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あなたの魂浄霊します 横浜関内特級ファイルII  作者: KYOKO
【天使の集い 試される大地】

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12/17

ファイル11 畠中真由美:中編

 2014年12月23日 火曜日 


 この日の朝、真由美さん達と共に集合場所に行くと、莉奈と年の近い子供達や、中学生が駐車場のバスの前に集まっていた。ジョージさんは、2日目のクリスマスパーティーから参加のため、初日は家でサモエド犬のエマちゃんと留守番になった。


「東京から来たの?」

「わーかっこいい、いいな、都会の子だ」

「ねぇねぇ、芸能人見たことある?テレビ映ったことある?」

バスに乗ると居合わせた子供達から莉奈は囲まれ、質問責めにあっていた。

トーマス君が、しばらく家にいるんだよ。と、「ママのお友達なんだ。」と子供達に紹介してくれていた。アシュレイちゃんも莉奈に懐いたようで、仲良く隣に座っている。「ふーん、いいなー」と、子供達はゲームしようよ!と遊び始めた。


「東京って言ったら、ここいらの子にとったら憧れだからね。」

隣に座った真由美さんが、せっかくだから、窓際で景色見てよ。と奥の席に案内してくれた。

 聞くと、全員がクリスチャンではないようで、町内のイベントに参加する地元の方が半数だった。

「白石です、こんにちわ。」年は60歳くらいだろうか?赤いダウンジャケットを羽織った、年配の女性に挨拶された。

「教会の方です。」真由美さんはそう言うと、「東京から来た友人なんです。」と、私を紹介してくれた。

白石さんは、まぁ遠くから!と、声をあげ、これ食べてとカバンから、お菓子を取り出した。

 見た目は小ぶりのスイートポテトに見えたが、セロファンに「わかさいも」と書かれている。一口食べると、ほんのりと甘い餡が口の中に広がり、ほろほろと繊維が溶けていった。美味しいですと言うと、

「これね、芋じゃないのよ。豆と昆布なの。」と、白石さんは説明をしてくれた。


 バスが動き出してしばらくすると、前方に茶色の山肌が見えた。

「あれ、昭和新山よ。」真由美さんが指をさすと、「2000年に有珠山噴火したのよ。知ってた?」と、聞いた。

「あー。ニュースで見たような気がします。」

小高い山の上に、白い煙が少し出ている。

湖側へ出ると温泉街があり、明日は湖畔のホテルにみんなで泊まると真由美さんが教えてくれた。

「もう14年経つのねー。」真由美さんは、頬杖をつき、前方にいるトーマス君達を眺めた。


途中、中山峠で休憩を挟んだとき、「これ美味しいのよ!」と、真由美さんが 名物の揚げ芋を買ってくれた。バスに戻ると、アイスクリームを食べている子もいるが、みんな揚げ芋を持っている。

ホクホクのじゃが芋がアメリカンドッグの生地の中に入り、一つでお腹いっぱいになった。バスの中は終始にぎやかで、誰かの笑う声が時折聞こえた。


 昼前にバスは最初の目的地、札幌時計台の前で停車した。

子供達に続いてバスを降り、雪の積もる歩道に降りると、ふわふわと雪が舞ってきた。テレビ塔の電光掲示板に、マイナス5度と表示されている。

 少し外に立っているだけで、指先が凍るようだ。

「口で呼吸しないと、鼻が凍るよ。」トーマス君に教えられ、はぁっと口から息を吸うと喉に直接冷たい空気が染み渡った。

集合写真を撮るとすぐ、今度はサッポロビール園のレストランに移動した。

巨大なレンガ作りのホールの天井は高く広がり、ジューっと肉が焼ける美味しそうな音がする。


 予約席まで移動すると、子供達だけでバーベキューテーブルに座った。中学生のリーダーがいるのでテーブルを任せ、保護者のテーブルに着いた。そこから子供達の様子を見ると、莉奈はすっかり打ち解けて自分から肉を焼こうとしているのが見えた。


