姉弟…2
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拙い文章力ですが、引き続き書き続けますので、よろしくお願いします。
<毎週土曜日掲載>
さてっと、街の散策の続き続き、と言う雰囲気ではない、な。
なんか鈍よりした空気が、幻視出来そうなんだけど・・・はぁ~。
ようやく商業区に辿り着き、適当に買い物をって・・・やっぱりヴィが、と言うか背負ってる空気が暗い・・・・・・。
「ほらほら、ヴィ! ヴィってば!」
「うん・・・」
「これなんか、旨そうだぞぉ~!」
「そうだね・・・」
「おっ! これ何だろ? 面白そうだぞっ?」
「だね・・・」
「ううんっ? あれ何だ?? 何か芸をしてるぞ!」
「ああ、ね・・・」
「あれはっ?!」
「・・・」
「次はぁ~・・・」
「・・・・・・」
だぁーーーーーっ! 駄目だ。 耐えれる気がしない!
このまま過ごしても意味が無いので、散策を切り上げて早々に宿屋へ引き揚げる。
その日は個室に空きが無かったので、二人で一部屋を使うことになった。
気疲れしたので、ベッドへ腰掛・・・。
「ああ~~、疲れたなぁ~~」
「だね・・・」
「やっぱ、大きい街は違うなぁ~」
「うん・・・」
ヴィの雰囲気は、暗いままだ。
ぐぬぬぬぬっ、どうしたら良いんだ? そもそも、奴隷を解放するなんて・・・と思ったその時、祝福の装身具から、女性の様であり、しわがれ声の老人の様な、重なり合う声が頭に響いた。
『我は怠惰であり、知恵・賢明』
ん? 何気に『怠惰』とは、初めてだな。
『怠惰って、ああもう!どっちで呼ぶか面倒だな。 知恵・賢明でいいや、何だ?』
『我らが主に、我が力を貸さん』
『ん? そう言えば、何の力だったか・・・』
『我は、知恵を与えん』
『具体的には何だ?』
『主が眷属たる、嫉妬=希望・期待の力にて、その姿を変じられよ』
『うん? 姿を変じるとは、何を示している?』
『小さき者へと』
『小さき者・・・う~ん。 例えば、鼠とかか?』
『然り』
『あ~、出来る、のか? 意図が分からないが、まあ変れるか、試してみるか』
『希望・期待』
『我らが主よ』
『あ~、鼠へ、なる事は出来るか?』
『造作も無き事』
一瞬、祝福の装身具が光ったと思うと、徐々に身体が縮んでいくのが分かる。
数瞬の後に、俺は鼠へと変化した。
「うぇあっ!? じ、ジークッ!!」
あっ、ヴィが居たの忘れてた。 って、声が大きい!
それにしても、ふぅ~ん。 小さくなると、視界もこう見えるのか。
ってか、俺が危ないから、ベッドから降りるなよ。
『よし、分かった。 戻るか』
頭に選択肢が浮かび、”人族(男)”を意識すると、数瞬で先程までの姿に戻れた。
「えっ!? こ、今度は戻った?! えっ?えっ!えぇぇぇっ!! って、いやぁぁぁぁっ!! ふっ、ふ、服! 服を着てぇーーーーーっ!」
もう、ヴィは煩いな~。 前に、見ただろうに・・・。
で、気付いたんだが、装身具の大きさも、変化に合わせて変る、と・・・。
まあ、身に付けてないと、何が起こるか分からないし、融通が利くと思えば良いかな。
『で、知恵・賢明。 これから、どうする?』
『御身自ら、想いの向く先へ』
『想いの向く先と言っても・・・ああ、奴隷商の館へか』
『望むままに』
『しかし、あそこに奴隷が収容されてるか、まあ調べないと分からないが、それは忍び込めば分かるか・・・だが、そこからどうする? 忍び込んで終いでは、問題の解決にはならないが』
『求める者へ、その力を分け与えられよ』
『ん? ああ、あの神が言っていた事か・・・』
って言っても、分け与えるって何なの?一体。
『分け与えるが解らないが、仮に出来たとしてそこから、あ~、出るのは簡単では無いがどうする』
『そも主の眷属たる我らが力を』
『うん? 我らの力って・・・あっっ!』
色々やり取りする中で、何とかなりそうな気はしてきた。けど、奴隷を解放するって・・・かなり、大問題だよ、な。
そもそも、あの姉弟が素直に付いて来る、のか? ま、まあ、話し方次第だろうけど、居なくなったら居なくなったで大騒ぎだし、あのひと目で分かる体躯じゃ、うまく抜け出せても直ぐ捕まってしまう。
・・・ああっ!それ以前にそんな事したら、俺達が奴隷商に行った後でのことだから、真っ先に疑われるじゃないか!?
