再婚されて、同情される
ローザとは五年間も結婚していた。
結婚後に一ヶ月もしないで浮気された妻だと社交界では評判になっていたが、ローザの前では僕はちゃんと夫だった。
何日も帰ってこない日があるだけで、夫としての役目を果たして、毎週末は一緒に夜会に行った。
僕、ローレンスはウィンザー公爵になっていた。
こんないい夫と離縁したいなどと、ローザも変わっている。
最近は、ローザといるところを見せても、他の男たちからの羨望も得られなくなってきた。
僕が二週間で飽きた女に、他の男たちもやっと飽きてきたのか?
とにかく、ローザが離縁を切り出してくれて良かった、僕は思いつきもしなかった。
弁護士が言うには僕の浮気のおかげで、すぐにでも離縁できるらしい。
僕は、本物の運命の相手を探すことにするよ。
離縁した後で、いつもの男性限定の会員制の社交クラブに行く。
浮気相手とはちょうど別れたばかりだ。
この女は、離縁したのなら自分と結婚しろと言うから別れた。
こんな女には運命を感じない。
社交クラブで働く平民の女性がいたから誘ってみる。
「奥さんに捨てられるような人とは付き合えません」
と言われた。
は? 平民の感覚で考えられても困る。
誘ったからと言って、必ずついてくる女ばかりじゃない。
貴族の女性なら一度断るのも礼儀のうちだ。
言葉を交わしたら、思っていたのと違うこともよくあるから、一度目で誘いに乗って来られる方が困る。
それがわからない平民の女に執着する必要はない。
唯一、誘って振られた後に気になり続けたのがローザだった。
——社交界にデビューしたローザに声をかけた。
僕の一声でローザに群がっていた男たちが、ローザまでの道を開けて、僕はローザの目の前にやって来た。
僕は公爵子息だと名乗り、デートに誘った。
「ごめんなさい。それはお断りするように言われているの。正式に婚約した人とだけにしなさいって」
僕が公爵子息だと言う事が聞こえなかったらしい。
「デートした後で、婚約したっていいだろう? 君は知らない相手と婚約させられてもいいのか?」
ローザはしばらく考えて、
「父に聞いて来ます」
と言った。
おおっと、周りの男たちから歓声が上がる。
悔し涙や怒りに震える者もいた。
七年前の、他の男と同じ扱いを受けた屈辱の日から二年が経ち、本当の身分の差を教えてやる事ができた。
ただ、ローザにはまだわかっていないようだったが、父親の伯爵には伝わった。
すぐに伯爵家からの使者が来て、僕とローザのデートは承認された。
デートの時に、甘い言葉を囁くと、ローザはすぐに僕を好きになった。
箱入り娘すぎるのも問題だな。
ただ、この時は僕も本気でローザを好きだった。
愛を囁いて、抱きしめて、キスして、その後のローザの可愛い反応に夢中になって、すぐに婚約して結婚する。
たった三ヶ月の出来事だけど、僕とローザは本気で愛し合って、幸せな時間を過ごした。
その後は、飽きられた、ローザが僕に必死に縋ろうとする五年間だった。
離縁を言い出したのがローザだからと言って、僕は捨てられてない。
他にたくさんの女性と遊ぶ間に、社交クラブの女にもついでにプレゼント渡した。
ローザ程の美しさがあるわけじゃないが、僕がローザに『捨てられた』と思い込んでいる様子が気になった。
社交クラブでは、ダリウス・ブラックウッド侯爵が、俺に離縁された翌日から、ローザに求婚するために伯爵家に毎日通っていると話題になっていた。
「さすがローザ様だ! 冷徹侯爵さえ夢中にさせるとは」
「カフェで二人並んで座っているのを見たが、お似合いだった」
「冷徹侯爵が二年前から女遊びを辞めたのは、ローザ様に片想いしてたからだったのか」
ダリウス・ブラックウッド侯爵といえば、二年前から取引がある相手だ。
「僕が相当儲けさせてやったから、お下がりの妻にまであやかりたいと思ったんだろう」
僕の言葉にみんながどっと笑う。
社交クラブの女に、ここに来た時の定番になっている、プレゼントと夜の誘いをする。
いつものように、断られた後に、
「惨めね」
そう付け加えられる。
平民には、ダリウス・ブラックウッドを僕がどれだけ儲けさせてやってるか分からないだろう。
女のズレた考えにはイライラする。
他の女性たちなら、「あなたのお下がりを喜ぶなんて、冷徹侯爵もつまらない男ね」
そう言う正しい認識の女たちと過ごした。
——ローザが再婚すると聞いた。
本当に僕のお下がりが欲しかったのか……。
色んな女が僕のそばにいるんだ、自分から出て行った女の事なんてどうでもいい。
振り払おうとしても、頭から離れない。
ローザ——。
僕が、唯一愛した女性だ。
君は、何があっても僕のものなのに——。
ダリウス・ブラックウッド!
どうして、君が僕のものを奪うんだ!
社交クラブで酔い潰れた僕の横に、あの平民の女がいた。
「バカな人、自分の気持ちにやっと気づくなんて……」
僕は女の手首を掴む。
「君はローザとは別の僕の運命の人だ。二度と過ちは犯さない! 僕を信じてくれ」
女は、僕について来た。
ローザ以外に、振られても諦めきれなかった女性。
やっと、手に入れた、運命の人。




