10話:期末と強襲
皆で出かけてからひと月が経っていた。
このひと月の間は襲撃もなく、ひたすら座学と第3小隊が出会ったデュアルコアを持つ特殊個体の対応訓練が軸だった。
「そろそろ、期末試験か・・・。」
「そろそろっていうか、来週の話だよ。」燈が呆れたように肩をすくめる。
「何とか赤点取らない様にしないとな・・・」
「勉強会でもする?」
「できれば頼みたい。この学園夏休みの宿題ない代わりに実習あるじゃん。赤点取ると普通に補習用課題が出るんだぜ・・・実習どころじゃねえよ。」
「流石、去年3教科赤点だった人の力説は違いますねぇ。」
「おま・・・諒輔にまでバラすなよ。」
第3小隊は笑いに包まれた。
その日の夜から、第3小隊は集まって勉強会を始めた。
「えーっと、隆利は全般的に苦手で、諒輔は特務制度関係が苦手、燈は暗記系か。」全教科上位の恭平が各々の苦手分野をまとめてくれた。
「まあ、諒輔の特務制度関係はどうしようもないな。でもよくできている方だから、試験範囲の反復と専門用語の暗記だな。燈は、歴史学か。」
「恭平~歴史って覚える必要あるの?」
「んー、実戦では丸暗記より、意味を理解するほうが大事だ。でも試験の時は覚えたほうがいい」
「そっか、じゃあ試験の時だけ覚えるよ。」
「じゃあ、俺は隆利の底上げメインで行うから、諒輔と燈の反復には真澄と冥、ついてやってくれ。」
「「よろしくお願いします。」」
「はーい、任されました。暗記系にはフラッシュカード使おうか。」
「飛鳥は、戦術理論に問題はない。ただ、歴史学の用語で取りこぼしがある。真澄と冥の組に入るか?」
「・・・必要なら、付き合うわ。」
「うん。一緒に頑張ろう、飛鳥ちゃん。」
――翌週、筆記試験は無事終わり、答案返却日が来た。
「ぐおー、結果が心配だー」隆利はのたうち回っていた。
「終わったんだし、次の実技試験に集中しようよ。」
「実技は問題ないぞ。俺ら小隊ならな。」
瀬戸先生が教室に入ってきた。「はーい、答案返却しますよ。」
「ちなみに、2年A組は優秀と学年主任からお墨付き貰ってますよ。」
「赤点なし!ってことでいいんですか。」
「その通り。期末筆記では補習課題者はナシです。」
「よっしゃー!これで大手を振って、実習行けるぜ!」
「じゃあ、答案と成績順位表返しますよ。」
「・・・うわ、俺ギリギリだったわ。全教科赤点ラインの45点何とか超えた・・・みんな教えてくれてありがとうな。諒輔はどうだったんだ?」
「僕は、暗記頑張ったからそこそこ。」
「って、うぉい!お前学年30位ってまじか・・・」
「小隊の中では5番目だけど・・・」
「恭平と真澄は相変わらずだな。流石学年1位2位は違うぜ。」
「今回は、ケアレスミスが多かったからな。3教科そのミスがなければ、1200点取れてたんだけどな。」
「あー、わかるよ。私も、論述問題の回答が足りなくて、点落としちゃった。」
「えーっと、恭平が1位で、真澄が2位、13位に冥で、20位に飛鳥、30位に諒輔、65位に燈、118位に俺か・・・」
「210人いる中で、頑張ったじゃん。」
「そうだな。実技では1位取るぞ!」
「がんばってね。」
――午後、第1訓練ドームにて、2年A組の実技試験が始まった。
「模擬戦闘での小隊連携と、特殊個体に対する対応力が今回の試験内容です。」瀬戸先生から告知があった。
「被弾については、2発までは規定内としますが、3発目からは減点方式、危険度から見て5発目で離脱とします。5発食らったら実技赤点なので、気を付けてくださいね。」
第3小隊は特殊個体の中でも上位個体が課題と告げられ、6番目の試験となった。
「しゃ、行くぜ。」
「実戦と捉えて、臨むぞ。俺と冥で解析しますので、隆利はいつも通り前線盾役で、飛鳥と燈は補助で盾の消耗を抑えてください。真澄は飛鳥と燈に防護膜の付与、諒輔は決定打の準備を頼む。」
「「「りょうかい!」」」
ドーム中央に仮想虚烈が出現した。見た目は、ゴツゴツとしており、一目で見ても『巌』を纏っているのが見て取れた。
「第3小隊の皆さん。試験開始!」
「冥、解析回してくれ、巌は判明しているから残りだ!」
「りょーかい。10秒頂戴。」
「隆利!相手の巌に負けねえだろうな。」
「あたりまえだ!」
隆利の大盾と、虚烈の巌で覆われた腕がぶつかった。
「飛鳥!一撃入れて虚烈の態勢を崩してくれ。」
「ああ!」そう言い残し、虚烈の左方から轟の一撃を入れ態勢を崩した。
すかさず、崩れたのを見届け、隆利が虚烈にシールドバッシュで押し返した。
「OK、解析完了。あいつは、巌と翠の複合だよ。」
「「「了解。」」」
「隆利!恭平!僕に属性を分けてくれ。」諒輔は平和だったひと月の間、仲間の属性で戦う術を身につけていた。
「ああ、もってけ!あいつを沈めてこい――」