う~ん・・・駄目だな。 さて、どうしたものか。
『知恵・賢明』
『我が主よ』
『あ~、分け与えるとは、具体的にどう言う事か、教えてくれないか』
『その身に纏う祝福の装身具』
『ん? 装身具がどうした?』
『宝玉を囲う枝葉』
『ん? ああ、この装飾か』
『千切り取られよ』
『これをか?』
新たな装身具を飾る装飾の、枝から生える一枚の小さな葉を摘まむと、普通の植物の葉の様に千切り取れた。 取った傍から、新たな葉が枝より生え、元の装飾へと戻る。
『おおっ! 取れたが・・・これを?』
『傍に侍る者へ、与えられよ。 さすれば、主が想い・想う力を与えん』
これを渡すことで、力を与える?
う~ん。 まっ、試しにヴィにあげてみるか。
「ヴィ?」
「・・・」
目玉ひん剥いて、何? その面白い顔?
口が半開きで、パクパクしてるし、楽しいの?それ?
「ヴィ?」
「あぁ・・・う、うん。 な、何?」
「ちょっと手だして、これ持ってみて」
ヴィに必要な力って何かな? 食いしん坊だし・・・って、違う! まあ、何だかんだ気持ち的に、助けられてる点はあるし、怪我はしてほしくないから、暴食=節制・貞節の力が、良かったりするのかなぁ~?
そんな事を考えながら、先程の小さな葉をそっと手のひらに乗せる。
すると、手のひらに乗せた瞬間、淡い光と供に消え去り、手首に小さな腕輪が・・・。
「えっ!? ななっ、何? いったい、コレって何なの?!」
「あ~、えっと~・・・」
『我らが主よ』
『我らと対なる。 主の眷属よ』
「なっ、何!! 何処かから声が」
『供に主に仕え、支える者よ』
『我は、暴食にして、節制・貞節』
「ちょちょちょっ、じ、じじ、じじぃ」
こらっ! 俺は、爺じゃないぞ!
ってか、分けれたよ・・・えっ?そう、だよね?
節制・貞節が、語り掛けてきてるし、ねぇ?
「ヴィ、落ち着けって」
「こ、ここ、これ、これが、お、おち、落ち着けって」
ま、まあ、当然の反応、かな?
とにかく、ヴィに大まかな経緯と、能力を説明することにするか。
「ヴィ?」
「な、何!?」
「まあ、落ち着けって言っても、今は無理だろうが話を聞け」
「は、話って何?!」
俺は人族の変身を解き、コボルトの姿へと戻っていく。
「ヴィ、オレ、ミル」
「ジーク!! こんな所で、その姿になったら」
ヴィが慌てた様子で、辺りを見回してる。
窓はあるけど、室内だから大丈夫なのに。
「ダジョブ。 ヴィ、オマ、オレ、オド、カナイ」
「う、うん。 出会った時に、その姿は見てるし・・・それに」
「ウン。 オマ、オレ、スキ?」
「うん。 って、ちょちょっ、好きって急に」
「ウン。 ナ、オレ、ハナル、ヴィ、キク」
「う、うん・・・」
そして、また人族の姿に戻る。
「ヴィ、俺は”アル”力を持っている」
「うん」
「それは”ナニカ”と言う存在と、この世界の神々に与えられたものだ」
「う、うん・・・」
そこからヴィに俺が力を得た経緯、”ナニカ”や教会での神々の事、そして力の事等を分かってる限り、仔細は省きながらも全て話して聞かせた。 聞いてる間は、ヴィも半信半疑だったが、実際に力の一部を見た事で、ある程度は理解も納得もしてくれたようだ。
「で、さっき渡した物は、その力の一部だ。 その意味、分かる?」
「え、えぇっと、なんで、かな?」
「おまっ! 一緒に居て、分からないのか?!」
「あ~、うん~・・・た、大切?だから、かな?」
「んん? 何か気になる言い方だけど、まあ、昨日今日の付き合いじゃ無いし、出会いも出会いだったからな。 そんなところだ、とでも思っといてくれ」
かぁ~、何か顔の熱が、上がってきたみたい。 こっぱずかしいぞ!これ!!
