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最終話 三人分のカレー

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!


「面白かった!」「三人が可愛かった!」と思っていただけましたら、画面下の☆☆☆☆☆や【ブックマーク】で応援していただけると、とても励みになります!


また、好きなキャラや印象に残った場面など、【感想】や【リアクション】で一言でもいただけると嬉しいです。


もし特に気に入っていただけましたら、【イチオシレビュー】で応援していただけると、とても嬉しいです!


最後までカスミ、カベラ、フィランの三人を見守っていただき、ありがとうございました!

 二人の吸血鬼お姫様たちが元の世界に帰ってから数週間後――


「はぁ……はぁ……ほんっと、労働なんてなくなってしまえばいいのに……」


 いつも通り先生の業務を終えた私は、クタクタになりながら帰り道を歩いていた。

 途中、お夕飯用の買い物をしてしまったので荷物が重い……。

 もう二人のいない生活にも慣れたつもりなのに、こういったところでとっても助けられていたんだなって実感する。


「……ただいまぁ」


 鍵を開けて家に入る。当然ながら、挨拶が帰ってくることはない。


「そりゃそーよっ。とりあえず食材は冷蔵庫行きで、先にお風呂にしちゃいましょ」


 こうして帰宅してからの家事なんかは、たんたんとこなしていた。

 ……が。


「……やっちまったわ」


 ここ最近、外食に頼りきりだったからたまには自炊しなきゃ! と思ったんだけど……。


「そりゃ荷物が重かったわけだわ……三人分も買っているんだもの」


 鍋で作ったカレーの量と、テーブルに出した食器の数を見てやっと気づいた。


 ドクンッ、と鼓動が強くなって体が熱くなる。


 ふと、スマホを取り出すと壁紙にはあの水族館で撮った三人の写真。

 ……本当に、幸せだったな。


「……とりあえず、後で片付けましょ」


 そうして二人分の食器をテーブルの隅に置き、一人分のカレーを準備する。


 ……二人がいないテーブルには、慣れたつもりだったのに。


「……早く食べて明日に備えて寝ないと――」


 ガタガタっ……!


「へっ……地震!?」


 急に部屋が小刻みに震え出す……が、すぐに止まった。


「もう収まったの? まあいいわ、今度こそご飯を――」



 パッカーーーーーーーーーーンっ!!!!!



「きゃぁぁっ!?!? 今度はなにぃ!?」


 勢いよく開かれたクローゼットの扉。

 でも中からはまばゆい光が溢れててなんにも見えない!!


 だっだっだっだっ……!!!


「なんか、足音が……こっちに向かってる……?」


 そして――


「先生ーーーーーーっ!!!!♡」


「……せんせーーーいっ」


「ぐわぁっ!?!?」


 その扉から、なにかが私に飛びついてきた!!


「けほっ……一体なに……っ――!!」


 その光景に、自分の目を疑った。

 私の目の前にいたのは――


「忘れたとは言わせないわよっ、こんな可愛いあたしたちをっ♡」


「……くんくん。カレーの匂いがする……おいしそうっ」


「ランちゃん……ここはしっかり決めるところよっ……」


 あの日別れた、カベラちゃんとフィランちゃんがいたのだ。


 ……なぜか二人とも、純白のとっても可愛いドレスをまとって。


「本当に……貴女たち、なの……?」


 私は二人をぎゅーっと抱きしめる。


「――おかえりっ……! カベラちゃん! フィランちゃん!」


「ただいま……って、きゃぁ♡ 先生はげしいっ♡」


「……ただいまっ……わわっ。せんせいっ苦しいよっ」


「だって……やっぱり……寂しかったんだもんっ!!」


「え〜っ、大人なのに甘えんぼさんなんだぁ♡ よしよしっ♡」


「……大丈夫。フィランたち、ずっと先生と一緒だから。よしよしっ」


 両脇の美少女から頭をなでなでされる。

 絵面はあまりにも情けない。でもいい!! 二人と、また会えたんだからっ!


「うぅ……二人ともぉ……。あっ」


 すると、カベラちゃんとフィランちゃんの手首にあるお揃いのものが目に入る。


「二人とも、その白いシュシュお揃いで可愛いわねっ!」


「ありがとう先生っ♡ でもこのシュシュは、先生がくれたモノなのよっ!」


 カベラちゃんはツインテールをふって、笑顔で応える。

 私、シュシュなんてあげたかしら?


