第19話 今の仲間から、追いはぎを
「それは良かったよかった。さて……まあ思い出の報酬は沢山いただいたわけなんだけれど……」
「ふえっ……?」
泣き顔を見せまいと顔を覆っていたシルヴィに、街中でよく聴くあの『迷惑者』の声のトーンが聞こえてきた。
「あたしとしては、今回の依頼の報酬八万ミネルは、ちょっと取り分が少なくなると思っててね? 何せ結果として五人で捜索したし、依頼がシルヴィという事を勘案しても四等分になる……それはちょっと満足できないのよねぇ」
そんな話をしながら、スカーは両手をわきわきと動かして半泣きだったシルヴィににじり寄る。
「ちょ、ちょっと……スカー? なんだか、いつもより顔が怖いんだけれど……?」
「それにシルヴィ、あなたは気がついてた?」
「な、何に?」
そう聞かれた時、後ろで二人のやり取りを聞いていたレギーナが何かをひらめいて手をポンと叩いた。
「……あっ!」
「な、何よレギーナ!? なにその嫌な閃きはっ!?」
レギーナの顔に激しく嫌な予感を募らせたシルヴィ、そしてレギーナが気が付いたことをスカーはつらつらと話し始める。
「シルヴィ、あたしが投獄されてたのがいつか分かる?」
「えと……今日でスカーが依頼を受けて五日目だから、四日前……よね?」
「そうなの。それで、四日前にあたしは何をしてた?」
「えっと……私が出した依頼を受けて、いや……まさか、レギーナを剥いた日?」
「そうそう。で、あたしって四日おきに人を剥いでるじゃない?」
「あ、あぁ……!」
そして、朝の風に乗って、スカーはシルヴィの身体を通り過ぎて、彼女の身ぐるみを下着一枚残して丁寧に全て剥ぎ取った。
「きゃぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!」
「よしっ! これで依頼の報酬も全部もらいっ! 今回の依頼はこれにて終了!」
「しゅうりょう! じゃないわよ! 早く服を返しなさいっ! クロス・リッパー!!」
「結局……感傷も思い出も全部台無しですわ……」
「あ、あぁ」
「ん? エリオどうした、目線を逸らすなんて珍しいじゃねえか?」
結局、スカーのクロス・リッパーはここぞというタイミングで発動して、シルヴィは荒野の中、黄緑色のショーツとブラだけを身に着けた状態で座り込んでしまう。他の仲間たちは、スカーのいつもの癖に何も言葉が出ず。ただただ朝の陽ざしに光る二人の光景を呆然と見守る事しか出来なかった。
「こらー! クロス・リッパーっ!!」
エリュ・トリから離れた紛争地帯。その辺鄙な場所で、一人の女冒険者の手には、レザープレート、白のキャミソール、ロングスカート、具足に弓術用の手甲……おおよそ一人の人間が装備する下着以外が、丁寧に畳んだ状態で持たれていた。
シルヴィは今までとは違う意味で半泣きになり、スカーに装備を返すことを懇願した。だが「報酬だから」と言い切って、少しの間スカーは装備を返すことを渋った。五人の仲間だからこそ起きるそんなひと騒動だが、シルヴィは怒ったり困ったりしつつも、結局スカーを憎み切れずにいた。
シルヴィはスカーの目の奥を見据えていた。彼女がそうやって自分の役割を果たす裏で、シルヴィが余計な感傷に捕らわれないようにするために、こうしている事をうっすらと感じたのだ。
「さて、明日からも依頼をこなさないと。そうして生きていくのも、大事だと思わない? シルヴィ?」
「もうわかったからいい加減に服を返してっ!」




