4話:零の覚醒者と属性を束ねる王
翌朝、実家と違うなれないベッドで早くに目が覚めた。カーテンの隙間からは徐々に明るくなる太陽光が注がれていた。
時刻は4時半。隆利たちを起こさない様に、諒輔は実家から持ち込んだトレーニングウェアに袖を通し、12歳の測定会のあとから始めた日課の早朝ランニングに出かけた。
「サム・・・。」5月の終わり初夏を迎えようとしているが、早朝はまだ寒かった。
寮から出ると、3人の夜間寮母さんたちが寮前の清掃をしていた。
「おはようございます。」諒輔は周りの迷惑にならない程度の声量で挨拶をした。
「おはよう。あら、あなたは昨日から来た鶴城君ね。昨日の夜話題になっていたわよ。私たちのご飯をおいしそうに食べてくれるって。」
「僕たち寮生にご飯を作ってくださりありがとうございます。大変おいしかったです。」
「あらあら、嬉しいこと言ってくれるね。それにしてもこんな早くどうしたの?」
「転校してきたばかりでベッドに慣れないのもあるんですが、日課の早朝ランニングです。」
「それは、いい心がけね。」
「ありがとうございます。では20Kmほど走りこんできます。」
「にじゅ・・・キロ?あなた、それどれぐらいで走るの?」
「そうですね。前は、1時間ほどかかっていたんですが、バレットアーツが覚醒してから身体能力が伸びたのか、だいたい45分ほどですかね?」
「ええっ!?すごいわね。頑張ってね。朝ごはんは6時には食べれるからいらっしゃいね。」
「ありがとうございます。行ってきます。」
他愛もない話を楽しみつつ、早朝の冷えた空気を切り裂きながら走り出した。
走り終わると、時刻は5時半。寮構内はまだ慣れず時間がかかってしまった。
部屋に戻ると、隆利が諒輔を探していた。
「ああー!諒輔いたー!お前どこ行ってたんだよ。俺らの空気になれず、どっか行っちゃたのかと心配したんだぞ!」
「すまん。日課の早朝ランニングに行ってて。」
「そっか、次からは俺たちも誘えよ。」
起きてきた恭平が声をかけてくれた。
「よし、じゃあ朝飯行こうぜ!」
隆利に心配代と言われ、朝っぱらから茶碗に山盛りにご飯が積まれたのを、諒輔は掻き込んだ。
時刻は8時、クロマ学園は全寮制のこともあり、授業開始も早かった。
「はいはい。みんな座って。瀬戸先生の楽しい歴史学の時間だぞ。今日はリフターが何故出現し始めたのか、どうして属性相性があるのかの座学を進めて行きます。みんな楽しみにしている、実技訓練は4限目から6限目だからな。」
「じゃあ、陣内くん、リフターの出現し始めたといわれる理由と、属性相性を答えてくれ。」
「俺かよ!まあええか。リフターの出現理由は、リフターが生息しているといわれる地球外界世界の資源不足が原因で、この地球から人的リソース資源を回収していくことが理由と言われています。そして、リフターとの相性は、リフターの中心にあるコアの色と僕たちが操る属性が合致すると倒すことが可能と言われています。」
「ちょっと雑だけど、まあいいか。そうだ、リフターは地球外界世界の生産能力を補うための、人的リソースを確保するためにこの地球の人間を倒し自分たちのリソースにするためと言われている。これは、調査団がリフターが現れる際に開けるリフトに潜入して確認した事実だ。」
「その事実から人々を守るため、僕たちバレットアーツ覚醒者はリフター達に対抗する術を探り、属性とコアの色が合致するリフターが倒せることが救いの道となった。まあ、このクラスには鶴城くんって例外が爆誕したけどね。」
「じゃあ、実技行く前に歴史学で少しだけこのコア破壊しても自動修復される再起ミニバルーンで、例外である鶴城くんの能力を見せてくれるかい?」
「は、はい。」
諒輔は、零属性を拳に込め無色透明な籠手を出した。
