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リズミカルな天の音  作者: 宝月 蓮
第一楽章 期待と不安のラプソディ

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5/9

圧倒的、絶対王者の音

 まだ慣れない高校生活なので必要以上に体力を使ったような気がした。

 放課後になる頃には、元バドミントン部でそこそこ体力のある理純でも少し疲れていた。


「リズ、スゥ、部活紹介体育館だよ! 行こ!」

 寧音は元気そうである。

 どうしてそんなに元気なのだろうかと不思議に思う理純であった。


 音宮高校にある全部活をこの日の放課後に紹介するので、部活紹介はかなり時間がかかるだろう。

 新入生の為の部活紹介なので、実質新入生は強制的に放課後を削られてしまうのだ。


(それにしても、寧音も鈴子も身長高いなぁ)

 理純は寧音、鈴子と体育館に向かう途中、二人を見上げながらそんなことを思った。

 身長百五十七センチの理純は決して背が低いわけではない。

 しかし寧音と鈴子の隣に並ぶと、自分が小さく見えてしまうのであった。


「スゥ、お兄さん吹奏楽部でしょ? 吹奏楽部って部活紹介で何か演奏したりするとか聞いてる?」

 寧音は巻かれた髪を右手でくるくるといじっている。

「うん。フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルンの五重奏やるって聞いてる。兄さん、ファゴット担当だから部活紹介の時に演奏するみたい」


 理純にとって聞いたことがある楽器と、聞いたことのない楽器が入り混じっていた。

(フルート、クラリネットは分かる。ホルンも何となく丸い感じの楽器だって分かる。でも、オーボエとファゴットってどんな楽器だろう?)


 すると理純の思考を読んだかのごとく、鈴子が自身のスマートフォンで五重奏の画像を検索して出して見せてくれた。

「この五つの楽器で演奏するの」

「鈴子、ありがとう。えっと、オーボエとファゴットってどれ?」


 フルート、クラリネット、ホルンは理純の予想通りだった。しかし残り二つ、どちらがオーボエでどちらがファゴットか分からない理純である。


「こっちがオーボエ」

「……何かクラリネットと少し似てるね」

 鈴子が示してくれた黒い楽器を見て、理純はそう思った。

「確かに。で、こっちがファゴット。兄さんが担当の楽器」

 鈴子が示した最後の楽器は、人の体の半分くらいある茶色く細長い楽器だった。

「何か……お菓子みたい」

 理純の素直な感想に、寧音が吹き出した。

「リズ、お菓子って。でも分かるかも。ウチも中学の吹奏楽部でファゴット初めて見た時そう思った」

「チョコが最後までたっぷり入ってそうなアレみたいだって?」

 鈴子は悪戯っぽい表情だ。

「ちょ、スゥ、それ言わないで。マジでツボるから」

 ケラケラと明るく寧音が笑っている。

 それにつられて理純もクスクスと笑ってしまった。






♫♫♫♫♫♫♫♫






 体育館には新入生の他に、それぞれの部活の代表者達が来ていた。

 大勢の生徒達と教師達が体育館にいるので、足音が賑やかだ。中にはキュッキュッと上履きが体育館の床と擦れる音も聞こえる。

 代表者の先輩達はそれぞれの部活のユニフォームを着用していたり、部活で使用する道具を持って来ていた。

 一番分かりやすいのは剣道部だ。

 全身防具に身を包み、竹刀を持っている。


 教師が新入生やそれぞれの部活の代表者達がいることを確認したら、部活紹介が始まった。

 部活紹介の声は高くなったり低くなったり、図太くなったりか細くなったりと様々だ。中にはパフォーマンスをする部活もあった。例えば、剣道部が試合形式の激しい練習を見せてくれた。バシバシと鳴り響く竹刀がぶつかり合う音は、中々の迫力があった。また、バレーボール部はレシーブのラリーをしていたり、ダンス部が流行りの曲でダンスをしたりと、賑やかである。


 そして、吹奏楽部の紹介が始まる。

 フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルンを持った生徒達が前に出る。

 理純は鈴子の兄だという、ファゴットの男子生徒に目を向けた。

(あの人が鈴子のお兄さんかぁ。確かに目元が鈴子と似てる。何か爽やかそうな人だなぁ)

 鈴子の兄に対し、そんなことを思った理純である。


 理純から見て、鈴子の兄の右隣にいるホルンを持った女子生徒に目を向ける。

 小柄でどことなく小動物を彷彿とさせる、ショートボブの可愛らしい女子生徒だった。

(あのホルン先輩は……二年生かな? 可愛いなぁ)


 次に、理純から見て、鈴子の兄の左隣、丁度真ん中にいるクラリネットを持った男子生徒に目を向けた。

 男子にしては小柄だ。中性的で童顔な少年である。

(クラリネットの先輩、多分寧音や鈴子よりも身長低そう。二年生かな?)


 次に、理純から見てクラリネット担当者の左隣にいる、オーボエを持った女子生徒に目を向ける。

 黒髪ロングヘアをポニーテールにしており真面目そうに見えるが、どこかワクワクした様子だった。

(オーボエの先輩、早く演奏したそうな雰囲気だ。何年生だろう?)

 理純は思わず表情を綻ばせた。


 そして最後に、理純から見て一番左端にいるフルートを持った女子生徒に目を向けた。

 サラサラとしたロングヘア、小柄だが大人びた顔立ちである。

(フルートの先輩、結構美人だなぁ。でも、何かクールで近付きにくそうなオーラ出てる。小柄だけど大人っぽいから三年生かも。というか、五人全員結構美形揃いだよね)

 楽器を持った五人を見てそう思う理純であった。


 そして、眼鏡を掛けている知的そうな男子生徒も出て来る。恐らく彼が吹奏楽部の部長なのだろうと予想する理純である。


 体育館に、最近流行りのJPOPの曲が流れ始める。理純も知っている曲だ。フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルンの五種類しか楽器がないのにも関わらず、音に深みがあった。

 まるで体育館全体が鮮やかに彩られるような音が響き渡っている。

 そして体育館全体を貫くような音に、理純はハッとする。

 理純だけでなく、他の生徒達も目を、耳を、心を奪われていた。


 煌びやかで優雅なフルートの音だ。

 演奏しているのは理純が知っている曲なのに、初めて聞く曲のようである。

 そのフルートの音は、体育館全体を支配する。

 圧倒的、絶対王者の音だった。

 今の主役は、間違いなくフルートである。


 そして、フルートを支えるかのようなクラリネットの音にも圧巻された。

 絶対王者のフルートの音に寄り添い、引き立たせているのだ。


(凄い……!)

 理純は体育館を支配して包み込む音に、引き込まれていた。

読んでくださりありがとうございます!

少しでも「面白い!」「続きが読みたい!」と思った方は、是非ブックマークと高評価をしていただけたら嬉しいです!

皆様の応援が励みになります!


『君と僕の響奏曲』に登場した響、奏、小夜、律、花音の五人が部活紹介で五重奏をしております。

蓮斗も部長として頑張っております。

ちなみに『君と僕の響奏曲』をお読みくださった方は分かると思いますが鈴子は律の妹です。

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