エレスの説明が終わり、発射まではまだありそうだ。
王は憤慨した演技に悲しそうな表情など多彩な芝居を見せてくれた。
『うん、わかった......じゃぁ、証言してもらおうか、彼女達に。』
「は?」
その問いになにいってんだこいつ?
という目を向けるのはワーズだけだったようだ。
機械人の彼女達は体をビクッと揺らしたがそれだけだった。
そして、新たに扉から3人の機械人が入ってきた。
それは先程居なくなっていた3人だった。
彼女達はチョーカーのせいで感情が出せないのに助けを求めるような眼をワーズは感じた。
しかし......
『では、聞こう君たちはさっきまで男達相手に如何わしいことをしていた......いや強要されていたのか?』
そういう問いに彼女達は何かに抵抗しようとしており口がもごもご動き声が出ていなかったが、それも数秒立つと。
「いいえ、私達自らが望んでしたことです。これは私達の報酬ですので取り上げないでください。」
そういう彼女から涙が流れたが、ワーズはその涙に言いたいことが言えない心の叫びを聞いた気がした。
ー助けてー
そう聞こえた気がした。だからーーー。
『ん?なんだい艦長.....なにを!?』
そう焦る王にざまぁみろと思いながら、入り口近くにいる三人の彼女達のうち二人のてを取って走り出した。
誰だか知らないが先程この近くに大穴が開いていたはずだ。
そして、後ろから叫ぶエレスの声と通信越しの王の声を無視して左に曲がった。
「お前ら、これを着けろ!急げ!通信遮断装置だ!」
そういってつい癖で投げてしまったことにしまった、と思ったが空いている手で難なくキャッチした二人はいそいそと耳に嵌めた。
ちょうど僅差で通路全域に王の機械人の行動停止命令が来たがそれを無視して3人はたどり着いた穴に飛び込んで落下していった。
ワーズは、落下していく中、腕の中に二人を抱え光を断続的に放つ方向へと視線を向ける。
「あれが、勇者と兎か今回は感謝しないとな......」
そう言って落ちていくが魔法も使えないワーズは墜落死については考えていなかった。
ただ、湖に落ちれば機械人である彼女達は自己防衛システムと自分というクッションで助かるだろう。
そう思っていた。
「ぶ、ぐえあえ。」
数秒たった時、いきなり何かが空中でぶつかったような衝撃に情けない声を漏らす。
腕の中の彼女達を放さなかったことにホッとして今の自分をみるワーズ。
「は?浮いてるだと。」
「精密には私が支えている。と言う方が正しいですが......」
ワーズは自分の腰のベルトを持つ白銀の翼をもつ綺麗な女性を見上げた。
なぜ?とう感情が込み上げるが、ここはなんとか生き延びたいと思った。
「すまん!いや俺はダメでもいい、彼女達だけは助けてくれ。」
そう訴えたが女性は申し訳なさそうな顔をした。
「それは出来ません......なぜなら、その子達があなた」
「なんでだ!いや、敵だもんな、でもこの子達は、まだいたんだけど、でも、俺じゃぁふたりしか......」
女性の話を遮りなんとか訴えようとするが女性は困った顔をするだけだった。
だんだんと落ち着きを取り戻してきた頃を見計らって、女性が再び口を開いた。
「落ち着きました?とりあえず、魔性の森に向かいましょう。」
他の地域に行くと勘違いを起こす方々が居そうですので.....
そういう金髪の天使に腰を捕まれ運ばれていった。
その途中天使がこちらを見て言った。
「はいはい、分かってますよだから騒がないでください。」
「は?俺は何も言ってないぞ。」
不思議に思い顔を向けるが天使の女性が見ていたのが手に抱えられる少女達だとはこのときワーズは気づかなかった。
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ワーズ達が、魔性の森について数分が経ったとき、遥か上空から神々の一撃のような青と緑の2色の閃光がコンクレント湖上都市を埋めつくし、
魔性の森にまで暴風が巻き起こった。
そして、見つめる先には湖が真っ白に凍りつき、湖上都市は氷の彫刻に早変わりしていた。
さらに、湖上都市から響く氷の破砕音。
だんだんと音が大きくなり、しまいには月明かりに照らされた氷で出来た煙がもくもくと巻き上がっていた。
「おや、幻想的で綺麗ですね。」
「いや、わりぃ......本来は俺が撃たせないようにな。」
そういうコーラルの声にワーズは言った。
さらにワーズが女性と思っていた天使はなんと男だった。
「ええ、平気ですよ。コンクレント側『には』死者はありません。」
そういってコーラルは脇に抱えるほどの本を取り出してページを捲っていた。
魔道書の力か......まさか落下する俺らを見つけたのも、
そうワーズは思った。
本を閉じたコーラルはある方向をさした。
「こっちに私達の懇意にしている小人族の町がありますのでそこに向かいましょう。」
「な、おい、いいのか俺らが行っても?」
そういうワーズの両サイドには機械人の少女がワーズの手を握っていた。
彼女達の視線を受けたコーラルはニッコリと微笑む。
「大丈夫です、あの町にはロリコンがたくさんいたはずです。」
「おい、まてそれって俺のことか?年甲斐もなく突っ込んじゃうよ!?」
「突っ込むなんて卑猥なことを言うとサクッと昇天させますよ。」
「俺おこられんの!?」
こうしてコンクレント側、フルエンク側のこれからの大きな動きは今日はなかった。
しかし、コンクレント城崩壊のニュースは瞬く間にレーゼン湖周辺集落に伝わっていった。




