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19.寄り道

 ――フィーナの学園生活は順調なようで、以前のように暗い表情を見せることはなくなった。

 リオに関しても、メイド兼護衛として変わらぬ日々を過ごしている。

 もっとも、護衛といってもフィーナの学園への送り迎えなどを共にするくらいで、初めて彼女と出会った時のような事件は今のところ発生していない。

 ――常日頃から狙われるような生活では、学園になど通っている場合ではないのかもしれないが。


「――ねえ、今日は少し寄り道していかない?」


 揺れる馬車の中――不意にフィーナがそんな風に切り出した。

 学園からの帰り道――いつもならすぐに魔術の稽古に励むフィーナからの意外な提案に、リオは少し驚く。


「寄り道って、どこか行きたいところが?」

「ここからすぐ近くのところなんだけど」


 すぐ近く――馬車を降りて向かえば、それほど遠くない場所のようだ。


「お父上に叱られますよ」


 ただ、フィーナは基本的に寄り道などは禁じられている。

 以前にも帰りが遅くなった時に釘を刺されたことがあったし、とにかくアーノルドはフィーナに対して過保護な部分があった。

 ――過保護すぎる、と言えなくもないが。

 最近はリオと共に馬車で真っすぐ帰るだけ――魔術の稽古に関しては許可が下りたが、寄り道に関しては全く別の話だろう。


「少しだけだから! ダメ、かな?」


 フィーナは手を合わせて、拝み倒すような仕草を見せた。

 ――当然、リオとしては毅然とした態度で断らなければならない。

 寄り道を許して叱られるのはリオであり、ここで許しては今後もそういうお願いが増える可能性だってある。

 だが、ここ最近――フィーナは頑張っている。

 それはリオから見ても評価すべきことで、少しの寄り道くらいは許してもいい――そんな気持ちになっていた。


(……まあ、少しくらいは怒られてもいいか)


 ――リオもフィーナに対して、少し甘い部分が出てしまっているかもしれない。

 だが、フィーナにもたまには息抜きくらいは必要だろう――リオは小さく溜め息を吐く。


「……仕方ないですね」

「! あ、ありがとうっ」

「ただし、今日だけは特別です。それに、少しだけですよ?」


 リオは念を押すように言った。


「それで大丈夫!」


 フィーナはとても嬉しそうな笑顔を浮かべていた。

 少しの寄り道――それでこんなに喜ぶのなら、する価値もあるというものだ。

 途中で馬車を止めて、立ち寄ったのは雑貨店だった。


「ここですか?」

「ええ、色んな物を取り扱っているのよ」


 リオはフィーナと共に店の中へと入る。

 フィーナの言う通り、そこでは色々な物を扱っているようで――店自体はそこまで大きくはないが、豊富な商品が並べられている。


(さすがに武器とかはないか)


 小型のナイフなどは取り扱っているようだが、当然――武器として扱うものではなく、調理や何らかの作業に使うものだ。

 他にもロープなどといった物から、部屋に飾るインテリアなど――品揃えは豊富だ。

 だが、フィーナのような貴族であれば、こういった雑貨店よりも専門店を利用するイメージの方があった。

 実際、ほしい物があるのであれば、それを専門にしたお店の方がいいだろう。

 フィーナが何を求めているのか知らないが――リオは時間潰しに適当に品物を眺めていた。

 特にこれといった物には興味を示さずにいると、


「何かほしい物はない?」


 覗き込むようにしながら、フィーナが問いかけてきた。


「? わたし、ですか?」


 まさかフィーナがそんな風に問いかけてくるとは思わず、思わず少し驚いてしまう。

 フィーナはというと、ほしい物を選んだのかと思えば――特に何も手に持っていない。


「ええ、あなたに聞いているの」


 今、店内にはフィーナとリオ以外には店主だけ。

 当然といえば当然のことなのだが――リオに質問していることだ。

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