 アシュレイちゃんを子供用の椅子に座らせた真由美さんと、せっかくだから飲みましょうと、ビールを注文した。食前のお祈りは、各自行うようで数名がそれぞれのタイミングでブツブツとお祈りをするのが見えた。

真由美さんの家で食べたジンギスカンも美味しかったが、ここで食べるジンギスカンも美味しい。

「やっぱり、うまいっしょ」

真由美さんは、タレでベトベトになった、アシュレイちゃんの口を拭き、もっと食べてと、どんどん肉を焼く。

北海道に来てから、不思議と食が進んだ。それは莉奈も同じだった。

新鮮な野菜や肉が美味しかっただけではない。セラピーを受けた後も、胸の上に重い石のようなものがのっていたが、ここへ来てからは、それを感じたことはなかった。

 焦ることも、誰かに気を使うこともなく、ただ呼吸をするだけで楽しいのだ。


 途中、真由美さんは席を立ち、子供達のテーブルを見に行った。戻ってくると、「やっぱり、肉ばっかり食べてるわ。」と笑い、「ま、今日はいいか。」と、ビールをぐいっと飲んだ。


 その後、園内にある博物館に寄り、またバスに乗って「札幌ファクトリー」へ向かった。

「ここからは自由行動になります。17時にまた、ここまで戻ってきてくださいね。」

真由美さんの声にみんなバスを降りると、正面ゲートへと進む。

莉奈と手を繋ぎ、中に入って思わず息を飲んだ。

 クリスマスの飾り付けがされた、吹き抜けのホールに巨大なクリスマスツリーがライトアップされている。

 莉奈は、「ディズニーランドみたい!」と言い、美女と野獣の世界だと喜んだ。

他の子供達も同じようで、スマホを取り出し写真を撮った。

 ツリーの下で、ハンドベルの演奏が始まり、黄色いテレビ局のマスコットキャラの着ぐるみや、アナウンサーが登壇し、何かクリスマスのイベントが行われている。


「好子さんどうする?私たち買い物行くけど、ここにいる?」

せっかくだから、莉奈としばらくここにいると真由美さんに言うと、そのままイベントの観覧席となっているベンチへ座った。


莉奈が1年生の時。

夫と3人でディズニーランドに行ったことがある。

世間体を気にする夫に合わせ「楽しいフリ」をしていた。

その頃は、ディズニーの楽しい音楽も、パレードも全て灰色に見えた。いつ爆発するか分からない爆弾を抱えているようで、笑顔の中にもずっと緊張感があった。それは莉奈も一緒だったのだろう。

 でも、今はただ大きなクリスマスツリーを見ながら、安心して楽しいと感じている。「お母さん、写真撮ろう。」莉奈にそう言われ、二人で顔を近づけスマホで写真を撮った。

父と母にもLINEで送ったが、もう一人先崎くんにも同じ写真を送った。

「札幌に来ました。クリスマスツリーとても綺麗です^ー^」

キラキラと光るツリーが、莉奈と自分の顔を余計に明るくしたように見えた。


 札幌観光はその後も予定通り進み、藻岩山のロープウェイを登る頃には雪は止んでいた。屋外の展望台へ向かうと、キュッ、キュッ、と一歩踏み出すことに、雪の鳴る音がする。

凍りつくような冷たい空気の中、札幌の夜景が広がる。キラキラと光る一つ一つの灯は東京で見るものとは全く違って、美しいと感じる温かいものだった。

長く見たかったが、風が強くなってきたこともあり、早々に下山しホテルへ向かった。


 札幌のクリスチャンセンターに到着すると、子供たちはまだまだ元気で、部屋割り表をもらうとすぐ、男の子チームと、女の子チームに別れそれぞれの部屋に入った。

 莉奈も同い年の友達ができたようで、葵ちゃんと今日は寝るんだーと、楽しそうにしていた。

保護者には、和室の部屋が用意され、真由美さん、アシュレイちゃん、白石さんと4人で寝る事になった。

 寝息を立てるアシュレイちゃんを起こさないように、そっと布団を抜けると、真由美さんはお風呂から上がってすぐの私に、冷たい烏龍茶飲む?と冷蔵庫を開けた。ちゃぶ台を囲むように座るとグラスにコポコポと注いでくれた。


