忍び寄る悪意④
短いです。ごめんなさい。でも、いいと思ったことは内緒です。
『あら?なにかしら。』
『いえ、いつもあの子がお世話になっているので挨拶にきちゃいました。』
『ふん、感謝されてあげなくもないわ!』
『ふふふっ』
日本の梅雨が明け、段々と気温が上昇してきた昼下がり。
黒いワンピースの透けて見える少女の元に、大和撫子を地で行く20代前半の女性いた。
女性は目の前の胸を張る蛍光色の髪の少女を微笑ましそうに見ていた。
しかし、この場に珍しくあの少年はいない。
『聞きました......』
『なに?』
女性は申し訳なさそうにしていた。
少女は不思議に思い首を傾げる。
少しの沈黙が流れ、少女の足元にある魔三角陣だけが不規則に発光していた。
『力を使って怪我を治して下さりありがとうございます。』
『え、あぁ......そのことか。しゃべったのね......あの子。』
目の前で頭を下げる女性にばつが悪そうにする少女。
少女は話を切り替えようとする。
『そういえば、「りんかんがっこう」は泊まりらしいけど大丈夫なの?』
『......子供のやることですので、大丈夫かと。』
そういって女性と少女はここにいない少年に思いを馳せる。
『ねぇ、薬を変に思われたりしてない?いじめが酷くなったりは?』
あの子教えてくれないのよ......
そう呟く少女に女性は微笑む。
『ふふふ、大丈夫でしょう、私たち一族は昔から疎まれていましたが、殺されることはないでしょう。』
『殺されるってゾッとするわね。』
透けている体をさする少女が言った。
『私はあの子みたいに魔力も力の発現の象徴の眼の開眼もしませんでしたが、よく町の子供達に化け物呼ばわりをされて石を投げられましたね。』
なつかしい......
そう言う女性は何故か大切な過去を振り帰る様だった。
『いや、それされて、よく平然としてるわね.......あんた。』
『えぇ.......あのときの私はごっこ遊びの延長だと思っていまして、敵役をやらされているのだな......しか思っていませんでした。』
『......バカなの?もしや、あの子も平然としているのはあんたの血の性か!?』
『まぁ、血はどうでしょう?私は投げられた石は掴み取り投げ返し、振られた木の棒は避け腹に一発蹴りを叩き込んでいましたから......あの子がやっているイメージがつきません。私怪我しませんでしたし。』
『素で化け物のごとき振る舞いじゃない!!いじめの原因はあんたと見たわ、刹那!』
そういって、指を腰元まである長い黒髪の女性に向ける。
刹那と呼ばれた女性は、心外です。といった表情を作っていた。
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時は、魔王テルヤがコンクレント湖上都市を去り、北方面にある衛星都市マニフェレンに向かったという噂で持ちきりな夕刻。
グランドブリッジを繋ぐ大門にある一団がたどり着いた。
町の人々は彼らに一声二声掛けているようだ。ただ、女性に取り囲まれている青年は困った表情を浮かべてメンバーに振り向いていた。
「どうしようギル、久々に会ったから皆との距離が近く感じるんだけど。」
「いや、感じる......じゃなくて物理的にチケーからな?よかったな選り取りみどりじゃねーか、ハッ。」
ギルと呼ばれた金髪の青年は短い前髪を払って、囲まれている青髪の騎士甲冑の青年をバカにした態度を取っていた。
そんなやり取りを見ていた茶髪の獣人女性が言う。
「何ニャ?ついにレイシス君も発情期かニャ?」
「その言い方には語弊がありますよ!ミャオさん。」
ニヤニヤする女性に、レイシスは視線を向け訂正してくださいと言う。
ミャオの発言を聞いていたレイシスを囲んでいた女性達は『はつ、じょう。』『私たちが相手......』そう呟き顔を真っ赤にして全員奇声上げて町中に消えていった。
「バカね?バカがいるわ!」
「リラ......口元......ソース。」
レイシスと逃げていった女性に指をさし笑うのは赤い髪の少女。
町の人に手渡されていた食べ物で口を汚していた不滅存在の少女だった。
そして、その少女の周りをクルクル廻っていた火の玉が甲斐甲斐しく口元のソースを体を使い拭いていた。
「ねぇ、『お前もな!ビシッ!!』って突っ込んだ方がいいの?」
「突っ込む?ぶっ込む?」
リラと同じくらいの小柄な身長を持つ、褐色の肌に赤黒い髪の短髪の少年と、少年にそっくりな少女が一緒に来ていた連れに話しかけていた。
双子の彼らの見分けは少女の髪が肩まであると言うくらいしかないほどで声もそっくりだった。
双子と手を繋いでいた女に見間違えるほど美しい青年は困った顔を浮かべていた。
「赤枝姉よ、ぶっ込むとか言っちゃ行けませんよ?赤枝兄よ、あれがバカなのは周知の事実ほっておきなさい。」
「辛辣だー」
「辛辣、酷評!」
そう騒ぐ二人に手引かれクルクル回されていた青年の背中には純白の羽があった。
そして、彼らの隣で町の人と情報交換をしていた少女が振り返った。
「エルアール、コーラルを回さない、ソイツ直ぐ酔うから!軟弱だから!!」
「「纏められた!!心外だ!」」
「ふ、僕はまだ2回転くらいで、うぷっ。」
「「軟弱だ!ここで吐く気だ!」」
口に手を当てる天族の青年に冷ややかな目を浴びせる黒髪で赤い眼の少女。
「原因はなんだね?エル君」
「そうですね、アール君」
「「そう貴女......銀が苛めたからだ!」」
「糞ガキ共ぶっとばすわよ!?」
そして追い回される双子と追い回す頭に黒くて細長い耳をもつ黒髪の少女。
いま、リストリアの一団が魔性の森の調査から20日振りにコンクレントに戻ってきた。
コンクレントでの魔王関連の出来事を知るのは日が沈んだ夜、コンクレントギルドで伝えられた。




