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5話:実技演習と絆の深化

3限目までの座学が終り、昼休み。

学園カフェテリアの一角。第3小隊が集まる円形テーブルの上は、それぞれの個性がそのまま皿の上に現れていた。

隆利の前には日本昔話も驚く超特大マンガ盛り白米と唐揚げの山。恭平は彩り美しいハーブチキンプレートを優雅につつき、冥は栄養補助ゼリーを片手に静かにスマホを弄っている。


そんな男子たちのテーブルに、ふわりと甘い出汁の香りが漂った。

「諒輔くん、これ・・・私の実家特製の卵焼きなんだけど、よかったら食べてみて?」

隣に座る真澄が、パステルカラーの二段重お弁当箱をパカッと開いた。

色とりどりの野菜に、丁寧に巻かれた黄金色の卵焼き。彩り豊かな女子力満点の手作り弁当に諒輔が見惚れていると、真澄は無防備な距離感のまま、腕がぴったり触れ合う距離まで身体を寄せてくる。

制服越しでも伝わる柔らかな感触と、女の子特有の甘いシャンプーの香りに諒輔の心拍数が一気に跳ね上がった。


「はい、あーん・・・」

「えっ、あ、ちょっ、佐竹さん!?自分で箸持てるか――」

真っ赤になって後退りしようとした諒輔の目の前で、真澄の箸が差し出された――その瞬間。

「――いただきっ!」

横から勢いよく伸びてきたフォークが、黄金色の卵焼きをひょいっと空中で掻っ攫った。

そのまま、向かいの席で大盛りスタミナカルビ丼をガツガツ食べていた速水 燈の小さな口の中へ、ぱくっと吸い込まれていく。

「もぐもぐ……ん!あまじょっぱくて超ウマい!さすが真澄、嫁力高すぎ!」

「あ、あれぇっ!?あ、燈ちゃんっ!?」

真澄が目を丸くして箸を止める。

口いっぱいに卵焼きを頬張った燈は、八重歯を覗かせてニヒッと豪快に笑った。

「戦士のガソリン補給完了!諒輔が照れてモタモタしてるから横取りされちゃうんだぞ〜?」

「もう〜!燈ちゃんったら、諒輔くんに食べてほしかったのにぃ・・・」

「はは、ナイスだ燈。諒輔の精神装甲がゼロになって爆発するところだったよ」

恭平が紅茶を片手に肩を揺らし、冥もスマホから視線を上げずに「……敵の前で隙を見せるのが悪い」とぼそりと呟く。

「ふぅ・・・命拾いした・・・」

胸を撫で下ろす諒輔に、唐揚げを平らげた隆利が腕を組み、ニヤリと口角を上げた。

「おいおい諒輔、何を他所他所しい呼び方をしてるんだ。『佐竹さん』だと?ここは背中を預け合う小隊のテーブルだぞ」

「え?」

「そうだよ諒輔!午後から実技演習だっていうのに、そんな他人行儀な呼び方してたら連携なんて取れるわけないじゃん!あたしのことは『燈』でいいし!」

燈が自分の胸をドンと叩き、飛鳥も「フン、私を呼ぶ時も『飛鳥』で構わないわ」と腕を組んでそっぽを向く。

「ほらほら、諒輔くん!私のことも、ちゃんと『真澄』って呼んで?ねっ?」

真澄が上目遣いで、さらにぎゅっと腕を押し付けながら顔を覗き込んでくる。逃げ場のないゼロ距離攻撃に、諒輔はついに観念して両手を挙げた。

「わ、わかったよ!よろしく頼むよ、みんなっ!」

「おう!いい返事だ!」

隆利が満足そうに頷き、湯呑みのお茶を飲み干して立ち上がった。

「腹も満ちた、腹割りも済んだ。――行くぞ第3小隊、第4訓練ドームへ!」


「はいはい、皆さん。お昼明けで眠いだろうけど、実技訓練を開始しますよ。」

瀬戸先生の元気な声が聞こえてきた。

「じゃあ、まずは第3小隊、お手本をみんなの前で披露してくれ。ああ、鶴城くんは小隊編成での実践がないからまずは6人でよろしく。」

「「「「「「はい!」」」」」」

6人の揃った返事がドームに響き渡る。


