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クロス・リッパー ~ALVIS niredo int Eriu-Tori~(小説家になろう編集版)  作者: 海神書房
第3章「クロスリッパーと名もなき依頼」
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第8話 二度、荒野へ

 翌日。遺物探しを合同で行う件はスカーによってギルドに伝えられ、まったく変わらない、普段通りの五人での依頼となった。そして、昨日の話の続きをギルドロビーの机で決めていく。


「さて、いろんな可能性を織り込んだ上で、私たちはどう動いていくか、ね」


 改めて依頼書を見て、スカーは四人に問いかける。


「昨日、説明はしたと思うけど、ミロとマリのアルカナの力を借りて、ヒントはもらったのよ。それによると『紛争を辿れ、終着点は亡念』らしいのよね」

「なるほど、それでお前は紛争跡の集落に行ってたのか」


 スカーの説明に、昨日死んだふりをしていたジーンが言葉を挟む。レギーナに叩きつけられて顔を伏せてはいたが、昨日の話はきちんと覚えているようだ。


「それなら、スカーは引き続き遺物の捜索だな。あとシルヴィも昨日着いて行ってるなら同行がいいんじゃねえのか?」

「そうっ……あ、ジーンも着いてきてもらっていい? 二人だとスカーは確実に私を剥きにかかるし」

「えっ……!」

「心配すんな、最初からそのつもりだ」

「えっ……!!」


 かくして紛争後の捜索はスカー、ジーン、シルヴィの三人に決まった。そして、その話を聞いていたレギーナとエリオは、昨日の話のなかで謎だった依頼者の捜索を請け負うことになった。


「俺は、とりあえずこの依頼書を持ってエリュ・トリを回ることにしよう。足で探すついでに治安維持も出来る」

「でしたら、わたくしは二つほど……ひとつはギルドで遺物とその依頼者の捜索、そしてもうひとつは、スミスクラウンへの伝書ですわ」


 エングレーブ付きナイフ、そしてペンダントと言えば、スミスクラウン商会が関与している可能性は高い。レギーナはヴェスパー家の令嬢という背景を使い、スミスクラウンから情報が得られないかを探ることにした。


「エリオやスカーでも話は聞いてもらえるでしょうけど、ヴェスパー家からの相談とあらば、その返事の早さも期待できると思いますし。ここはお任せください」

「じゃあこれで決まりね。今は情報も少ないし、ヒントになりそうなものはかき集めて行きましょ」


 スカーの合図で、五人はそれぞれの役割のためにギルドを出る。エリオは繁華街へ、レギーナは伝聞鳥の手配へ、そしてスカーたち三人は、昨日の国境地帯へ向かっていった。


「相変わらず荒れ放題だな」


 ジーンのセリフと共に、再び荒野の砂を踏むことになったスカーとシルヴィ。昨日の今日で変化があるとは思えないが、それでもある程度の期待はもってしまうのも普通の反応だった。


「昨日は少し南にある集落跡を尋ねたのよね。北西に行くと、スィンツーの監視塔の目もあるし」

「そうだなぁ、30年前の紛争の遺物ってんなら、領土戦を押されてから押し返すまでの遺物って事になるだろう。そうなりゃスィンツー側に近い場所は望み薄だ」


 ジーンとスカーは、目的の一致を確認して、昨日スカーが渡った領土線の荒野を引き続き調査することにした。


「……あ、ここが昨日の集落よ」


 少し歩いたところで、スカーは石の土台に発掘品が並んだ集落を見つけた。朽ちた用品が家だった場所に並べられ、スカーが探索をした後が残っている。


「石の土台の風化は浅いな。第二次紛争時の場所だったんだろう」


 昨日のスカーと同じ推測を重ねて、ジーンは、周囲の砂を軽く掘り始める。レザーグローブの隙間に小さな砂が混じるのも気にせず、その下に何かがあるかもしれないと言う希望だけで砂と土を探り、手がかりを探す。


「砂は軟らかいけど、土……と言うか岩はさすがに無理みたいね。埋まってると言うか、岩盤になってるというか」


 シルヴィも掘り出せる砂を手で掘り返して、何かが埋まっていないかを探る。ただシルヴィもジーンも、ある程度砂を取り除いたらすぐに岩盤らしき硬い岩に当たり、30分ほど探した中では、スカーが掘り出したもの以外は見つからなかった。


「うーん……昨日のあたしの探索でこの場所は掘り尽くしたのかしら。にしても、見つけたものが少ないわね」

「まあここは国境だ。向こうから火事場泥棒がこっそりやってくるのだって否定は出来ねえな」

「やっぱりジーンもそう思うわよね。そうなるとミロとマリの言う『紛争』は、別の事を指してるのかしら」


 短い時間でこの場所を探した雑感は「ここには何もない」だった。三人はそれぞれ、家の土台と思われる場所とその周囲を探していったが、スカーが発掘した布や家事用品と言ったもの以上の結果は見つからず、シンプルに無駄骨状態で少し休憩を挟んだ。


「だめね。この場所には無さそうだわ」

「そうね、範囲を広くして探したけれど、それらしいものやヒント、果てはスカーが見つけたような残骸すらも無いとは……」

「もういっぺん、あのチビたちに聞いてみるってのはどうだ?なんか別の答えが得られるかもしれねえし」

「それは難しいわね。そもそもあれはアルカナの啓示で、ミロとマリはそれを読解するのが仕事なんだけど、今回二人は『ジャスティス』の啓示をそのまま伝えてる。ならその結果は、もう解釈どうこうの話じゃないわけよ」


 すがる藁もなし。そんな状態で一息着いていた三人。そんな時、少々息の上がっていたシルヴィに、スカーが質問する。


「シルヴィ? 体力不足?」

「真っ先にそれ疑うのね。まぁ合ってるけれど」

「いやぁね、この間の師匠の話、ちょっと聞きたいなって思ったのよ。別に話したくなければいいんだけど、今のシルヴィの環境調査や戦闘力を鍛えた人の話だからさ」

「うーん……」


 シルヴィは少し思い悩んで、やがてポツリポツリと、記憶をたどるように話し始める。

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