「……先生がくれたワンピース。血まみれになっちゃったけど、お母様が綺麗な部分でこうやってシュシュにしてくれた。フィランたち……すっごい嬉しいっ」


「そう……だったのね。そこまで私のプレゼントを大切に……って、そういえばどうしてこっちにまた戻って来れたの? それに、ウエディングドレスみたいなのまで着ちゃって……」


「えへへっ、それはねーっ!」


「……それはね……」


『それは余の口から説明させていただこう……』


 部屋に響くドスの効いた低い声が、二人の言葉を遮る。

 それはクローゼットの扉の向こうから聞こえた。


「えっ……? 誰なの……?」


 私は恐る恐る扉に近づいてその中を覗く。

 そこは――


「……なにこれ」


 目の前に広がる西洋風のお城の内装。

 シャンデリアとか、なんかよくわかんないけどお高いものが目の前に広がっている。

すると。


「お初にお目にかかるカスミ殿。余こそはシャルハロートの王である」


「同じく、カベラとフィランの母でございます」


「あ、え? お母様!? って、あれ? 王様……はどちらに?」


「こちらだ、カスミ殿」


 声が聞こえる方へ目線を向けると……。


「……で、で……」


 でっかいなぁ!?

 部屋の天井スレスレまであるんじゃないかこの人……!?


「まずは、カベラとフィランがとても世話になった。それにブラウハイトの一件もこちらで無事に収め、娘たちとも改めてしっかり話し合いができた。本当に感謝する」


「いえいえ……滅相もないですよ、ははっ」


「さて、今こうして世界が繋がっているのだが……カスミ殿も、グラルヘルトという名をご存知だろうか」


「二人がお祈りしていた、吸血鬼界の英雄さん……ですよね?」


「左様。グラルヘルトは太古、この吸血鬼界を治めた伝説の吸血鬼。その後、我らシャルハロート家へこの世界を託し、世界を繋げる力で人間界へ渡ったと伝えられている。そしてようやく、その血を引く者が見つかった。二人が人間界から持ち帰った服に残された血、そして真紅の瞳、異常な再生力、吸血鬼を従わせる力――それらから確信した」


 ……一体なんのことかしら?


「……カスミ殿。そなたは人間界で受け継がれてきたグラルヘルトの血を引く末裔なのだ」


「……ん??」


「カスミ殿の覚醒した力により、今やこの扉も永久に繋がっておる。そして――」


 ……ふっ。


「いやいやいや! 私ただの学校教師ですよ! まっさか〜!」


 耐えきれなくなった私は、お父様の言葉を遮った。


「あと、カスミ殿が身につけていたというペンダント。あれは恐らく、グラルヘルトの力を封じていたものだろう。砕けたことで、その血が目覚めたのだ」


「……マジですか?」


 いやいやいや! そんなの本当に漫画やアニメの話じゃない!!


「そこでカスミ殿。一つお願いがあるのだ」


「吸血鬼の王様が……私に……??」


 するとお父様たちは、真剣な表情で私を見つめた。


「娘たちは、これからもカスミ殿と共に生きたいと望んでいる。親として――どうか二人と結婚していただけないだろうか」


「不束な娘たちですが、お願いいただけますでしょうか」


 お父様とお母様は、揃って頭を下げ始める。


「へぇ〜、結婚……」


 ……?


「えぇえええええ!?!? 結婚!? カベラちゃんたちと!?」


「あーーー!!! お父様たち言わないでって言ったじゃない!! あたしたちが言いたかったのに!」


「……楽しみにしてたのにっ」


 すると私の後ろから二人の叫び声が上がった。


 ん? 待てよ?


「あれ、じゃあそのドレスって……」


「そうよっ! お家に伝わるウエディングドレスっ!!」


「……キラキラしててとっても素敵なのっ」


 うんっ。とっても素敵よ二人ともっ。でへへ……。ってそうじゃなくて。


「あのねっ、二人ともっ。もしかして、私がグラルヘルトだから結婚したいってことなのかしら? もしそうなら……二人の気持ちの方が大事なんじゃないかしら……?」


 流石にお父様たちには突っ込めなかったが、お付き合いや結婚は、互いを本当に好き合ってするべきだと私なりに思っている。


「……」


 すると二人ともポカーンと目を丸くしてしまった。

 そして目を見合わせた二人は、私の両腕にそれぞれ抱きついた。


「いい? 先生! よく聞きなさい!!」


 最初はカベラちゃんからだった。


「最初はあたしたちもびっくりしたわ。……でもね、そんなことは関係ないのよっ!」


 するとカベラちゃんは、より力強く腕をぎゅーっと抱きしめる。


「先生はあたしたちに大切なことをたくさん教えてくれたのっ。これからも、ずっとずぅーと一緒にいてたくさんのことを先生と知っていきたいの! そんな先生のことが、あたしはだぁーい好きなのよっ!!♡」


