13.残念だが
帝国内でも有数の魔術を専門とする学園で、貴族も多く通っているという。
その歴史は古く――帝都の建物は比較的新しいものも並ぶ中で歴史を感じさせる校舎があった。
実戦的な魔術を学ぶ場でもあるために、広い敷地の中にはそうした訓練に使うための場も多い。
魔術学園は単位制であり、特に必修の科目が取れなければ卒業できない――正式な魔術師は魔術学園を卒業した上で資格授与を得なければならず、全員が卒業できるわけではないとのこと。
魔術師の資格を有していない者は――国の定めによって扱える魔術に制限がかかるのだ。
もっとも、魔術師の資格を持たないままに法を犯すような魔術を扱える者は――大抵、ろくな者ではないということになるのだが。
リオも魔術師としての資格を有していないが、魔術は会得している――あくまで戦闘に使えるものでだが。
学園の敷地の前で馬車は止まり、フィーナはリオの隣に並んで歩いていた。
時折、顔を合わせた生徒にフィーナは笑顔で手を振っている。
「おはようございます、フィーナ様」
「おはよう。そういえば、この前の魔術の授業で――」
他の生徒に話しかけられたら、自ら魔術の話を切り出す。
さすがヴェルター家の令嬢――とでもいうべきか。
明るい性格の彼女であれば、学園生活においても友人は多いのだろう。
生徒と話をしていたフィーナが不意に足を止める。
「――そうだ、学園の決まりでね。従者も敷地内には入れるんだけど……授業は一緒に受けられないの」
つまり、ここから先――授業が始まれば別行動というわけだ。
護衛という役目の性質でいえば――同じ教室にいるのが彼女を守りやすい。
だが、ここはあくまで魔術学園――貴族が多いとはいえ、優遇的な扱いを受けるわけではなく、あくまで公平という立場なのだろう。
「――では、授業中は学園内のどこかで待機しています」
「うん、待たせることになっちゃけど……あっ、でもお昼は一緒に食べよう? ここの学食は美味しいから」
フィーナはそう言って、リオに手を振りながら校舎の方へと向かっていく。
リオはそんな彼女を見送って――周囲の様子を確認した。
リオと同じように、貴族の従者達が敷地内に何人か姿が確認できる。
いずれもフィーナの言った通り、授業には同行できないため――一度、屋敷の方へと戻る者や、学園側が用意してくれているスペースで待機している者もいた。
おそらくはリオと同じように護衛としてこの場に来ている者もいるのだろう――リオもそんな一人だ。
一般開放されているわけではないが、従者であれば先ほどフィーナが言っていたように学食や図書館などの施設も利用できるようで、時間を潰すには十分で。
(この広さくらいなら――まあどこにいても大丈夫かな)
リオが護衛としてカバーできる範囲――学園の敷地内であれば、おおよそどこからでもフィーナも下へすぐに駆けつけることができる。
ただし、あらゆる状況を想定した上で行動しなければならない――なら、リオが最初にすべきことは決まっている。
(一先ず……見学させてもらおうかな)
まずは学園の敷地について詳しく把握しておくことだろう――リオは人知れず、その場から姿を消した。
***
――魔術学園における授業は様々だ。
一言に魔術といっても種類は豊富であり、魔術師を志す者はまず自身がどういう魔術師になるかを定める必要がある。
何も攻撃に使うだけが魔術ではない――一般的に流通している物でいえば、魔道具という存在がある。
これらは魔力の宿った鉱石――魔石を組み込むことで動くもので、魔術を扱えない一般人でも扱えるため、この帝都においても広く利用されている。
街灯などもそうだが、今では当たり前のように存在する技術の全ては――魔術師によって作られたものなのだ。
そうした歴史を学ぶこと、技術を学ぶこともまた――魔術師になるために必要なこと。
だから、座学も実習も、どれも手を抜かずに真剣に学ぶ。
フィーナは特に、魔術の授業に対しては熱心だった。
大貴族の令嬢で――その上、授業に対する姿勢も人一倍真面目であり、模範的な生徒と言えるだろう。
「――残念だが、このままでは君に単位を与えることはできない」
だが、フィーナは今――危機に陥っていた。
昼休み――本当ならリオと学食に行く約束をしていたが、実習を担当する講師に呼ばれ、こうして宣告を受けてしまった。
実習を担当する講師もまた、魔術師としては実力のある者ばかり。
認められるのは簡単なことではないが――こうして呼び出されて直接、宣告を受けるのは初めてのことだった。




