13話:小隊が踏み出す小さな一歩
――時刻は、実習2日目の深夜0時を回ったころ。諒輔は寝付けず、社員寮2階広間にあるベランダで夜風を浴びながら物思いに更けていた。
「あの場での、行動は最適だったのだろうか・・・いや、属性がなくても動けなかったのだろうか・・・」
学園での訓練や、周防地区での防衛戦で自分たちは天狗になっていたんだと、今日改めて実感した。
「あれ?諒輔じゃないか。お前も眠れないのか?」
「恭平!もう、大丈夫なのか?」
「大丈夫かどうかと聞かれると、正直すごくしんどい。でも、不思議と伊佐木さんに言われた『泥臭く、誰よりも強くなるしかない』って言葉でなんだか救われた気がするんだ。」
「そっか、僕はまだ目の前で起こったことの事実を、受け止め切れていないんだ。」
「・・・俺だって同じだよ。今でも、顔に付着した血の熱さと、匂いが残っている気がする。」恭平は震える自身の掌を見つめ、自嘲気味に息を吐いた。
「ただ・・・昼間、福島さんに抱きしめられて泣いたとき、思ったんだよ。今まで、完璧な小隊長にならないとって背伸びしすぎていたんだなーって。」
「恭平・・・」
「諒輔。俺は、これからもきっと迷うし、情けないところも見せると思う。・・・だから、俺の背中を支えてくれ。お前やみんなの力を貸してほしい。」
頼りなさそうな声で発したその言葉だったが、恭平の瞳は真っ直ぐ先を見通していた。そんな言葉に呼応するように、諒輔は頷いた。
「当たり前だろ。こんな僕でも、君たちが支えてくれたから今一緒にいられるんじゃないか。恭平だけを支えないなんて、ありえないよ。」
夜風の中、2人は小さく拳を合わせる。
「――かっこよくなくていいから、明日から泥臭く行こう。2度と、あんな思いをしない、させないために・・・強く。」
「ああ、誰よりも強くなろう。」
その後は、各々の部屋に戻り床についた。
――朝5時。諒輔が起き、トレーニングルームに向かいトレッドミルで日課のジョギングをしようと準備をしていた。
「おっ、鶴城じゃねえか。おはよう。早いんだな。」
「福島さん!おはようございます。」
「トレッドミルか、それ設定気をつけな。最高速度時速25Kmだからな。」
「そうなんですか。多分最高速で大丈夫です。」
「ん?普段どれぐらいのペースで走るんだ?」
「普段は、学園構内20Kmを45分程度で走り切ります。」
「時速26Km強!?・・・お前それ、ジョギングじゃなくてスプリントの巡航速度だぞ。あー、技術屋にトレッドミルのリミッター解除と改造依頼出しておくわ。」
呆れ顔の福島をよそに、諒輔は最高速で唸りを上げるマシンの上で、涼しそうな顔で足を動かし始めていた。
――午前8時。訓練場に第3小隊はさまざまな顔色で集合していた。恭平と諒輔は互いに言葉を交わしたぶんだけ、わずかに落ち着きを取り戻していた。隆利、冥と飛鳥は力量不足を実感して悔しそうな顔。真澄と燈は、暗くまだ立ち直れていない顔をしていた。
「おはよう、諸君。辛気臭い顔をしているね。」朝稽古終わりなのか、汗を垂らしながら伊佐木がやってきた。
「おはようございます。」第3小隊は、大小入り混じった挨拶を返した。
「まあ、昨日のは学生にはきついですよ、リーダー。」
「そうだな、すまない。さて、気を取り直して本日はスクランブル出動が発生しても、我らは非番となった。理由は、午後からの指導時に伝える。」
「玲さん、俺もう入ってもいいよね?」あっけらかんとした、男性の声が聞こえてきた。
「ああ、いいぞ。紹介する。こいつはうちのチームの切込み隊長だ。」
「ども、切り込み隊長を任されている、大城 遊星だ。轟属性持ち、国家公認の轟属性スペシャリテに選ばれています。」
各属性に5人しか選ばれないスペシャリテが指導役と聞き、飛鳥の目つきが変わった。
「大城さんって、当時17歳の最年少でスペシャリテに選ばれた人ですか?」
「おっ!君、俺のこと知ってるの?」
