第四百一話 明るい国家運営
陛下の『何言ってんだ、コイツ?』発言を――まあ、だいぶ失礼ではあるんだけど、ともかくそんな発言に唖然とする私をしり目に、陛下は尚も言葉を継ぐ。
「まあ、そんな訳で僕はシャルロッテ・ゲーリングという令嬢を評価している。そして、国家と国民を何より大事にするのは王として当然だけど……」
そう言って少しだけ言い淀む様に、そしてもう少しだけ、照れた様に言葉を紡ぐ。
「……まあ、それと同じくらい、家族の幸せも大切なんだよ」
「……」
「……ジークはアリスと婚約して幸せそうにしている。ジークも勿論大事だけど……アレンだって僕の可愛い息子だからね? そんなアレンにはシャルロッテの様な『才媛』が相応しいんじゃないかと、そうも思うんだ」
「……それは」
陛下のその言葉に、思わずロッテが息を呑む。
「……勿論、国の『幸せ』も考えるよ? アリスとシャルロッテは最初のアレを乗り越えて、今ではとっても仲良しだって聞いている。アリスもシャルロッテも、お互いに尊敬し、尊重しているんでしょ?」
陛下の言葉に、図らずも私とロッテは力強く頷く。でも、それだけじゃちょっと足りないかな、と思い私は言葉を続ける事を選ぶ。
「……勿論、ロッテの事は尊敬しています。正しい貴族令嬢として気高く、それでいて優しいロッテの事を、尊重も勿論しています。でも……」
そう、『でも』だ。
「……そんな事関係ないくらい、ロッテのことが大好きです。得難い友人だと……親友だと思っています」
「アリス……!」
私の言葉に、ロッテが息を呑んで、それでも嬉しそうに微笑む。
「……私もに御座います、陛下。アリスの……『正しい令嬢』とは確かに違うかもしれない、それでも誰にも真似のできない、誰に忖度することも、誰に遠慮することもない、『強く』生き抜く姿勢に憧れを抱いています」
「……それって我儘ってこと?」
ロッテの言葉に少しだけ頬を膨らます。え? それって褒めてるの? 悪口じゃない?
「……でもアリス? 忖度も遠慮もない貴方だけど……きちんと『配意』はしてくれるじゃありませんか」
そんな私に、ロッテは微笑んでそんな事を言ってくれる。
「……アリスは誰に対しても『優しい』。貴族として、将来の王妃として『優しい』とは必ずしも褒められることでは無いでしょう。優しいだけでは回らない、そんな事もきっとあります。事実、学園でもありましたし」
……アレか。それこそ今話題沸騰のティアナ様に『派閥、つくりましょー』とか言ったおバカ二人の事を言っているのか。
「……でも、私はそれで良いと思っています。アリスが、誰にも忖度も遠慮もせず、それでも周りに優しさという配意を持って接するアリスが、叶うならそのままの態度と姿勢で接するのは……きっと、このスモルという王国が幸せになる方向性だと、私は間違いなく思いますから」
「……そうだね。優しいだけじゃだめだけど、優しくないとそもそも話が始まらないって事もあるからね」
「それはもう……私が身を持って知っていますから。私はアリスの『優しさ』に、学園で初めて助けられた人間ですから」
陛下の言葉に、ロッテは嫋やかに笑む。
「……じゃあ、シャルロッテ? どうだろう? 僕の言いたいこと、ある程度は分かると思うけど……どうだろう?」
アレンと正式に、婚約しない? と。
「ジークとアレンは良好な関係を築いていると思う。ジークとアリスも勿論ね? そして……アリスとシャルロッテも良好な関係だと……国家として荒れることは少ないんじゃないかと思うんだけど」
どうだろう、と。
「……私とアレン殿下の仲は斟酌されないので?」
ロッテの試すような言葉に、陛下が可笑しそうに笑う。
「あれ? 知らないと思っていたの? アレンとシャルロッテ、こそこそとデートしているの? 随分と仲が良さそうじゃない? でもさ? アレンもまだ学園に入学もしていない年齢だから……出来れば僕がお爺ちゃんになる行為は控えていただけると……」
「陛下!? 私、そんな事していません!! アリスもそんな目でこっちを見ない!!」
真っ赤な顔で陛下にそう言い募り、その後きっとした視線をこちらに向けるロッテ。お、おう。そうか。うん、それなら良いよ。いや、正直びっくりしたけど……うん。何言ってるんだろう、私。そして陛下、今の発言はセクハラです。
「まあ、冗談はともかく……ジークとアリスは仲良し。アレンとジークも仲良し。シャルロッテとアリスも仲良しで、アレンとシャルロッテは仲良しなら……国王と王弟、その配偶者まで皆仲良しなら……」
それって『凄く良い国』じゃない? と笑って。
「……まあ、シャルロッテの気持ち次第ではあるけど……どうかな? 『明るい家族計画』に加えて、『明るい国家運営』も加えてみないかな?」