「……フィランもっ」


 今度は反対側の腕に、フィランちゃんがぎゅーっとしてきた。


「……フィラン、先生の作るご飯も、先生の血もおいしくてだいすきっ。ずーっとこれからも三人でおはようって言って、おやすみをして、そーやって一緒にいたいのっ」


 二人とも、間違いなく真剣だ。

 でもいいのカスミ? 二人を幸せにできる覚悟はあるの!?!?


「か、カベラちゃん……フィランちゃん……えっとね、あばっ♡ じゃなくて……あの……」


「だーかーらねっ。先生っ♡」


「……フィランたちと」


 一瞬の間があって。


「結婚……してくださいっ!」


「……結婚、して、くださいっ」


「っ!!!」


 二人は私の手を取り、まっすぐな真紅の瞳を向けた。

 ……その申し出には、私も誠意をもって答えなくちゃいけないわね。


「……わかりました。私も……貴女たちなしの日常は考えられなくなっているわっ」


「! それじゃ……!!」


「……フィランたちと……?」


「ええっ。こんな私でよければ、どうぞよろしくお願いしますっ!」


「やっ……たぁ!! ランちゃん! 結婚よ!!」


「……ベラお姉様!! これでみんなずーっと一緒っ!」


 二人はぴょこぴょこ跳ねながら喜んでいた。

 とっても可愛らしい花嫁を貰ってしまったわねっ。


「じゃあ……先生。こっち向いて?」


「ん? なにっ、カベラちゃ――」


 ちゅっ。


「……っ!?!?!」


 わ、わ、私の唇にカベラちゃんの柔らかい唇が!?!? 


「――ぷはっ! えへへっ。あたしの初めて……先生にあげちゃったっ♡」


「は、はじめ……へ――」


「……フィランもっ」


 ちゅーっ。


「!!!」


 こ、今度はフィランちゃん!?

 より唇を押し付けられて、しかも長い!!

 それになんか……甘い味がして、あっ、んっ。


「――ふぅ。せんせい、おいしかったっ。ぺろっ」


「はっ……へっ……」


 ヤバい、頭がとろけそう。思考がうまくまとまらない……!


「これで正真正銘、先生の花嫁になれたわねっ♡」


「……これからいっぱい、愛してくれるっ?」


「あ……あぁ……あああ……!!!!」


 ――でも、答えはもう決まってる。


「もちろん!! ふたりともっ!!! 絶対幸せにしますっっっ!!!! いっぱいいっぱい愛してあげりゅっ!!!! ――あっ……」


 そして――


「あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばーーーーーーーーーっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」


 ぶっしゃぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!!!!!!!!!


 その喜びは大洪水のように鼻から血となって溢れ出した。

 ――もちろん、過去最大で。


「うわぁーー!? せ、先生!! 顔真っ青だよっ!! 貧血になっちゃうって!!!!」


「……さっそく血がいっぱいだっ。ぺろぺろ」


「だからランちゃん!! 先生の顔ぺろぺろしたら余計にあばばしちゃうでしょもう!! 先生!! せんせーい!!」


 二人の声が遠くなる。幸せすぎて私、死ぬのねっ。うふふっ。


「私も、だぁーい好きよ……カベラちゃん。フィランちゃん。一生幸せに……する……わ。がくっ」


「なら倒れないで先生ーー!! いきなりあたしたちを未亡人にするつもりー!?!?」


「……バツイチなの?」


 フィランちゃん、それは違うわ。


 ああ、貧血が限界のようで、意識とお別れの時が来たみたいだわ。


 こうして、いきなり二人の吸血鬼のお嫁さんをもらった私。

 これからは鉄分いっぱいのお料理をしていかなきゃ、体が持たなそうね。

 ……とりあえず目覚めたら二人のためにカレーを温め直さなきゃ。


 明日からの人生が、とっても楽しみだわっ。



 めでたし、めでたしっ。


最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!


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最後までカスミ、カベラ、フィランの三人を見守っていただき、ありがとうございました!


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