第五十四話 意外に面白そうでちょっと悔しいわく学2
「せ、戦略SLGって……」
衝撃の大きさが半端ない。いや、まあ、確かに? 乙女ゲーの中にもパーティー組んでダンジョン潜ったりするヤツもあるし、完全に親和性が無いかって言えば、そんな事も無いんだろうけど……
「……ちなみに、どんな感じのゲームなの?」
……正直、ちょっと気になるぞ、うん。一体、どんなゲームなのか……そんな私の質問に、エリサはにっこりと笑って。
「まず、開始十秒くらいでジークとエリサが断頭台に送られます」
「ストーリー、ひどっ!!」
いや、流石にそれはあかん奴じゃないのか!? 乙女ゲーで、前作の主人公とヒロインが断頭台に送られる所からスタートって、荒れる要素しかなくないか!?
「あ、ちなみにそのシーンは結構好評でしたよ? 『公式がカタキを取ってくれた!』って、ネットが祭りになってましたから」
「……」
……わく学ぇ。
「……普通、そういうシーンは荒れるんじゃないの?」
「普通はそうなんですけどね? 開始早々、前作主人公が惨たらしく殺されて荒れたゲームとかもありましたし。でもね、アリスさん? そう云うゲームって、基本的に前作に愛着があるプレイヤーが怒る訳なんですけど……アリスさん、エリサに愛着ありました? ジークにも」
「……」
……ないな、うん。ペラい攻略キャラと、なんでこいつがモテるんだろうという謎感覚しかなかったヒロインだし。なるほど、公式がカタキを取ったも言いえて妙かも知れない。
「……ジークとエリサが断頭台、か。なんで?」
「分かりません」
「……は?」
「一番最初のシーンが断頭台で項垂れる二人のシーンなんですよ。処刑人が、『圧政を行った王と王妃に、裁きの鉄槌を!!』とか言って、ギロチンが落ちて来て……オープニングに入ります。なので、どんな悪政をしたのか全然分かりません。でもまあ……わく学ですし。そんなもんじゃないですか?」
「……」
その辺りは安定のわく学クオリティなんだな、うん。
「その時にはラインハルトは放逐されていますし、エディも何処に行ったか分かりません。辛うじてリリーの存在は確認出来ますが……完全にモブです」
「……」
「王政が崩壊して、群雄割拠の戦国時代に突入したスモル王国に小さな国家が乱立しまして……『わく学2』のヒロインであるマリアちゃんは、攻略キャラと協力して、その戦国時代に突入したスモル王国を統一するっていうシナリオなんですよ」
「……だから戦略SLGなのか……」
「そうです。ちなみにマリアちゃん、『花屋の娘』っていう設定なんですけど、結構な親切設計になっていて、難易度にあわせて育った場所が違うんです。ベリーイージーモードなら王都に近い裕福な侯爵領、ベリーハードなら辺境の、産業も何にもない男爵領、みたいな感じで。内政しながら兵を集めて、国力……というか、領地の力を蓄えて、スモル王国の再統一を目指す……という感じのゲームです」
「……花屋の娘、好き過ぎだろう」
わく学、花屋から袖の下でも貰ってるのか? でも……なんだろう、ちょっと面白そうとか思うんだけど……
「その……面白かった?」
「……意外にも、そこそこ良かったんですよね。ホラ、エリサって何て言うか……尻軽な感じしたじゃないですか? 色んな男をとっかえひっかえというか。魅力も無い癖に」
「……確かに」
仰る通りなんだが……アンタ、今、その『エリサ』になってるんだからな? 『エリサがエリサをディスる』という何とも言えないシュールな光景だぞ、おい。
「でも、『わく学2』の主役であるマリアちゃんはスタートから『固定ルート』なワケですよ。ベリーイージーとベリーハードでは攻略キャラは違いますし、シナリオも違うんですよね。攻略キャラは五人いるんですが、一つのゲームで五本分のゲームを遊べるというか……っていうか、ボリュームが結構あるんですよ、一人一人の。無印のわく学は一体なんだったんだ! ってぐらいに、良いシナリオもあってですね。特にベリーハードの男爵モードのシナリオとか最高! みたいな」
「……いいじゃん、それ」
「SLG部分も中々グッドでした。分かりやすいですし、戦闘自体はそこまで難しく無いので、初心者に優しい仕様でしたね」
お、おお……ど、どうした、わく学! いつの間にお前、心を入れ替えて――
「――まあ、大爆死だったんですがね? 売上的にはそりゃもう、酷いものでしたよ」
「なんで!?」
え? 今の話聞いていれば、普通に楽しそうな感じだったんだけど!! ダメなの?
「……前言を翻す様でなんですけど……乙女ゲーって、色んな男の子とお付き合い……っていうか、仲を深めて行くのが楽しい訳じゃないですか?」
「……まあ……うん」
さっきエリサを『尻軽』認定したから認めにくいが……まあね。そういうゲームだよ、乙女ゲーって。
「にも拘わらず『わく学2』は攻略キャラ固定ですし……そもそも、乙女ゲー好きな人は別に戦略SLGしたい訳じゃ無いんですよ。イケメンに囲まれてキャッキャしてたい訳なんですよね。SLG要素、邪魔なんですよ」
「……ターゲット層に合って無いワケか」
「です。それじゃ、SLG好きに受けたかと言えば……これもさっき言った通り、初心者向けに作られてましたから。がっつりSLG好きな人には刺さらないっていうか……そもそも、その層は乙女ゲーに手を出しませんし」
「……」
帯に短し、たすきに長し、ってヤツか。まあ、乙女ゲーのSLGなんて知れているだろうしな。そうなるのも仕方無い気はするが……
「後は……まあ、あの悪名高い『わく学』の続編ですからね。最初からヘイト溜まっていて、売れ行きが伸びなかったって云うのもあります」
「……だろうね」
「そして何より」
そう言って、一息。
「……無印と『2』で登場キャラも、仕様も、ジャンルも、そもそも学園ですら無いんですよ? 『これ、わく学2って名付ける必要あった? 新タイトルの方が良かったんじゃね?』というのが大半の意見です」
「……仰る通りです」
確かに。最初から殆ど新キャラばっかなら、完全新作の方が良いな。でも……普通さ? 続編が過去作を越えなくて、『続編って言えば売れると思ってるんだろ!!』って叩かれるのはよくあるパターンだが、まさか続編の方が出来が良いのに叩かれる作品があるとは。なんで『わく学』のタイトル付けたし。そういう所だぞ、わく学。
「……っていうか、エリサはよくそんなわく学を買おうと思ったね? 私なら絶対、地雷臭がして避けるんだけど……っていうか、えらく詳しく無い?」
「普通なら避けるんですけど……」
そう言ってにっこりと笑って。
「ゲーム実況で動画配信してたんですよ、私。わく学2が出るって聞いて、『乗るしかない、このビッグウェーブに!』って思って……迷わず、買っちゃいました。私ぐらいしか実況動画あげて無かったんで、もしかしたら日本で一番『わく学2』に詳しい人間かも知れません」
「……マジか」
……なるほど。詳しいワケだ。
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