第五十五話 私が貴方に望むもの
「ゲーム実況って……」
「私、小さい時からゲーム大好きでしたので。小学校の時は少ないながらも友達が居たんですが……中高と私立の学校に行ったら環境になじめなくてですね? それでまあ、馬鹿みたいにテレビ見たりゲームをやってて……気が付いたら、ゲーム実況していました」
「そ、そう……」
なんかちょっと不憫な感じがするが……まあ、触れまい。
「それで『わく学』も本当に楽しみにしていたんですよ!! なのに、ゲームがアレでしょ? もう悔しくて、悔しくて……絶対、『2』の実況して元取ってやる! って思ってプレイしていたんですが……」
そう呟きながら、段々と涙目になるエリサ。と、同時、エリサの体が徐々に発光を――って、不味い!!
「え、エリサ、落ち着いて!! 光魔法! 光魔法が出てる!!」
「はうわ!? し、深呼吸を……ヒッヒッフー!」
「それ、違うヤツ!」
何を産む気だ。ああ、光魔法か。
「ふー……ふー……落ち着きました」
「……勘弁してよ」
「……正直、勘弁してほしいのは私の方ですけどね?」
……確かに。
「なんで私、エリサになんか転生したんでしょう……どうせなら、アリスさんに転生したかったです」
「……いや、まあ私も私で結構大変だったけどね?」
マジで。最初はどうなる事かと思ったのだが……まあ、今はそこそこ楽しい生活を送れているし、少しだけエリサに申し訳ない気持ちもある。
「……まあ、そんなに落ち込まないで? 此処で逢ったのも何かの縁、出来うる限り協力はするつもりだから」
「ううう……ありがとうございます……アリスさん、優しいです……」
興奮しないためかさめざめと泣くエリサ。ああ、うん。泣くな、泣くな。助けてあげ――
「――アリスなんてセリフ二個しか実装してないポンコツ令嬢だと思っていたのに……いい人だ。アリスさん、良い人だったぁ!」
「……なんか急に助けたくなくなって来たんですけど」
いや、私自身も『ポンコツ令嬢に転生って……』って思ったけどさ? 二年もアリス・サルバートをやっていると、流石に愛着も湧くし、人から言われたら腹立つぞ?
「わわわ! す、すみませんでした!!」
「……はぁ。まあ良いけど。それにさ? 別に優しさだけ、って訳でも無いわよ?」
「ほえ? な、なにか要求されるんですか!?」
「怯えなさんな。取って喰おうって訳じゃないし……金銭的なものも求めないわよ」
正直、花屋の娘をカツアゲする必要はないしな。感じ悪いの百も承知で言えば、金なら唸る程あるのだ。公爵令嬢だし。
「……それじゃ……なにを?」
「決まってるでしょ? 貴方は私よりも二年も後にこちらに来たのよ? なら、私よりも持っているんじゃない?」
――情報を、と。
「じょ、情報ですか?」
「ええ」
「そ、そりゃ持ってますよ!! ゲーム実況者ですし、私? 『わく学2』も周回プレイしましたし、『わく学1』も周回プレイしました!!」
「……周回プレイしたの? ああ、そっか。周回プレイぐらいするか。あれ、ハーレムルート行くのに周回プレイ必須だもんね?」
私は一周目でダウンしたが。
「ええ! だから、ハーレムルートもクリアしましたし、勿論隠しキャラも攻略しましたよ!!」
「え? 隠しキャラって本当にいたの? 都市伝説かと思ってた」
乙女ゲーだけに限らず、ギャルゲーやBLゲーにも本編ルートをクリアした後に『隠しキャラ』というキャラクターが実装されている事がままある。わく学も腐っても乙女ゲー、『隠しキャラ』の存在はまことしやかに流れていたが……
「……本当に居たんだ。わく学の癖に、一丁前に」
「言葉のチョイスが一々酷い。そうですね、アレ、結構大変だったんですよ! 出現条件檄ムズでしたし……本当に、日本でも何百人とかのレベルじゃないですかね? あの隠しキャラ出したの。あんまり難しいから、簡単に教えるのもなんかもったいなくて、折角見つけてもネットに出現条件書き込む人もいませんでしたし……」
「エリサも?」
「……御多分に漏れず、ハイ。一応、本編中にヒントがあるんですが……ハーレムルートクリア後にしか現れないヒントなんで。なんかそれを教えるの、悔しいじゃないですか。こっちはこんなに苦労したのに!! みたいな」
「分からんでもないが……たぶん、無意味じゃない?」
ハーレムルートをクリアするまでに途方もない時間が掛かるし、その時間を『あの』わく学の為に使うって、結構訓練されたドMだぞ。見つけたのが何百人って、そんな奇特な人がそもそも日本に何百人くらいしか居なかっただけじゃない?
「……そ、そう言われればそうかも知れませんが……でも、やっぱり内緒にしておきたいじゃないですか」
「まあね。それで? どうだったの、その攻略キャラのルート」
「……」
「……エリサ?」
「……知っています? わく学のキャラって、金太郎飴みたいなモンなんです。何処を切っても同じなんですよ?」
……エリサが物凄く悲しそうな顔をしている。ああ……ペラいのか、キャラが。
「あれだけ苦しい思いをして登場させた隠しキャラが、他のキャラと殆ど同じポンコツ具合、むしろちょっと劣化版とか来た日には……過ぎ去った日の供養と、仲間を増やす為に『教えない』って選択肢も取りますよ、そりゃ!!」
「……その考えは何も生まないわよ? っていうか、そんな意地悪してたから罰が当たったんじゃないの?」
「うぐぅ……そ、そんな事は……」
「ま、それは冗談だけど……別に聞きたいのはそう云う話じゃないわよ」
「へ? それじゃ無いんですか?」
「わく学の隠しキャラなんて興味無いし」
「え、ええっと……ああ! それじゃ、アレですね? 『わく学2』でアリス……というより、サルバート家がどうなったかですね? でも……ご、ごめんなさい。サルバート家の描写、わく学2じゃ全然なくて……わく学2でアリスさんもどうしているのか、分かりかねるんです……」
「それでもない。つうか、期待して無いし、そんなの」
むしろ、ヒロインと攻略メインキャラが開始十秒で断頭台に送られたんだろう? んなゲームで、セリフ二個実装のポンコツ令嬢に描写割いてたら、それこそ正気を疑うわ。
……いや、そういう、普通はやらない事を平気でやるのが『わく学』と言えばわく学なんだが。別に痺れたり憧れたりはしないけど。
「ええっと……それじゃ、何を知りたいのですか?」
「そんなもの、決まってるでしょ?」
そう言って私はにっこりと笑い。
「――あの『銀行員が倍返しする』って流行ったドラマの続編、あったじゃない? アレ、最終回どうなったの!!」
あ、あれ? なんでずっこけるのさ、エリサ?
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