「はい、私も轟属性持ちで、大城さんの優れた属性コントロールと変幻自在さに、憧れて日々努力してきました。」
「そっか、そっか。俺に憧れるなんて、ありがとな!」
「ちょちょ、ゆーせい!何先走ってスペシャリテ名乗ってんのさ!」頬を膨らませた、青葉が大城に詰め寄っていた。
「あれ?もしかして、どこか言うタイミング見計らってた?」
「当たり前でしょ!彼らの負担になるでしょうが!!」
「すまん、この際バラしちまおうぜ!」
「はぁ~、どうしようもない男だこと・・・。なんのことか分からなかっただろうけど、私たち第1-B小隊は全員がスペシャリテに選ばれています。」
どおりで、一ノ瀬課長が自慢の若手というわけだ、と諒輔は一人感心していた。
「今日は、ゆーせいが来たから、多対一の模擬戦を私たちとします。そうね、順番はゆーせいを大トリのボスとして・・・陽太からがいいかな。その後は私で。」
「昼からは俺だな。」大城が割って入ってきた。
「そうね、よろしく。」
「順番はこれでいい?玲さん。」
「いいよ。私は3戦を記録して、総評を作るわね。」
「流石、玲さん。頼りになる!」
「じゃあ、陽太最初よろしく!」
――福島は自身のバレットアーツを、自身の腕に沿うような形状の盾を展開させ、2回大きく深呼吸した。2回目の呼吸を吐ききった後、鋭い目つきに変わった。
「それじゃあ、始め!!」青葉からスタートの掛け声が上がった。
始まった瞬間、目の前にいたはずの福島が消えた。体が動いたのは、恭平と、諒輔のみだった。
「隆利!巌分けてくれ!」諒輔は、差し出された隆利の掌から、巌を分けてもらい籠手を琥珀色に染め上げ、上部に向かって拳を振りぬいた。
「ガアァァン!!」堅いもの同士がぶつかったような、鈍い音が訓練場に響き渡った。
「反応できたのは、2人だけか・・・」
「定石通りの動きだったので、反応できました。少しでも迷えば、大きな一撃貰ってましたよ。」
「ほう。昨日のを糧にしたのか。いいぞ!」その言葉を言った後、せめぎ合わせていた諒輔を払いのけるように、福島は諒輔を押し返し腕を振りぬいた。
「1つ、いいことを教える。鶴城は無意識化で出来ているんだが、バレットアーツは自らの気持ちと波動の波が合えば変幻自在に姿を変えられる。例えばこんなかんじでな!」
腕に沿うような盾が、形を変え拳に集中し始めた。拳は、大きな岩の塊がついているような見た目に変容した。
「これができることが、スペシャリテの最小条件だ!さ、俺との訓練は防衛および抑制が課題だ。君たちの勝利条件は俺を抑え込むか、誰一人欠けることなく15分耐えきるかだ!」
「諒輔!防御は隆利とお前で!」
「「任せろ!」」
「俺は飛鳥と燈と共に攻勢に出る!冥は福島さんにデバフ!真澄は攻勢役に、バフを頼む!」
「「「「了解!」」」」
指示と威勢はよかったが、福島からの猛攻で盾は途中で破られ、焦りから単騎で攻撃に出た燈もあっさりと無力化された。
「――15分経過。速水が戦闘不能となった時点で、君たちの敗北だ。お前さんたちは、こんなもんなのか?」
「鶴城、対人戦は難しかったか?」
「いえ、学園でも生徒同士の退陣訓練はあります。ただ、僕たちの技量不足と連携の甘さが原因だと思います。」
「それもあると思うが、もっと言えば属性の出力コントロールが下手過ぎないか?」
「えっ!?」第3小隊全員が声をそろえ驚愕した。
「全員、バレットアーツ展開時にどれぐらい属性を込めているか体感でいいから、教えてくれ。」
恭平はどちらの属性も30%程度、隆利は60%程度、冥は50%程度、飛鳥は45%程度、燈は75%程度、真澄は40%程度、諒輔は15%程度とバラつきが激しかった。
「そうか・・・俺の展開時は5%だ。まずは、鶴城。展開時の出力が15%程度なのは理由があるのか?」
「僕の場合は、籠手をイメージして具現化させるだけなので、最初から属性を多く入れずに展開させています。」