周りの反応はやはり見えていないのか、「なんか、空間が歪んで見える」って声が多かった。
「鶴城くんは覚醒時どの色のコアを破壊したんだっけ?」
「覚醒時は紅色のコアでした。」
「じゃあ、今日は属性相性が良くても性質上破壊が難しいと言われる、輝色のコア破壊をしてみようか。」
その掛け声を機に、籠手に零属性を纏わせた。
「行きます。」その一言をいい、バルーンに向かって拳を振るった。
籠手はバルーンを突き抜け、中心にあるコアを直接叩き、「パキンッ!」と甲高い音を教室に鳴らし、バルーンがさく裂した。
「おいおい、零ってのは装甲を貫通できるのか?」
「ひゅ~。素晴らしいね。やっぱり君は僕の興味をそそる。」
隆利が驚き、恭平が目を輝かせた。
「おお、私も特務機関の資料で知っていたが、素晴らしいね。」
「あのー先生。」諒輔が申し訳なさそうに呼びかける。
「どうした、鶴城君。」
「これ、零はこれしかできない能力だと思っていたのですが、昨日放課後のトレーニングで、特務機関も知らない現象が発現しているんです。」
「ほう、その現象再現できるかな?」
「わかりません。ただ、再現可能性があるとしたら、僕を仲間と認めてくれている第3小隊の男子達かと。」
「なるほどね。じゃあ、橘くん、鶴城くんの助けをしてくれるかな?」
「やったぜ。またあれが見れるのか。」恭平は快諾してくれた。
「じゃあ、バレットアーツ展開してくれるか?」
「任せな。どっちの属性がいい?」
「両方。」
「まじか、いいぜ。出力どちらも60%で行くぜ。」
属性を調和させずにどちらの属性も60%で出力してバレットアーツに纏わせた。
「よしいいぞ。」
諒輔は無色の籠手を恭平のバレットアーツに向けた。
技名は昨夜考えていた。「ミックスレス」そう唱えた時、恭平の両方のバレットアーツから属性を吸収した。
「おいおい、昨日の今日で任意発動できるようになったのか?すげえな。」
恭平が驚く中で、徐々に諒輔が展開しているバレットアーツが氷青と翠を吸収して、籠手を彩っていく。
「ほほぉ!これはすごい。空間が歪んでいるように見えていた部分に色が付き、君のバレットアーツがはっきりと見えるじゃないか。」
その時、諒輔にささやき声のようなのが聞こえた。
『・・・あなたが、零の覚醒者ですね。七彩の属性を束ねる王の誕生・・・なんて喜ばしいことでしょう。』
「零の覚醒者・・・?王・・・?」
『ええ、あなたは王。すべての属性を調和させ、導く器。我らは七彩の守護精霊【クロマティカ】』
その時、諒輔のバレットアーツが共鳴するかのように、眩い光の粒を放った。
視界の端に、紅色、氷青色、翠緑色、紫電色、琥珀色、白銀色、深紫色――7つの色彩を宿した小さな光の精霊たちが祝福するかのように、舞い踊っていた。
「君たちは・・・?」
『我らは、王の導き手。・・・ですが、あなたの器はまだ開き始めたばかりの未完の器。真なる力を引き出したくば仲間と魂の絆を紡ぎ、深化させ我ら守護精霊と共に深く共鳴させなさい――』
その言葉を最後に、七色の淡く光る粒となり空間に溶け込むかのように消え去った。
諒輔のバレットアーツから吸収した属性が抜け、静まり返っていた教室の騒めきが耳に戻ってきた。
「いやはや・・・驚いたな。鶴城くん、君の可能性は底が見えないね。――よし、4限からの実技訓練がますます楽しみになったな!僕以外の先生たちをその力で驚愕する様が楽しみだよ。」
瀬戸先生の楽しく弾んだ声と、興奮冷めやらないクラスメイト達の視線。
僕は属性を束ねる王・・・実感はないが、重大な宿命と仲間たちとの温もりを胸に、諒輔たちは午後から始まる第3小隊の実践演習へと歩みを進めるのだった。
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