第三百九十六話 ロッテの明るい家族計画
私の『もうなんか色々面倒くさくなっちゃったな~。ロッテ、嫁に来ない?』の言葉に、一番慌てたのジークだった。
「あ、アリス!?」
「いや、だってさ~……そりゃ、私も悪かったのは悪かったよ? うん、やり過ぎた感は否めないのは否めないもん」
まさか、ティアナ様の裏側にあんな性獣――じゃなかった、あんなキャラが隠れているのは知らなかったし、それを解き放ったのは私とエリサだけどさ?
「……私、結構頑張ったよ? ジークに褒めて貰おう……と思った訳じゃないけど、もうちょっとこう……労をねぎらってくれても罰は当たらないんじゃないかな~」
こう……まあ、リザルトは結構酷い事になったけどさ? プロセスに関してはもうちょっと評価というか……頑張ったのを認めてくれてもいいんじゃないかな、と思う。いや、正直結果が酷すぎたし、関係者全員が頭抱えてたから口に出来なかったけどさ?
「……ジーク殿下や陛下にとってはティアナ様はご家族でしょう。アリスもジーク殿下の婚約者だから家族の括り、という解釈もあるかも知れませんが……ですが、これは言ってみれば『ご家族』の問題ですよね? 先程も言いましたが、本来家族の問題は家族で解決するべきではないでしょうか? それをアリスに丸投げしたのはジーク殿下ですよ?」
ロッテのジト目とセリフに、私もちょっとだけ頷く。そうだよね! 私、結構頑張ったよね!!
「……そもそも、ジーク殿下はアリスに甘えすぎなんですよ。ええ、この際ですから言わせて貰いますが……学園祭の時のジーク殿下は酷かったですよ? 婚約者であるアリスを放っておいて、ティアナ様に付きっきりで……結局、後夜祭のファーストダンスもティアナ様と踊られていますし」
「うぐぅ……」
「アリスとジーク殿下の関係があの一件で劇的に改善したから良かったようなものの……良いですか? 普通、婚約者以外と夜会でファーストダンスを踊るとなると、普通は『すわ、婚約破棄か!?』と邪推されるものです。そして、それは貴族社会に生きる貴族令嬢としては致命的な『キズ』ですよ? どうするおつもりなのですか、殿下? アリスにそんな悪評が付いたら……キズモノになったら。殿下は責任は……まあ、結婚するので取れるのでしょうが……噂は消えないんですよ?」
「……申し訳ない、シャルロッテ嬢」
「謝るのは私じゃないです! アリスにです」
ロッテの言葉に、ジークはこちらに向き直り頭を下げる。
「その……申し訳ない、アリス。そうだな、俺はアリスに甘えっぱなしだった」
「へ? い、いやいや! ジーク、そんなに頭下げなくても!!」
不意のそのジークの仕草に、さっきまで『どーでもいーや』モードだった私は一気に冷静さを取り戻す。あるでしょ? 激おこだったけど、急に相手が真摯に謝ってきたら一気に冷静になること。あれだ、あれ。
「ろ、ロッテはこう言ってくれたけどさ! べ、別にジークが悪い訳じゃないよ!」
「そうか?」
「そ、そうだよ! ティアナ様とのファーストダンスだって、私が納得してた事だし……それを後でぐちぐち言うのは……」
正直、趣味じゃない。そんな私に、ロッテがジト目を向けてくる。
「なにを言っているのですか、アリス。本来であればジーク殿下がしたことは婚約者としては許されざる事ですよ?」
「まあ、一般常識的にはそうかも知れないけど……」
私自身、あの時はあんまり気にして無かったし。っていうかさ?
「……なんかロッテ、今日は何時になくグイグイ来るね? なんかあったの?」
そうなのだ。ロッテに庇えて貰えるのは嬉しいんだけどさ? こう……今日のロッテ、なんかグイグイくるね? なに? どんな心境の変化?
「……あの時、私が言ってしまったでしょう? 『アリスはもっとジーク殿下を大事にするべきだ』と」
「……ああ」
あったね、そんな事も。
「リリアーナ様にはあの時も言われましたが……確かに、あの発言は無かったと反省をしていたのです。まあ、リリアーナ様はアリス可愛さもあったでしょうが……アリスにはアリスの気持ちがあります。『婚約者』として立派に振舞っておられるのであれば、部外者が一々口を出す事では無かった、と」
そう言って、本当に後悔しているかのように瞳を伏せるロッテの頭をよしよしと撫でる。
「……気にしなくて良いよ? ロッテが私たちの事を心配してくれているのは知っているし……それにまあ、婚約者として立派かどうかは意見の分かれるところではあると思うしさ?」
立派では無かったんじゃないかな、うん。そんな私に、ロッテは少しだけ頬を緩ませてこちらに上目遣いを向けてくる。うん、かわえー。
「……アリスには言っておこうと思います。パティにもまだ言っていないので、くれぐれも内密にお願いしたいのですが……」
「……光栄だね」
パティにも内緒の秘密を教えてくれるの? それが嬉しくて、ロッテ同様頬を緩ませる私に。
「……アレン殿下――アレン様と私の婚約が成る可能性が高いです」
「……おうふ」
まあ、今日の感じを見ていれば分からんでは無いが。
「……おめでとう、で良い?」
「はい。アレン様をしっかり支えて行ければ、とは思っていますし……殿方にこういうのはあれでしょうが……お可愛い所もありますし、アレン様」
少しだけ照れた様に頬を染めるロッテ。
「そっか。それじゃ……本当におめでと。あ! もしかしてあれ? アレンと婚約するかもだから、あの時の言葉を反省して今日はいっぱい私の仲間をしてくれる……とか?」
私の言葉にロッテは首を振って。
「いいえ」
横に。あ、あれ?
「アレン様と婚約、成婚となれば、私とアリスは義理の姉妹という事になります。良いですか、アリス? 我が実家であるゲーリング家は『家族仲の良さ』が強みの一族です。そんな環境で育った私は、義理の姉が一方的に虐げられる環境は望ましくないのです」
「い、一方的に虐げられるって……」
いや、流石に飛躍しすぎじゃない? そう思う私に、ロッテは『ぐぐっ』と拳を握り。
「いいえ! そういう小さな積み重ねがいつか大きな『ひずみ』となるのです!! いいですか、アリス? 私が貴方の義妹になる以上、私は常に貴方の味方となり、ジーク殿下からアリスを守ります! アリスだけではなく、スモル王家が幸せな未来を築けるように! 言うなればこれは!!」
華が咲くような笑顔で。
「――『明るい家族計画』です!!」
言い方ぇ。