「割と理想的な回答が、出てきたな。じゃあ、速水。君がアーツ展開時に75%も込める理由を教えてくれ。」
「私の場合は、属性そのものを噴出する拳の形状で、展開した直後でもフルスロットルで戦えるようにです。」
「なるほど、焔の推進力と特攻としては理にかなっている。しかし、75%も入れてしまうと、一撃勝負がメインになってしまい、長期戦には向かない。」
福島の指摘はもっともだった。僕たちのチームは、一撃必殺のスタイルが多く短期決戦型のチームだった。
「そういうわけで、次の青葉戦では俺からそれぞれに課題を課す。まず、一番低い鶴城は、凛との戦いで自らの意思で形状変更させ、一撃を入れてみろ。橘、佐竹、皇、影山の4人は出力いい感じだから、目標は25%に抑えること。陣内と速水は50%を目標にしようか。」
「はい!」第3小隊はそろった返事を返した。
「凛、バトンタッチ!」
「はいはーい、さて陽太から課題出たことだし、私との訓練は攻撃をいなす、避ける私に各々が1ヒット入れること!ケガについては気にしないでいいよ。誰の攻撃も食らわないから。陽太始めて!」
「よし、それじゃあ始め!!」
第3小隊は各々に課された出力制限を意識し、バレットアーツの展開を始めた。
「難しいぞ、これ!」隆利が出力に苦戦して、吠えていた。
そんな中、悠々と諒輔はさらに出力を絞り9%、恭平は22%とクリアし、冥に至っては制御をサボっていただけなのか、18%と大幅に目標をクリアしていた。
「今までが如何に、雑に展開していたか嫌でも分かりました。隆利!慣れるまでは、きついぞ!」
「わかってらー!なんかコツとかあるんか?」
「そうだな、内から外に構築しようとすると逃げて行こうとするから、枠を意識して外から内にってイメージすると使う出力が抑えられるぞ。」
「なるほど、防波堤を作るイメージか!そういうの得意だぜ!」
コツを聞いた隆利は、フレーム成形をして内側に盾を作り出していた。出力45%と目標値を5%も上回っていた。
「どんなもんよ!」
そんな中、女子組の真澄と燈は苦労していた。
「どうしても、絞ろうとしても暴れて、多く入れちゃう。」
「そうなんよ。私も結局いつも通りぐらいに、なっちゃうんだ。」
「あらら、まぁ最初からうまくできる子なんて少ないよ。鶴城くんと橘くんが上手なだけ。焦んなくていいよ。」うまくできない女子たちをみて、青葉が励ましていた。
「とりあえず、やる気満々の男子からやろうか。」
「うす!」絶対に、1撃入れると息まきながら4人は返事をしていた。
青葉の碧の制御は、洗練されており流麗に諒輔や恭平の攻撃をいともたやすく、いなしていった。
「青葉さん、やっぱりすげえな。あんな碧の使い方見たこともないよ。」同じ属性を操れる恭平が、感心していた。
碧は、込める波動によって水にも、氷にもなる。青葉の制御は、碧で作ったベールを瞬間的に氷にして堅く防ぐ時もあれば、カーテンの様に幕として使い攻撃を逸らすことを瞬時に1つのベールでやっていた。
「男子達そんなものなの?っと、女子達も準備できたみたいだね。じゃあ、7人同時にかかっておいで!」
諒輔と恭平が猛攻を仕掛けようとしたところへ、真澄がバフを掛けようとしたが出力制御がうまくできず、タイミングがずれ、思わぬタイミングで支援が効いた2人は壁に激突してしまった。激突した2人を見て、焦った燈は出力値を誤り、空回りしていた。
「あらら・・・。んー、玲さん午後には少し早いですが、お昼にしませんか?」
「ああ、いいぞ。この調子じゃ、彼女たちの訓練も身が入らないだろう。よーし、今日は女子と男子に分かれてランチと行こうか。野郎どもは、あっちで肉でも食ってな。」
「ええ!玲さん、男の扱いが雑だ・・・」
男子達は、大城の部屋からバーベキューコンロを持ち出し、豪快に肉を焼き始めていた。
女子組のお昼は、青葉行きつけのおしゃれなカフェにて、伊佐木さんが奢ってくれた。テーブルの上には、彩り豊かなパスタや焼き立てのガレット、湯気の立つ紅茶が運ばれていた。
