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魔法想花の小さな庭園  作者: 流水一
3章ー発芽21日目~40日目ー動きだす都市
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忍び寄る悪意②

ちょっとずつ過去編

セレナイトの【浄化(特)】スキルにより導かれていたアンは懐かしさと切なさを感じていた。

しかし、この過去はユーレリーゼではないことが即座に分かる。

いったい、いつの記憶だろうか......


「オリジンさんとセレナイトさんには悪いことをしたかも......」


周りの景色は私の世界の田舎だった。

どうしてだろうか、ここにいると胸を締め付けられる。


「......『終わり』まで出られないのなら、見届けなきゃそんだよね!」


そういって、少し離れた所の、大きめの木の影にいる二人に眼を向ける。

一人はランドセルを背負った男の子、ランドセルを左右に揺らして走っていく。

少年の向かう先に、アンの見た目を今より3年くらい成長させた感じの少女がいた。

頭には6色の花弁の髪飾りをつけていた。

ただ、幽霊みたいに後ろが透けて見える。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。



『姉ちゃん見て見て!これランドセブン!』


『ランドセルね、一昨日から何度見せたいのかしら......ふーん、まぁ似合ってるんじゃない。』


見せびらかす少年と目線を向けて微笑む少女。


『ぼく、友達百人作るんだ!姉ちゃん第一号な!』


『はいはい、うれしいわ。』


そんなはしゃぐ少年に温かい眼を向けつつ返事をする少女。

少女は表情を変え真剣な、それでいて心配している眼差しを送る。


『......眼』


『ん?あ!薬切れた!!』


少年は前にいる少し年上の少女から隠れるように後を向く。


『ねぇ、そういう薬って大丈夫なの?まだ7才じゃない。』


『んー、母が一族秘伝て言ってたから大丈夫!!』


少年はタブレット型の薬をガリッと噛んで苦い顔をしていた。

そして変化はすぐ現れるーーー。

少年の眼の色が黒に変わっていた。


『これ、苦いし、姉ちゃんが物凄く薄く見えるからヤなんだけどな!』


『魔力枯渇錠剤でしょ?純人とか獣人が魔法力を鍛えるために使うモノよ......私が薄く見えるのは枯渇しそうだからね。』


『うぅん?じゅうじん?......姉ちゃんまたワケわかんないこと言ってるな、しょうがないし!』


どうやら少年には少女の話がわからなかったらしい。


『でも、平気なの......いじめられない?』


『な、勇者マフィンはいじめないぞ!』


『お、おいしそうな勇者ね。』


少女は心配だ。という顔をする。

少年の言ったことの意味は分からなかったが、たぶんいじめに屈しないと言いたかったのだろう。


『ねえちゃん!そんなことより、パン食うか?給食で余ったんだ。』


『ちょっと、君の中で私はどんなポジションなの!?鯉に餌やるみたいじゃない。』


『ハッ、ねえちゃんなに言ってるんだ、鯉は川にいるんだぜ!』


『......その小バカにした態度私の部下を思い出すけど、誰がこの純粋な子に教えたの!?』


頭に青筋を浮かべる年上の少女と、少女の方を見辛いのか眼を凝らしている少年は他愛もない会話を続ける。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー。



アンが朝食時に姿を現さなかった今日、

銀髪メイドと、もうひとりの身長ほどある白い髪のメイドは、食堂にてアンが何をしているのかを話した。

病気や怪我ではなくてホッとした一同は食事を済ませ、各自の持ち場に戻っていった。


ただ、青の明暗の髪をもつ彼女は不機嫌を装備していた。

近場に座っていたメイド曰く、重装備だったという。


「......オリジン。」


「どうかいたしましたか?魔皇様。」


殺気やら嫉妬やらどろどろの感情が混じった眼を向けられた銀髪メイドは何事もなかったように答えた。

珍しく、二人きりになった使用人食堂。

いつ爆発するか分からない魔皇から他の使用人は逃げていっただけだが......


「......わたし、朝しか会うこと出来ないのに。」


「それは残念でしたね。」


キッと射殺さんばかりの視線を送るが何処吹く風の銀髪メイド。

じっと見詰める魔皇。


すこしして、左側からため息が聞こえてきた。


「しょうがないでしょ?レーゼン。最初に連れてきたときも話したじゃないですか。」


「......でも不公平。」


この場に誰もいないからなのか、それとも、本来はこうなのか本人達しか知らないが、砕けた口調で話すメイド服のオリジンとテーブルはじの大きな椅子に座る現魔皇レーゼン。


「レーゼンはこの南大陸の二人の【魔王】の片割れの魔皇なのですよ?さらには頻繁にコンクレントに顔を出していてアイドルで有名なあなたが、行きなり行動を変えたら怪しむのは誰ですか?」


「......魔王テルヤ・ミナミ。」


「あと、フルエンクですね。」


分かるでしょう?そう言葉をつけられ沈黙するレーゼン。

レーゼンは思った。

確かに、魔王の嫁共が周りをうろちょろしているし、半殺しにしたのに不死身なみの再生力をもつ、魔王に嫌気が差しつつあるのは否定しないが......


「......フルエンク?なんで?」


そう疑問に思うレーゼンは知らなかった。

20日前の出来事を......