隆利が前衛として巌のバレットアーツで大盾を構え、少し下がった両翼に機動力に優れた恭平と飛鳥が並ぶ。

中衛には真澄の輝属性の光球を纏ったようなナックルのバレットアーツを構え広域支援。

後衛に黒く光る爪が付いたナックルクローの冥のデバフと、まるでジェットエンジンが付いている様なメガナックルの燈の瞬間火力。布陣は完璧だった。


構え終わったと同時に、模擬仮想虚烈(リフター)が出現し、いきなり攻撃を放ってきた。

「しゃあ!俺の大盾で攻撃を防ぐぞ!」

隆利の強靭な体幹を使い、仁王立ちで敵の突進を封殺する。

「はーい、広域支援するよ。」

光球がぱぁっと光始め、瞬時に全員に防御障壁を展開。

「ほーい、動きとめるから恭平よろー。」

冥から影がシュルシュルと伸び、敵を縛り上げた。恭平が碧と翠を纏わせたダガーで音速の2連撃を叩きこんだ。

「OK!撃破確認!ラスト!飛鳥、燈頼んだ!」

「任せろ!」紫電を纏わせた棘の拳を叩き込み、敵のバランスを崩す。そこに、燈のメガナックルから焔を噴出し一気に距離を詰める。

推進力に使った焔を逆噴射し拳に纏わせた。「はぁあああ!」

「パキンッ」と乾いた音が響きコア破壊の文字が浮かんできた。


彼らの連携は圧巻の一言に尽きた。

普通6人もいれば、お互いの意思疎通で声を張り上げたり、ミスも増えるが、第3小隊は意思疎通ロスが極小だった。

クラスメイト達も圧倒されており、諒輔は完成度の高い連携のチームに入ることが嬉しくもあり、ついていけるか不安だった。

「はーい。第3小隊実演ありがとう。では、各小隊に分かれて、指定された先生のもとに移動してください。本格的な小隊訓練を進めて行きますよ。第三小隊はここで私と・・・ね。」


「よし、諒輔を入れた7人陣形を組むぞ!」隆利から陣形の話が上がった。

「隆利、あんたこの前陣形考えてた時、脳が熱暴走していたよね。あんただけじゃまた暴走ね。」飛鳥が笑っていた。

「んーそうなんだよな。諒輔の得意なことって、歴史授業で見せてくれた装甲貫通と混色ってのでいいのか?」

「ああ、混色についてはまだ詳しくはないが、その属性を吸収すると吸収した属性の特徴が顕現する。飛鳥の轟属性は籠手に雷を纏い籠手に棘が生えていた。逆に恭平の属性は籠手が全体的に軽くなり、身体能力がかなり向上していたよ。」

「ってことはだ、俺の巌を吸収すると、前衛の盾となれるのが2枚編成できる感じか!」

「そうだと思う。」

「じゃあ、まずは俺の属性を吸収して俺の大盾と巌の特性を持った籠手で撃破を目標するか。」

「ああ、わかった。それと皆ちょっと聞いてほしいことがあって。」

諒輔から小隊メンバーに歴史授業中のことを伝えた。


「零の覚醒者?属性の王?どれも聞いたことがないな。しかも、俺らと絆を深めて属性の共鳴って興味があるな。」

「恭平の属性を吸収するとき、ちょっと違和感があってさ、絆を深めた共鳴は吸収ではなく、属性を預かるっていうか精霊との意思疎通の入り口なのかも。」

「ほうほう。つまりどういうことなんだ?わかるように教えてくれ。」急激な話で隆利はオーバーヒート気味だった。

「つまり、僕は絆を深めた相手とは守護精霊の属性を扱える入口を開けるようになるってこと。それと、絆の深化で、属性の強化が可能になるんじゃないかな。」

「なんだそれ!俺らどれだけでも強くなれるってことか!じゃあ、今日の訓練は俺と試してみようぜ。」

「ああ、やってみよう。」

隆利がアームシールドを、諒輔も呼応するかのように籠手を出し「ガキンッ!」と拳をぶつけ合わせた。

二人の間には巌の琥珀色の波動が渦を描き、諒輔の籠手に流れ込んできた。

(お・・・重い!まるで巨大な山を背負っているみたいな密度だ・・・!)