「まずは、あなたたちのことを苗字ではなく、名前で呼んでもいいかな?」
「玲さんずるーい。私も言おうとしてたのに!」
「ええ、その方がうれしいです。」
「よかった。じゃあ、これからは、真澄ちゃんに、燈ちゃん、飛鳥ちゃんって呼ぶね。」
「はい!」3人は煌びやかな目をしていた。
「さて、本題だけどあなたたちは、人の生き死にを目の当たりにしたのは初めてかな?」伊佐木が踏み込んだ質問をした。
「はい・・・」3人から気落ちした返事だった。
「そっか・・・辛い経験だったね。私たちもね、今のメンバーと違うんだけど3年前に目の前で救えなかった人たちがいたんだよ。その日から1週間は、まともに食事も喉を通らないわ、出動しても空回りするわで大変だったんだから。」
「ちょ、伊佐木さん!私の黒歴史を話さないでくださいよ!」
「あはは!ごめんごめん。まあ、これだけ強い凜ちゃんでも、人の生き死にを目の当たりにしているし、私もね入社して5日目で体験してしまったの。だから、あなたたちが気落ちするのも分かるし、スランプみたいになっちゃうのも分かるよ。」
「それに、あなたたちのチームは、私たちのチームと男女比一緒なのよ。男って生き物はね、馬鹿みたいに意地を張って突っ走るからさ、女の子の私たちが後ろからどっしり支えて、手綱を引いてるぐらいがちょうどいいのさ。」
「それはそうと、飛鳥ちゃん!ゆーせいが憧れの人って言ってたけど、どう憧れだったの?」
その言葉を聞き飛鳥の顔は、耳まで一気に赤く染まった。
「あっ・・・えっと・・・その・・・今の私たちと同じ年にスペシャリテになっているのその努力家なところと、た、単純にかっ・・・」
「かっ?」4人がニマニマしながら飛鳥を見ていた。
「かっこいいからです!」やけくそ気味に飛鳥は言い切った。
「飛鳥ちゃんかーわーいーいー!」青葉が飛鳥を抱きしめていた。
顔を真っ赤にしてじたばたする飛鳥をみて、真澄と燈から思わず「ふふっ」と笑みがこぼれた。
「ほらほら、遊んでないで温かいうちに食べな。食後のフルーツタルトも頼んであるんだから。」
伊佐木に促され、三人はフォークを口に運んだ。優しい味わいと甘い香りが口いっぱいに広がり、強張っていた身体の力がすーっと抜けていく。
(・・・諒輔くんはいつも、誰かの痛みを全部自分で引き受けようとする)昨日の現場でも、崩れ落ちる梁をその身一つで支え、血を流す恭平の背中を静かに支えていた諒輔の背中が、胸を締め付けるように思い出された。
(・・・私、もっと強くならなきゃ。あんな風に、諒輔くんが一人で傷つかなくていいように・・・)
「・・・私が、諒輔くんの光になりたいな・・・」
窓の外に広がる東京湾の青空を見つめながら、誰の耳にも届かないような、祈るような小さな呟きが真澄の唇からこぼれ落ちた。
「ん?真澄ちゃん、今なんか言った?」隣でタルトを頬張っていた燈が不思議そうに首を傾げる。
「ふぇっ!?な、なんでもないよっ!なんでもない!」
慌てて両手を振って赤面する真澄を見て、青葉が「あやしいな〜?」と目を細めて笑った。照れ隠しにフォークを握り直した真澄の瞳には迷いが残っていた。それでも、そこから目をそらさない強さが宿っていた。
「・・・私、午後からの大城先輩との模擬戦、絶対に成功させます。もう二度と、諒輔くんたちを壁に激突させたりしません!」
「あたしも!あいつらの背中、今度こそ支えてやるんだから!」
「よーし、いい顔になったな」
お昼の時間が終り、訓練場中央には大城遊星が腕を胸の前で組み、仁王立ちで不敵に笑っていた。
「おっ!午前中よりいい顔になったじゃん!さあ、昼も食って腹も膨れたことだし・・・コントロールを学んだばかりの雛どもよ、本物のスペシャリテの轟を見せてやるよ。」
大城が掌を上に向け前に腕を突き出すと、背後から紫電を纏った無数の雷槍・雷刃・雷弾が雷鳴と共に出現した。
「バレットアーツの多重展開・・・!?しかも、全部の形が違う!」