「でな。 さっきの声だけど、その力に宿る意思?みたいなモノで、求めればそれに応えてくれる」
「そ、そう・・・」
「その腕のは俺のと同じ、ヴィにとってはお守りかな」
「うん」
「それが今後、ヴィを守ってくれる」
「ジークは・・・もう守って、くれないの?」
「ん? 一緒に居る限りは俺が守るけど、万が一近くに居なかった時は、それが、その力が、ヴィを守るんだよ」
「そう・・うん、そっか! うん! 分かった。 分かったけど、分かんない!!」
「っ、おいおい。 どっちなんだよ?」
「知らないっ! でも、知ってるっ! ふふっ、何でもないんだから」
「よっ、よく分からないが、此処からが本題なんだが・・・」
ついさっきまで、暗かったと思ったら、驚いてたり、妙に嬉しそうだったり、コロコロとよく表情が変るなぁ~。 っと、そんな事はどうでもよかった。
「ヴィ・・・」
「な、今度は何・・・」
「ヴィは本当にあの巨人を、奴隷から解放したい。と、今もそう思ってるか?」
「えっ! ・・・う、うん。 た、助け、たい・・・」
「・・・そうか。 それが、どれだけ危険で、大変か分かってるか?」
「・・・た、多分」
「助けた後、どうするつもりだ?」
「あっ、え、えぇっと、それは・・・」
「いいか。 ただ連れ出しただけじゃ、直ぐに捕まって連れ戻され、今よりもっと酷い目にあうかも知れない。 いや、その可能性の方が、一番高いんだぞ? それでも、助けたいのか?」
「・・・・・・」
話していくうちに、ヴィは俯いてしまって、表情が分からないが・・・。
「意地悪で言ってるんじゃない。 今ヴィは俺の力を見て、可能性が示されたんだぞ?」
「・・・・・・」
「俺の力を使えば、恐らく助けることは出来る、はずだ」
「・・・うん」
「助けたとして、その後ヴィはどうする?どうしたい? 助けただけで、お終いなのか? なら、俺は力を貸さない。 この街での予定を終えたら、それで立ち去って終わりだ」
「・・・うん」
「助けた後どうする? 俺達はサロに戻るんだぞ? ヴィはそれでも、助けたいと思ってるのか?」
「・・・・・・ぅん」
「ん?」
反応があったと思ったら、俯いてた顔を上げて、大粒の涙を湛えた表情で・・・。
「・・・うん。 うん、助けられるなら、助けられるなら、だずげたいよぉっ! だずげだあどどうするか、どうしだらいいかわがんないけど、わ゛だじ、わ゛だじぃっ! ジーグゥーーーーー、嫌だよ。 わ゛だじもあのどぎ、もじかじだらわ゛だじもって、ぞう思っだらぁ」
「あっ、ああ、分かった。 分かったよ」
ああぁ、もうぐしゃぐしゃで、何言ってるか分からない。 でも、助けたいのね。
やれやれ、こうなったらやれる所までやって、後はなるように任せるとしますか・・・はぁ~、気が重たいやらなんやらで、準備は要らないけど策を考えていきますか。
To be continued...
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