第四百話 育てたのは私ですからね!!
祝、四百話!!
「……権利と、義務……ですか」
ロッテの言葉に、陛下はにこっと笑って何でもないように頷く。
「うん。貴族令嬢のシャルロッテには釈迦に説法かも知れないけど、貴族は平民と違って『家』の論理で動くことが往々にしてあるよね? 個人の自由が……まあ、あんまり良い言い方じゃないだろうけど、『制限』される。家の意思の前に、個人の意思は関係ないどころか、軽んじられる」
「……はい」
「王族にとってはその責任はもっと重い。家の論理どころか、国家の論理で動くんだからね。好きとか嫌いで判断することは出来ないんだ。それこそ」
君が最初、アリスと対立してた様にね、と。
「……ご存じだったのですか、陛下」
少しだけ驚いた様なロッテの表情。そんなロッテの表情を面白そうに見つめて、陛下はクスリと笑って見せる。
「忘れたの?」
「え?」
「学園の理事長は僕の愛する妻である、エカテリーナだよ? 特に今年はジークもアリスもいるんだ。学園の様子は逐一報告して貰っているに決まってるでしょ?」
「……あ」
ロッテが驚いた声を上げた後、慌ててその口を手で塞ぐ。塞ぐんだけど……そう言えばそういう設定だったね。私もすっかり忘れてたよ、うん。
「も、勿論存じ上げています! 王妃様が学園のトップであるという事は、重々承知しています。た、ただ……学園の運営自体は、その……王妃様の手から離れておられるかと……」
「まあ、エカテリーナもそんなに暇じゃないしね。確かに学園に顔を出す機会は少ないけど……それでも、彼女は学園長からの報告に関しては逐一目を通しているし、それを僕にも共有してくれているよ」
そう言って、少しばかり苦笑を浮かべて見せる。
「……まあ、正直シャルロッテの最初は『どうしよう』とも思ったけどね?」
「うぐぅ」
「聡いクリフトが傍観してたから、まあそんなに問題は無いだろうと思ってはいたけどね。それでも、良い方向に転がってくれたな~とは思っているんだよ?」
「……お恥ずかしい話です。穴があったら入りたいと申しますか……」
ロッテが頬を赤くして縮こまってしまった。目元も潤んで、なんだか庇護したい感情をそそるけど……
「陛下。昔の話に御座います。私も気にしていませんし……その、あまりロッテをイジメるのは……」
「ああ、ごめんごめん。シャルロッテをイジメるつもりじゃなかったんだよ。そもそも、アリスが傷付いていると思っていた訳でもないしね?」
「……私の扱い、雑じゃないですか?」
陛下に――まあ、思いっきり不敬だが、ジト目を向ける。そんな私の視線に陛下は可笑しそうに笑って見せて。
「だってアリス、気に喰わなかったら手が――じゃない、足が出るじゃない。だから、アリスから暴力の波動を感じない以上は、まあ大丈夫かな~って」
「……確かに」
「おい!!」
陛下の言葉に頷くジーク。おいっ!! 私だって成長したんだぞ!! 何時でもどこでも手や足が出る訳じゃ無いんだ!!
「まあ、それは冗談だけど……本当にどうしようも無かったら、あの『才媛』メアリが手を出すだろうからね。そうなっていない以上は問題ないって認識だったよ。むしろ……そこでシャルロッテに興味が沸いた」
「……私に、ですか?」
陛下の言葉に首を傾げるロッテ。そんなロッテにうんと一つ頷き。
「アリスはジークの婚約者で、エカテリーナの『お気に入り』だ。実家はこの国最大貴族のサルバート公爵家。そして、アリス自身もそんな肩書だけじゃなくて、『サルバート印』を起こして、今の隆盛を誇るまでに築き上げた才女だ。そんな才女にわざわざ歯向かうのは、我儘放題に育てられた『御令嬢』か、アリスと並ぶくらいの才女かのどちらかでしょ?」
「……大馬鹿娘かも知れないじゃないですか」
ロッテの言葉に小さく肩を竦めて。
「僕は、ゲーリング侯爵家が娘の教育の一つも出来ない大馬鹿者とは見ていないよ。それはシャルルを見ても分かるし……そもそも君の評判は聞いていたんだよ、シャルロッテ・ゲーリング。間違いなく、君は才女さ。同じ親として、分かるよ? ゲーリング侯爵家は立派な子育てをしているってね。そこは間違いなく、僕は評価しているよ?」
「……凄いね、陛下。自分の事を棚に上げて、まあ……上からよく言えたというか……」
「ゴホゴホ!!」
私の小声の突っ込みに、ジークが慌てた様にゴホゴホ咳払いしながらこちらジト目で睨む。ご、ごめん!! で、でも……なんか、陛下にこう……『子育て論』とか一席ぶられても……ジークをポンコツに育てたの、陛下じゃんとしか思えないというか……なんだろう、この、『わしが育てた!』感。なんか納得いかないんですけど……




