2話:交錯する色彩
諒輔は調査が終わり、転校の準備をするために一旦自宅へ戻った。
奥から、どたどたと足音が聞こえてきた。
「やっと帰ってきた!おかえり、諒輔」暖かくそれでいて心配交じりの声が聞こえた。
「ただいま」と言ったそばから母親に抱き付かれた。
「かあさん、苦しいよ。」
「特務機関から連絡あってから気が気じゃなかったのよ。」
「心配かけたね。ごめんよ。そうだ、特務機関から伝えられていると思うけど、俺クロマ学園に転校することになったよ。」
そう告げると、諒輔を抱きしめていた腕が力なく離れた。
「そう・・・やっぱり行くのね。」
どこかさみし気であったが、覚悟が決まった目をしていた。
「しょうがない子ね。やっぱり芯が強いあの人譲りね。出発は明日なの?」
「うん。」
「じゃあ、今日はたぁーんとあなたの好きなおかずを作るね。」
「ありがとう、かあさん。」
その日は家族水入らずのゆったりとした時間が流れた。
翌朝。
「じゃあ、かあさん、俺頑張ってくるよ。もう心配ばかりかけないよう強く1人前の男になるよ。」
「うん、気を付けてね。無理はしないでね。」
諒輔の中でも覚悟が決まった。
実家を出ると送迎の車が止まっていた。
乗り込むと、専用路線を使いものの10分で見上げるほど大きな防壁に囲われた近未来の技術が詰まった広大な敷地を持った巨大なキャンパスが眼前に広がった。
車から降り、敷地内にいるすれ違う生徒たちから放たれる洗練されたオーラをまとっていた。
車から降りる際に渡された専用端末に、案内図がでておりその案内に従い、職員室へ向かった。
「失礼します。」元気よく職員室の戸を開けた。
「やあ!君が転校してきた鶴城くんだね。初めまして僕は瀬戸 茂。高等部2年A組の担任だ。担当教科はバレットアーツの歴史学と属性科では巌を担当しているよ。」
「はいこれ、君の制服。調査官が測定しているからサイズはぴったりだと思うよ。」
手渡された制服は、全国の中高生が着たい制服No1のクロマ学園の制服だった。
深みのあるミッドナイトネイビーを基調とした、細身で仕立ての美しいスタイリッシュなブレザー。 襟元や袖口には、光の角度によって七色に微かに偏光する極細の『波動伝導繊維』が走り、左胸にはプラチナシルバーで七彩の光条とバレットを象った学園章が誇らしげに輝いている。
さらに左襟には、生徒の体内の波動と共鳴して属性色に染まる『属性コアピン』が埋め込まれており、諒輔のピンだけは水晶のように透き通った無色透明の光を宿していた。 フォーマルな学生らしさと近未来の機能美が見事に融合しており、全国の中高生が憧れるのも頷ける圧倒的なカッコよさだった。
「ささ、君が制服を着たところを早く見たいから、保健室で着替えてきな!」
保健室の鏡の前で支給された制服のネクタイをきゅっと締め新しいクラスの扉前までやってきた。
「はーい、ではホームルームを始めます。まず初めに皆さんの新しい仲間をご紹介しますよ。ささ入ってきて。」
シューンと扉が開き、教室内に入っていった。「鶴城 諒輔です。転校してきたばかりで右も左もわからない状態ですが、仲良くしてください。」
拍手と男子達からの「属性はなんだー」とヤジが飛んできた。
「はいはい、静かに。鶴城くんは歴史学で行った英雄でも発現しなかった仮称零属性のバレットアーツ持ちです。そのためまだまだ分かっていないこともあるので、変なことしない様に。」
クラスメイト達は、零属性と聞いた途端騒めきだし、諒輔には驚きと疑念・懐疑の目を向けられた。
「それと、鶴城くんは第3小隊に加入していただきます。」
「はぁーい」と可愛らしい声が届いた。
教室奥側に6人のまとまっているところがあった。
「鶴城くん、だよね?私は佐竹 真澄だよ。よろしくね!。」
まるで天使のような笑顔から出てくる、おっとりとした声に諒輔は一瞬でドキッ!と跳ね心を奪われた。