「さ、雛ども、俺はここから動かねぇからよ。俺に攻撃を入れて、一歩でも動かせば試験を合格にしてやる。」
次の瞬間、前に出していた手で指を鳴らし、無数の雷槍を第3小隊に向け打ち出した。
「俺の後ろには、攻撃を通さねえぞ!!」
隆利が全員の前に出て、午前中に学んだコントロールを生かし、全員をカバーできる大盾を展開した。コントロール精度も威力も桁違いな攻撃を受け、歯を食いしばりながら守っていた。
「隆利!防ぎ漏れたのは気にするな!俺が弾く!」盾を縫うように避けた雷刃や雷弾は、恭平の碧と翠の合わせ技で弾き、受け流し誰にも当たらない様にしていた。
大城が次弾を装填も進めていると、足元から漆黒の影が足を縛り、胴にまで伸び始めた。
「・・・よそ見している場合ですか?僕もいますよ。」冥の妨害が始まった。
「いいじゃん!いい拘束力だ!」
「じゃあ、おまけでこれもお一つどーぞっ。」伸びた影を霧状にし、大城の目元を覆った。
「うぉ!視覚妨害かやるね。」背後から雷刃を1つ手に取り、霧と足元の拘束を払っていると、全身に紫電を纏わせた飛鳥が突っ込んでいった。
「私は、ずっとあなたに憧れていました。ずっと背中を追ってきました!でも・・・ここであなたに追いついて見せます!」
研ぎ澄まされた紫電の刺突を、視界がぼやけながらもギリギリのところで雷刃で弾く。
「へぇ・・・いい目だ、お嬢さん!」
弾かれた飛鳥の死角から、大城が反撃の雷を放とうとした――そこへ!まるで戦闘機のジェット噴射の様な、焔の噴射音が炸裂した。
燈のバレットアーツは変成し大柄な拳型のアーツが、コンパクトに研ぎ澄まされ、無駄な力みや噴出を抑えた形になっていた。洗練され鋭く、低空を滑空するように飛鳥と大城の間に割り込んだ。
「飛鳥ちゃんには、触らせないよっ!」掌を大城に向け、大城に向かって爆発を繰り出した。
「っ・・・!」爆発の勢いで大城の態勢が崩れた。
そこに後方から、響く澄み渡る真澄の声。
「――届けっ・・・!!」
迷いを振り切った真澄の掌から放たれたのは、午前中とは比べ物にならない、柔らかく、温かく、そして力強い白銀の光が第3小隊のメンバーを包み込む。その光は傷を癒し、疲労を吹き飛ばし、そして――最前線に駆ける諒輔の身体を、完璧なタイミングで包み込み極大な強化が施された。
「温かい・・・」みんなが繋いでくれたチャンスと想いを全身に巡らせた諒輔は、大城の懐へゼロ距離まで迫った。
諒輔は、、纏った籠手を自ら変成させた。午前中に課題形状変化――それは相手を打ち抜くことに特化した、まるでパイルバンカーのような形状だった。
「うおおおおおおおっ!!」諒輔の雄たけびに合わせて、大城は両手に雷刃を握り、二振りの刃で防御の構えを取った。
「――ドゴォォォォン!!」ぶつかった衝撃は、訓練場を揺らし建物全域に響く轟音を鳴らした。
舞い上がる土煙が晴れると、大城は元いた位置から7mほど後退した場所で膝をついていた。
「ははっ!いいね。最高だよお前ら。」膝をついたその場に寝転び、賛辞を送っていた。
諒輔は肩で息をしながら、振り返り徐々に笑顔が増えていく第3小隊を見つめていた。
「あらら、最強のあんたがなんて様よ・・・」伊佐木が手を大城に伸ばし、立ち上がる補助をした。
「うるせ!ハンデあったからな。動けているんならまだまだいけたけどな。あいつら、いい方向に進めたじゃねえか。」
「そうね、あなたのおかげかしらね。」
「玲にそう言われると、むずがゆい・・・」
「失礼な奴!」そういいつつ、肩をすくめていた。
「はい!集合。」伊佐木からの掛け声があり、全員目の前に集まった。
「・・・全員合格!よくやった。」その言葉で、第3小隊は歓声を上げた。
「あなたたちは、きつい現実から目を逸らさず、その先にある小さな一歩を歩みだしたの。これからの成長が楽しみね。」
お読みいただきありがとうございます!
次回もどうぞお楽しみに!




