9話:週末の第3小隊 後編
買い物と治療が終わった諒輔と真澄は、他のメンバーと合流すべくアーケード街を歩いていた。
「お買い物楽しかったね。」
「うん、真澄ちゃんと一緒だったからか一層楽しかったよ。ありがとう。」
「うへへー、そう言ってもらえてうれしい。」
――時は同じくして、老舗喫茶『カメリア』には隆利と燈が8人掛けのソファーに腰を下ろしていた。
「なー、燈。あの2人今どうしているかな。」
「どうって?」
「燈だから言うけど、真澄って世話焼きっていうか、手間がかかる人をほっとけないっていうか・・・諒輔に気があるんじゃないかって思うんだよ。」
「んんん?それって・・・もしかして!真澄ちゃんが恋しているって言いたいの?いつ!どこで!そんな雰囲気を感じたのさ!」
「それは・・・。(これって言うとやばいかな・・・恭平に怒られないかな。)ちょっとね。俺と恭平だけの秘密!」
「ええっ!私にそれ振っといて、秘密にしないでよ。まあ、諒輔くんが来てから真澄ちゃん生き生きしているのは感じていたけどさ。」
「やっぱりそうだよね!いやー燈に相談してよかったよ。飛鳥だと多分刺されていた・・・。」
「一回刺されればいいのに」と、燈がストローを咥えながらジト目で返した。
諒輔と真澄は、『カメリア』に到着した。2人は隆利たちが中にいることを確認し、ドアを開けた。
――カランコロン。小気味のいいドアチャイムが鳴り響き、コーヒーの香りが漂う店内に進んだ。
「お待たせー。諒輔くんの治療少し成功したよ!」
「朗報じゃねえか!よかったな諒輔!」
隆利は、諒輔の背を大きな手のひらで叩く。
「痛い、痛い。もう少し加減してくれ。」
「ああ、すまんすまん。」
「すみませーん。アイスカフェラテ1つください。諒輔くんは?」
「僕は、アイスコーヒーにシロップください。あとこの卵サンドを1つお願いします。」
「おお、諒輔いいセンスだな。ここの卵サンドは絶品だぞ。」
ほどなくして、にやけた顔の冥が入ってきた。
「マスター、アイスコーヒー無糖で。隆利たちと一緒の席に行くよ。」
「冥、おかえり~。収穫はどうだったの?」
「豊作だよ。往年の名作RPGもあったし、不人気ハードの売り上げを支えたTPSゲームもあったよ。あと、やっぱりパーティーゲームって言ったら外せないのも買ってきた。」
「さっすがー。私たちのことも考えてくれてるね」燈は、ソファーに腰かけた冥の背中を、バシバシと叩いていた。
そこへ、紙袋を提げた恭平と飛鳥が並んで戻ってきた。
少し頬を赤らめた飛鳥を見て燈の推理が働いた。
「ほほぅ?飛鳥ちゃん、恭平と何があったんだい?」
「なっ!何もないぞ!」
「その反応は、何かあった反応でしょ!」そういって飛鳥をジロジロ見まわした。
「あれれ~?出かけるときに、こんなアクセ付けていたっけ?」飛鳥の首回りにキラリと光るシルバーのネックレスを指さした。
「これは、セレクトショップで恭平が選んだだけで・・・別に、贈られたわけじゃない!」
「今日の服に合わせるなら、無駄のない意匠のほうが飛鳥らしいと思ったんだ。」
飛鳥は言い返しかけて、首元のペンダントにそっと触れた。
「・・・戦闘に関係のない装飾品なんて、今まで興味はなかった。でも、これは軽いし動きの邪魔にもならない。・・・悪くはないだろ」
「うん。すごく似合ってるよ」
諒輔の一言に、飛鳥は再び頬を赤くした。
――ひとしきり喫茶店で話した後、男女で分かれてショッピングに出かけた。
「諒輔!真澄のことどう思っているんだ?」
「えっ!?どうって・・・そりゃあ、可愛いし器量があって・・・」諒輔はここで言い淀んだ。
「器量があってからの続きは?」恭平からの追い打ちが諒輔を襲う。
「これ以上は・・・まだ出会って3日だし。見てくれが平凡な僕よりも、もっと格好いい人だってたくさんいるだろうし・・・」