その時だった。訓練ドームに警報音が鳴り響く。
「試験中断!」
『――緊急・緊急――学園外縁部に未確認虚烈の軍団を発見。虚烈は現在、学園防壁を破壊しようと防壁を攻撃中。』
「しょうがないですね。第3小隊は私と一緒に来てください。出現位置はトラックフィールド近くです。試験は内容変更します。移動中に説明するので、よく聞いてください。」
「「「了解!」」」
――トラックフィールドに向かっていると、防壁を叩く虚烈に対応している教官部隊が見えた。
「試験内容は以下とします。 第1、トラックフィールドにいる中等部学生の避難誘導。 第2、虚烈の迎撃。この2点です。君たちならできると信じています。私は防衛に徹します。」
「了解!」第3小隊はそろって頷いた。
「避難誘導には燈と真澄頼む。」
「「了解!」」
燈は、中等部生を先導し、焔で寄せ付けないように安全な退路を確保していた。
真澄は、逃げ遅れた子に防護壁を張り、身を守っていた。
「冥は、虚烈をまとめている指揮役を見つけ、コア解析だ。おそらくデュアルコア持ちだ。」
「りょーかい。」
「俺と諒輔、飛鳥は虚烈を攻撃!隆利は避難先の防衛を頼む。」
「「「了解!」」」
隆利は、すぐさま避難先の入り口で大盾を構え、突破してきた個体を防いでいた。
「指揮役見つけたよ。恭平の読み通りデュアルコア持ちだ。」
「コア属性はなんだ?」
「轟と闇だね。」
「諒輔、俺がかく乱するから、冥と飛鳥から属性分けてもらえ。」
「ああ!2人とも僕に属性を分けてくれ。」
諒輔が展開したバレットアーツに2人の拳が乗り、属性を吸収させてもらった。
漆黒の籠手を紫電が縁取る、鮮やかな姿へと変わった。
「諒輔!派手にぶちかませ!」
恭平が、持ち前の俊敏さで周りの虚烈をかく乱してくれていた。
「諒輔!私がこいつの態勢を崩す。一撃お見舞いしてやれ!」飛鳥の一撃がデュアルコア虚烈の態勢を大きく崩した。
態勢を崩した虚烈を見逃さず、諒輔は渾身の一撃をコア目掛けて振るった。
「――パキキキィィンッ!!!」
甲高い音を響かせ、指揮役の虚烈は霧散した。指揮役を失った虚烈たちは、連携を失って散り散りに動き始めた。そこへ教官部隊と第3小隊が挟撃を仕掛け、残敵を確実に掃討していく。
「第3小隊、指揮役虚烈と周辺虚烈の掃討並びに、中等部学生の避難完了しました。逃げ遅れた者、けが人はゼロです。」
「報告ご苦労!いやー君たちなら無事にやってくれると信じていたよ。」
「軽すぎ・・・まっ瀬戸先生らしいか。」
「うん!これなら文句なしで実技試験合格です。」
「うっしゃ!」
「あーそれと、他の小隊も夏休み中の実習行くけど、君たち第3小隊は逆オファー来ていてね。そこに行ってもらうよ。詳細は後でね。」
「逆オファー!?先生それって今まであったんですか?」
「無いよ、君たちが初めて。とりあえず、後始末してホームルームしよっか。」
「わかりました!」
――後始末後の教室。
「ああー、俺たちだけ試験内容が変更されるとは・・・」
「まぁまぁ、瀬戸先生からは合格と言われているし、実戦経験積めたから結果オーライでしょ!」
「それなー、あと気になること言ってたけどこの後言われるのかな。」
「そうだろうね。この後は各小隊ごとに夏休み期間中の実習先が発表されるわけだし。」
「はーい、みんなお疲れさま!えー実技試験だけど、文句なしで全小隊合格です。優秀過ぎて言葉が出ません。」
「うっしゃあ!」
「で、試験後で疲れているだろうけど、来週からの夏休み企業実習先を発表していきますよ。」
「第1小隊:中富防衛(株)、第2小隊:大和装備(株)、第3小隊:天城重工(株)、第4小隊:大峰技術(株)、第5小隊:御崎エンジニアリング(株)、第6小隊:霧島重工(株)だ。」
一通り発表され、教室中が騒めきだした。
「天城重工・・・!?俺たち天城重工に実習行けるんですか!」
「そうだよ。天城重工が本校の学生を受け入れるのは、これが初めてだ。天城重工は、国内最大の民間防衛・装備開発企業だ。その防衛技術開発本部が君たち第3小隊を名指しで希望している。夏を満喫するとともに、一回り成長した姿で、会えることを楽しみにしているよ。」
「はい!」第3小隊の7人は、そろって返事をした。
「じゃあ、これでホームルームを終了します。先生たちも学園防衛と時々実習を見学行くからね。」
「天城重工・・・」
国内最大の民間防衛・装備開発企業。その防衛技術開発本部が、自分たち第3小隊を名指しで招いている。
(今の僕たちに、何を期待しているんだろう)
期末試験を超えた第3小隊を待つのは、初めての企業実習。
学園の外に広がる新しい世界で、僕たちはまた一つ強くなる。
お読みいただきありがとうございます!
次回もどうぞお楽しみに!