フルエンクで勇者が召喚されていたことを。

そしてコンクレント湖上都市の領主、コンレル・コンクレントが公表したフルエンクとの会談結果。

突きつけられる宣戦布告。

手始めの魔性の森での騒動。

さらには、魔王テルヤも、湖畔の獣人族集落で5人目の嫁探しを終え、昨日から都市に入ったと言う情報を得ている。

銀髪メイドに教えられ嫌そうな顔をした


「......三つ巴。」


「まぁ。魔王の狙いはレーゼンですけど、受ける気はないんでしょう?はっきり断ってください。」


「っ!はじめからそんな気無いって言っているのに『ツンデレ、ツンデレ』煩いだもん。」


テーブルで食器を思いきり握りしめるレーゼン。

そして、あらかた問題点が出たときオリジンは告げた。


「いつ魔の手が伸びるかも分からない都市にあの子を連れていきますか?守り通す自信は?」


「......」


キュッと口をつぐみ言い返せなくて悔しい思いをするレーゼン。

そんな彼女を妹を見るような優しい目を向けるオリジン。


「でも、もし問題がひとつでも解決されたら......アン様をコンクレントに案内しようと思います。護衛に私とオニキスを連れて。」


「......え?」


信じられないという顔をするレーゼンは、オリジン自ら言ったことを言い返した。


「......こんな状態の町に行っても巻き込まれる」


「片方、特に魔王の方を解決してくれたなら、危険度はグッと下がりますよ?」


レーゼンから見たらにっこりと微笑むオリジンの思惑は分からないが、危険度が下がると言うことは理解できる。

あの魔王テルヤは、昔レーゼンと一緒に食事をした男性と女性を両方殺そうとしたことがあるからだ。

とうぜん食い止め、逆にここぞとばかりにプチ殺そうとしたが、囲んでいる嫁共に止められた。

テルヤの言い分は、『僕以外に向けられる天使の笑顔が憎い。』ということらしい。

この魔王はちょっとした笑顔とか、そんな些細な変化でも気にくわないらしく暴走していた。


レーゼンは思う、つまりーーー。


「......わたしがアンと一緒にいられないのは魔王のせい?」


「7割り方そうでしょうね。どうします?」


ため息を付き答えるオリジン。

オリジンだってアンに対する軟禁生活をやめて自由にコンクレントの町中を行動できるようにしたいし、今のアンは魔物証明を持っていないので外を彷徨くと冒険者に刈られてしまう。その証明書も早く貰いに行きたいのだ。

ゆえに、解決できる問題を解決して貰うしかない。

それに、魔王や勇者が召喚されていると聞いたときから、アンがやたらと外に行きたがっていたことも気になる。

いずれ、隠れて抜け出しそうだから、勝手に行かれるよりこっちから連れていた方が安心だ。


そんな思惑もあるオリジンは、レーゼンに問う。

それに対するレーゼンの答えはーーー。



「......あれとは関わりたくないけど......わかった、魔王と話をして分かって貰う。」


「話し合いで済みますか?」


「......リラに相談する。」


「アン様のことは伏せておいてくださいよ?」


「......勘づかれなければ。」


さっと目をそらすレーゼンとばれそうだなと思うオリジン。

これからの行動を煮詰めていく。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー。



「この町やべーな、あれは天使だろ、あっちは竜人、商売してるのは機械人形(マキナ)とかか、すげー種族入り乱れてるぜ!!」


最高だ!!そう叫ぶ全身をローブで身を隠している人物とその隣でため息を吐いている人物がいた。


「宮橋君、僕たちはお忍びで来てるんだよ。それに今回なんかこの都市の様子を見ると戦争しかけたのはフルエンク側ってなってるけど」


「ん?あぁ。そうらしいけど、ホントのことだろ?どうでもいいだろ、領地の取り合いゲームはお偉いさんがヤってんだ。俺は自分のレベルアップとボーナスがもらえれば十分だけどな。」


「......まだゲームって思ってるし。」


コンクレント湖上都市にて、大通りから離れたどこかの裏路地で二人の人物が話をしていた。

こんな朝からでも、大通りの喧騒な賑わいが聞こえてくる。


「それにしても、ルミナスなんで一緒じゃねーんだよ。この、隠蔽の護符があれば勇者だってばれないんだろ?」


「......大魔法使用のための謹慎らしいよ。隠しておきたかったんじゃないかな。」


兵器として。


そう呟くもう一人のローブの人物は忌々しそうにある方向を見上げる


「まぁ、ステータス高そうだしな!ルミナス。この世界に5人しかいない精霊様の魔法を消すとかすげーよな。チートだろ!?」


「僕はいろいろと疑問に思わない君の頭がチートだと思うよ。」


「なに!?おれもついにチーターか!?」


そう騒ぐ人物の相手を適当にして、目的の場所に歩いていく。

大通りとは逆にいりくんだ道を奥へと。


「この世界の魔王を倒すって掲げといて、まさか同盟を組もうなんてね。」


「は?魔王も同じプレーヤーだろ?世界のバグを倒す一時的な協力、つまり、悪勢力との合同ミッションだ。よくあんじゃねーか」


「......宮橋君は、どっちが正しいとか、相手の言い分とか聞かなそうだね。」


「ばか、んなことより、早く終わらせて奴隷商探そうぜ、可愛い種族の子を仲間にしたい。」


二人がたどり着いたのは、コンクレントの町外れの教会だった。












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