だけど、不思議と息苦しさや身体能力が落ちることもなかった。

隆利の「仲間を守りたい」という、愚直だが、温かみが波動を通じて伝わってきた。

『あら、この子とは絆ができているじゃない。クロマティカ巌の守護精霊ロシェが力の開放を許可します。』

精霊の声が聞こえ、隆利との共鳴がより一層加速した。

「共鳴――完了。」

諒輔の籠手は鈍く光る琥珀色になり、鉱石のような質感へと変質していた。


「すげぇな!俺の巌を完全に自分のものにできているじゃねえか。」

「精霊たちが隆利と絆を結べていると認めてくれたんだ。力が開放されていて、ここまで引き出せたんだ。ありがとう隆利!」

「よせよ!俺たちもう親友って言っても過言じゃないだろ?」

隆利はちょっと照れ臭かった。


「よし!瀬戸先生、準備完了しました。さっきの模擬虚烈(リフター)より装甲が厚い重装甲虚烈(リフター)を出してください。」

「いい気迫だね。――仮想虚烈(リフター)装甲ヘヴィタイプ起動!」

瀬戸先生が端末を操作するとドーム中心地の床が開き、全身が巌属性で覆われた虚烈(リフター)が現れた。

「ああ、そうだ。今回は特別に学園長に許可貰って第3小隊だけ装甲値が通常種の約4倍を誇る虚烈(リフター)だよ。頑張ってね。」

そういい終わると、巨大な丸太のような腕を振り下ろしてきた。

「行くぞ諒輔!俺たちの連携を見せようぜ!」


隆利が大盾を地面に突き立て、真澄の輝の支援を受けた瞬間、ドオォォン!と地鳴りのような轟音が響き渡った。

真正面から重装甲虚烈(リフター)の打撃を受けたが、数センチ後退しただけだった。

「今だ、諒輔!俺を踏み台にして跳べ!」

「任せろ!」


諒輔は、隆利の鍛えられた強靭な背中を蹴り上げ、敵の真上まで上がった。

籠手に込められた巌と諒輔自身の零を混色した。

「俺たちの、力を叩き込む!」

「パキィィンッ――!」

巌の頑強さと零の貫通力を合わせた、まるでショットガンのように表面の巌の装甲にクレーターの跡を作り、虚烈(リフター)の深い位置にあるコアを破壊した。

コアを破壊された仮想虚烈(リフター)は光の粒子となり霧散する。


「うそ・・・一撃で!?」

着地した諒輔に、飛鳥は目を丸くして驚愕。燈は「すっごーい!両壁がそのまま大火力になってんじゃん!」と歓喜の声を上げた。

「どうよ、俺たちの新たな連携は!」

隆利が嬉しそうに諒輔の元へ駆け寄り、背中をバシッと豪快に叩いた。

「見てましたよ、装甲4倍の装甲にクレーターをつけるってすごい破壊力でしたね。」

瀬戸先生が褒めてくれた。

「先生!俺たち最高の相棒に成れそうだ!これなら、どんな敵がきても――」


その時だった。

ウゥゥゥゥゥ――ッ!!

耳を劈くようにけたたましいサイレンが、ドーム全域引いては学園中に鳴り響き渡った。

『緊急警報・緊急警報 工業指定港湾エリアに、観測史上最大規模巨大断裂(リフト)が出現。大量の虚烈(リフター)が工業エリアの住民及び工場作業員が襲撃する恐れあり。高等部全小隊に出撃命令が下されました――』


「・・・・・・っ!」

先ほどまでの賑やかな訓練の空気が一瞬で凍り付き張り詰めた。

瀬戸先生の目が鋭い眼光に代わり、教官用のバイザーを下ろし第3小隊に向かった。

「訓練はここまでです。私たち教職員部隊も後程合流します。第3小隊小隊長は切れ者の橘さんにお任せします。火急の連絡があれば特殊回線で私まで連絡してください。」

「了解!」

「では、実践装備のまま訓練場から最も近い第3トランスポーターまで急ぎなさい。・・・あなたたち7人の初陣ですよ。」

「「「了解!」」」

第5話までお読みいただき、本当にありがとうございます!

次回の第6話から、いよいよ第3小隊7人での初陣――激動の防衛戦が開幕します!

「応援したい!」「初陣が楽しみ!」と思っていただけましたら、

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