「「はぁ!?」」恭平と隆利2人が疑問を呈しながら、視線を諒輔に送った。
「おいおい、病院での出来事あって諒輔に気がないとかそんなわけないぞ!」
「ええぇっ!昨夜の聞こえてたの?」
「諒輔の両隣いたし、あれだけ静かだったら聞こえていない方がおかしいだろ!」
「うっ・・・確かに。でも・・・」
「でもって・・・。高等部なってから、小隊で真澄と絡んできていたけど、諒輔以外であの距離感は見たことないぞ?」
「そうそう。あの子は諒輔に気があると僕も保証できる。」
「2人とも・・・ありがとう。でも気があるとしても、僕は彼女に対して誠実に行くよ。みんなともちゃんと絆を築いたうえで、真澄に告白する!」
「お!よく言った。それでこそ第3小隊の男だぜ。」
「じゃあ、俺らは夏に向けた服を買って、寮に帰るか。」
――時を同じくして、女子組。
「真澄ちゃん、諒輔くんのことって正直どう思ってるの?」
「ほぇ!?急にどうしたの燈ちゃん。」
「男友達にしては、なんだか距離感が近いっていうか・・・なんていうのかな、家族って感じの距離感にも感じるんだよね。」
「やっぱり、そんな風に見えるかな?」
「うん」
「私から見ても、他の3人よりは近く感じるかな。」
「飛鳥ちゃんでも、そう感じたのね。うーん、最初はね初めて会った時から不思議と懐かしくて、ずっと前から知ってたみたいな安心感があったの。でも・・・今日2人っきりでお買い物して、ベンチで手を握って治療した時・・・ただの安心感じゃなくて、心臓がうるさいくらい跳ね動いて、顔が熱くなっちゃって・・・」
「真澄ちゃん・・・それ完全に『家族』の距離から『恋』に変わっていない?」
「・・・鈍感なのは2人とも同じってわけね。ま、素直になりなさいよ。」
「もう!2人ともからかわないでよ!やっぱりそうなのかな?やっぱりそうだよね。」真澄は、両手で顔を覆って真っ赤に悶絶していた。
「私ばっか攻めるけど、そういう2人はどうなの?」
「あたしはね~。んー今は特定の人はいないけどさ!一緒にバカやって、腹抱えながら笑い合えるやつがいいな!かたっくるしいのはナシ!飛鳥ちゃんは?」
首元のシルバーネックレスを触りながら「私は・・・私の背中にしっかりついてこれる奴ね。私より弱い男なんて眼中にないわ。」
燈が「へぇ~、背中についてこれる人ねぇ?」と、恭平の顔を思い浮かべてニヤニヤと飛鳥をつついた。
「何よ!」そういいながら赤面を浮かべていた。
――時刻は夕刻。夕日に赤く照らされた駅前で分かれていたグループが合流した。
「よ!お疲れ。そっちもショッピングは終わりか?」
「そーだよ。あっ!お探しの子はこちらですか、大将。」燈は真澄を指さした。
「正解!こちらからは、彼を提供しようか?」隆利は諒輔を指さした。
「じゃあ、2人を近づけますか。」と燈、「そうしよう。」と隆利の2人が結託した。
「諒輔、今日の日を記録しておこうぜ。ほら、写真撮ってやるからあっちに。」
「あ、ああ。ありがとう隆利。」
「真澄ちゃん、記念だし諒輔くんと一緒に撮ってきなよ。」燈に軽く背中を押され、諒輔の目の前に出て目が合った。
「「・・・っ!?」」夕日のせいか、2人して頬を赤くして互いにそっぽを向いた。
それを見ていた恭平・隆利・燈・飛鳥そして冥の5人が目配せを交わし、そろって吹き出した。
「おいおい、正面向いていないと撮れないだろ。」
「あ、ああすまん隆利。」
「はいはーい、じゃあ2人ともこっち向いて。はいチーズ。」
その日撮った写真は、夕日に照らされていたのか2人とも真っ赤に染まっていたが、どことなく幸せそうな表情をしていた。
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