「よぉ転校生!俺は陣内 隆利だ。よろしく!」
ガシッ!と強く握手しを交わした。
「橘 恭平だ。俺のデュアル属性の話題を悠々と持っていく無色って俄然興味あるね。」
冷静ながらも、知的なほほえみを見せられた。
「影山 冥・・・よろしく。」
机に突っ伏したまま手だけ上げてひらひらと手を振ってきた。
「皇 飛鳥だ。本当に無色の波動で戦えるのか?後でトレーニングルームで見極めさせてもらう!」
ストイックな眼差しに少し、驚いた。
「あーしは、速水 燈だよ。りょうちんって呼んでいい?」
親しみやすそうな元気な挨拶が飛んできた。
「はいはい、自己紹介はその辺にしておいて、ホームルーム後はすぐ授業だよ。」
初日は緊張もあったのか、授業はあっという間に流れて行った。
「よし、諒輔!荷物取りに行って寮案内してやるよ!お前、俺たちと同じ男子部屋だからな!」
教室から歩いて10分のところに寮があった。「ここが、俺たちの部屋だ。奥のベッドが諒輔のだ。」
4人部屋にしては、大きなベッドと十二分に勉強ができる机、ルームメイトと談笑できる共有の机まである豪華仕様。
隆利はベッド近くに荷物をドサッと置き、学園支給のトレーニングウェアに着替え始めた。
「よし!片付けは冥も恭平も来たらするとして、さっそくお前のバレットアーツ見せてくれよ!トレーニングルーム行こうぜ!」といい引っ張られた。
近未来的な巨大訓練ドームには防御結界が張られ、如何にもバレットアーツを使うことを前提とした広間が眼前に広がった。
恭平はすでにストレッチして準備万端だった。「よっ!待ってたよ、諒輔。君の零属性データだけではなく直接見たくてね。」そういいつつ知的にほほ笑む。
「がんばってー。僕は隅で見学させてもらうよ。」冥が気だるげそうな声を発しながら手を振っていた。
「じゃあ、まずは俺から。俺は琥珀色の通り、巌属性。バレットアーツの形状は、防御モードの大盾と攻撃モードのアームシールドの2形態だ。」
隆利は自慢げに形状披露した。
「俺は、自己紹介でも言ったが、デュアル属性だ。右拳は氷青色の碧属性、左拳は翠色の翠属性の二刀流だ。バレットアーツ形状は、スピード特化のナックルダガーの双剣だ。」
恭平のは氷青と翠の綺麗なグラデーションが混じった、バレットアーツを披露してくれた。
負けじと諒輔もバレットアーツを展開。
「俺は、透明な零属性。バレットアーツ形状は打撃特化の籠手だ。」
「ほー、これが零。確かに何かをまとっている感じだな。」
諒輔にははっきりと形まで見えるが、他の人からは、透明な何かをまとっているように見えるそうだ。
バァァン!とトレーニングルームの扉が明き、すらっと長い手足に服の隙間から鍛えられた腹筋がちらりと覗かせながら、皇 飛鳥が颯爽と現れた。
「――おいおい、男子だけで属性確認とは。私も仲間に入れろ。属性確認と言えば実践だろ。」
教室での宣言通り、バチバチッ!とまるで電気が走るような紫電の輝きを見せ、刺突に特化した棘の拳が形成された。「これが飛鳥のバレットアーツか。」
「手合わせ願おうか、諒輔。お前の零の無色、とくと見極めさせてもらう!」
次の瞬間、刺突に合わせた諒輔の籠手が棘とぶつかり「ガキーンッ!」とトレーニングルームに響く。
その時、飛鳥のバレットアーツから放たれる属性の色が薄くなっていき、ついには飛鳥のバレットアーツまでが解除された。
諒輔のバレットアーツが色を持ちバチバチッとまるで飛鳥の紫電のような音を鳴らしながら透明だった籠手が姿を現した。
「なっ!私の轟を・・・吸収したってのか!?」
「ほぉ!実に興味深い現象が発動したね。他の属性と反発するどころか吸収するなんて。」
知的好奇心に駆られた恭平が諒輔に歩み寄った。
「えっ、あっあれ?俺はいったい、今何をしたんだ。」
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