「ありがとうございます。」そう言うと、「一応、教会関係者の建物だから、アルコールNGなのよ。でもタバコはいいのよ。おかしいでしょ?」と、北海道はヘビースモーカーが多いと皮肉った。


「私も昔は吸ってたのよ。でも、セラピストの仕事するようになってからは止めてね。これでも、お酒もかなり減ったのよ。」と笑った時、白石さんがお風呂から戻ってきた。


「白石さんも飲みます?烏龍茶。」


「真由美ちゃん、ありがとう。気が利くわねー。」


またコポコポとグラスに注ぎ、「はい」とちゃぶ台に置いた。


「お二人は教会でお知り合いに?」なんとなく聞くと、「ううん、避難所なの。懐かしいよね。」と、真由美さんが呟いた。


「トーマス君もアシュレイちゃんもこんなに大きくなって。早いわね。」白石さんは、アシュレイちゃんを見ながら目を細めた。


「有珠山噴火した時ね、私も、白石さんも洞爺湖の温泉街に住んでたの。でも、火砕流で町が流されて。長万部の避難所にいたんだけど、その時お隣さんになったのよ。」


「ダンボール1枚隔てて、よく2ヶ月もいたわよね。」


白石さんは、笑うと、さっき買ったのよと、ピーナッツの入った袋を取り出し、昔語りをするのもいいわね。と、袋を開けた。


 洞爺湖の病院で看護師として働いていた真由美さんは、自身も被災する中、避難所の病人の世話や衛生管理を、積極的に務め、ボランティアの取りまとめもしていたようだ。


「あの時、病院も流されたから、同時に失業もしてね。車とローンだけが残って。唯一の救いは賃貸だったことよ。」

真由美さんは、続ける。


「白石さんが洗礼を受けた方だって知ったのは、もっと後なの。私も旦那に出会うまでは、教会とは無縁だったから。」

「ジョージさんとは、どこで出会ったの?」


気になって聞くと、ふふっと笑い、「それ聞く?」と真由美さんは、笑った。

「笑っちゃうんだけどね、伊達市の避難所に応援で行った時、そこにいたの。その時は、彼、札幌の教会にいたの。ボランティアで1ヶ月くらいだったかな?炊き出しとか色々手伝ってくれたわ。」


はははと、真由美さんは笑うと、人生わからないもんだよねーと、また烏龍茶を注いだ。


「浦河の教会で再会した時、お腹に赤ちゃんがいるって言われたからびっくりしたわよ。」白石さんがすかさず言うと、はははとまた真由美さんが笑った。


「妊娠した事もびっくりしたけど、看護師やめて、セラピストになる。って聞いた時もびくりしたわ。」白石さんは、真由美さんの仕事を知る数少ない人のようだ。


真由美さんは、近所では、自分の仕事の話をしていないらしい。

「小さな町だからね。怪しい仕事だとか言われると、色々面倒なのよ。ここいらじゃ、たまに旦那の仕事の手伝いしてるとか、東京に出稼ぎに行くとしか、言ってなくてね。」


「そうなんですか。」

元気そうでも皆、人には分からない負荷を抱えている。真由美さんの影を垣間見たような気がした。


「白石さんは理解してくれる方だから。本当に特別なの。」

「いいえ。真由美ちゃんたちのお陰で、うちの馬たち元気になったんだから。感謝してるのはこっちの方よ」


キョトンとした私の顔を見た白石さんは、「あ、好子さんにはまだ話してないの?」と真由美さんに向き直った。


「まだだけど、人間のセラピーは受けてくれたからね。未来のセラピスト候補だから、話そうと思ってたわ。」


真由美さんは、笑うと、「好子さん、あのね、旦那と私二人で動物のセラピーもしてるのよ。興味ある?」と打ち明けた。

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