1話:存在証明
――パキンッ、と。
快晴だった東京の空にガラスが割れるような不吉な音と共に大きな亀裂が走った。
「――おいおい、まじか、嘘だろ!?」
下校途中の商店街。買い食いのクレープを手に笑っていた人々の表情が一瞬にして曇り凍り付いた。
頭上数百メートル。天を割り広がった断裂からぬらりと黒光りする巨大な甲殻を持った異形の怪物【虚烈】が這いずり出てきた。
街に響き渡るけたたましい避難警報。
逃げ惑う群衆の足音と、怒号。
「おい、早く逃げろ!今すぐ!早く!!」
鶴城 諒輔は、喉が裂けんばかりに叫びながら、逃げ遅れた人々を誘導していた。
自分には力がないことは痛いほどわかっている。
4年前の12歳の『バレットアーツ測定』
同級生たちは、鮮やかな紅の焔や、紫電に輝く轟をその身に宿しエリートへの切符を掴んでいく中、諒輔の測定器だけは何も光らなかった。
測定結果は聞くまでもなく『無色――適性なし』
向けられた憐れみと嘲笑の視線。「お前は一般人だ」と突き付けられたあの日。
「だけど・・・だからって誰かを見捨てるって理由になんかなるかよ!!!」
「うわあああん! おかあさん……っ!!」
瓦礫の陰で、小さな男の子が泣きじゃくっている。
その頭上へ、リフターの鋭利な前脚が容赦なく振り下ろされようとしていた。
「――させるかあっ!!」体が思考を置き去りにし動き出した。男の子を抱きかかえ、死を覚悟しながらも守るように右拳を突き出した。
死を覚悟した瞬間、右拳に集う「熱くも冷たくもなく空間を掴んでいる様な不可視の波動」が結晶のように拳を覆い、誰も見たことがない透明な籠手があった。
男の子を助けるべく、無我夢中で振るった籠手は「ガンッ!」と硬い甲殻に弾かれるはずだった。 だが――手応えがない。まるで水面をすり抜けるように、透明な拳がリフターの分厚い装甲を透過し、その最奥にある硬質な『核』を直接捉えたのだ。――バキィンッ!!!
ドゴォォン!!と内側からリフターが爆発四散した。
遅れて、対応に来たクロマ学園の教職員たちが、その光景を見て驚愕し、即座に特務機関と連携し諒輔のことを保護・調査を始めた。
バレットアーツが後天的に発現すること自体も珍しいが、決してないわけではなかった。しかし、無色透明のバレットアーツは前代未聞であった。
「30年前に突如として現れた英雄たちは7人7色だった。透明なんて聞いたこともない。」と調査員たちから告げられ、稀有な存在になった。
調査ではバレットアーツを自由に出し、デモバルーンを破壊。
まごうことなき、無色透明なバレットアーツであった。
「・・・信じられん。装甲を無視して内部を破砕したのか? 30年前の英雄たちですら、己の属性に対応した敵しか倒せなかったというのに・・・」 白衣の調査員が息を呑み、息を乱す諒輔を見つめる。 「鶴城諒輔。君は今日限りで一般生徒ではない。・・・国立クロマ・アーツ高等学園へ来てもらう」
前代未聞の零属性覚醒者として、国立クロマ・アーツ高等学園への緊急転校が決まった。
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