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第九依頼 理想を求めて 3話

「とりあえず入ってみよっか」


 マミの言葉に水音と桔梗も頷き、全員で扉の向こうまでやって来た。


 そこは古い教室だった。等間隔に並べられた机の上には絵の具や色鉛筆、紙が置かれている。紙は絵の具で色が塗られているようで、赤や青など様々な色の紙があった。

 地面は清掃されているのか埃やゴミは落ちていない。だが、絵の具の汚れがあちこちに付いていた。普通の教室というよりは……


「美術室ですね。私の小学校と似ています」

「奥にも扉があるよ。開けてみよ〜!」

「あっ、コラ!もう、警戒心がないわね」

「平気平気!……う〜ん、ふむふむ」


 マミは別室の中に顔だけ入れ確認すると、直ぐに戻って来た。


「何かありませしたか?」

「色々あったよ!物置みたいでね〜、人間が授業で使うんだろうなってポスターが飾られていたり、真っ白い像が置いてあったり、面白そうだった!」

「真っ白い像……石膏像でしょうか?なら、やはりここは美術室で間違いありませんね」

「アタシには分からないけど、桔梗がそう言うならそうなのね。一体、ここで何をしたら……ん?ねえ、黒板を見て」


 水音に言われ、マミと桔梗も黒板に目を向ける。黒板にはチョークで大きく『色の謎』と書かれており、その下に3枚の紙が縦に並べて貼られていた。それぞれの紙の横には文字も書かれている。

 マミは黒板に近付き、文字を読み上げる。


「色の謎……えっと、黄色の紙の横は『補う』、赤の紙の横は『光』、紫?っぽい紙の横は『色』、か。う〜ん、よく分からないや。この紙自体はその辺の机に置いてある物と同じみたいだけど……」


 水音も考えながら黒板の前に立つ。そして、思い出す素振りをしながら紙を触る。


「あれじゃない?補うは補色で、後のはなんちゃらの三原色とかいうやつ。それで、机の上から正解だと思う紙を持って来て貼るとクリアになるんじゃないかしら」

「絶対それだよ!で、その補色って何?どの紙を持って来たらいいの?」

「お、覚えていないわ……そういうのがあるって知っているだけ」

「そっか〜。じゃあさ、全部片っ端から貼ってみようよ!そうしたらいつかは正解するでしょ?」

「それでは時間がかかり過ぎますよ。どいてください。わたしがやります」


 桔梗が紙を持ってきて黒板に貼る。黄色の紙の横、『補う』の回答として桔梗が持ってきたのは青紫の紙。


ピンポーン


 正解を知らせるように上の方から音から聞こえてくる。


「凄い!合ってるよ!」

「助かったわ。流石ね」

「ふふん、褒められるのは気分がいいですね。わたしは美術分野でも手を抜かない優等生。この程度の基礎問題余裕です。2人はわたしが言った紙を探して持って来てください」

「了解です、隊長!」

「分かったわ。どれを取って来たらいいかしら?」

「まずは……」


 マミと水音が手分けして紙を探し、桔梗に渡す。そうして残り2問も直ぐに終わった。男性の声でアナウンスが流れてくる。


『ステージクリアおめでとうございます。教室から出てください』


 ガチャッという音がしたと思うと、教室の後ろの扉がひとりでに空いた。全員で一度顔を見合わせ、頷き、教室から出る。


 教室の外は大きな部屋になっていた。部屋の中央は壁で区切られており、左右に2分割されている。また、左にも右にも同じような家具が、同じように配置されていた。


『それでは第ニステージを始めます』


         ♢♢♢


 マミ達が1つ目のステージをクリアした頃、陸は床に横たわっていた。


「はぁはぁ……一生分走った……」


 命からがら鬼の石像から逃げ切ることに成功した陸達は、廊下から出て別の部屋に移動していた。

 キフシも息を整えながら陸に近付く。


「ふぅ……大丈夫ですか、陸さん」

「大丈夫……ローキスさんは平気そうですね……」

「まあ、俺はお前達より体力があるからな」


 ローキスを羨ましがりながら陸は立ち上がる。


 部屋内は廊下同様ピンクと黒で統一されていた。家具はなく、部屋の中はがらんとしており、正面に扉が見えるだけだ。


『あ〜あ〜!聞こえますか?聞こえますね?第一ステージ突破おめでとうございます!』


 ビラの声が聞こえてきた。嬉しそうにパチパチと拍手をしている音も。


『では、第二ステージの説明を始めます!その名も“見極めろ落とし穴!”』

「落とし穴?」


 ビラの言葉を受け、床を見る。ピンクと黒のタイルを並べて市松模様にした床で、特に変わった部分はない。


『床のあちこちには落とし穴が掘られています。落ちると鋭ーい槍が体を貫くのでお気をつけください。どのタイルの下に落とし穴があるのか……勘で進むもよし、誰かを先に行かせるもよし!自分なりの方法を探して攻略してくださいね。では!』

「槍って……」


 床を見つめる。やはり、何の変哲もない床だ。どこに落とし穴があるかなんて分からない。


「どう進むべきか……幸い向こうの扉までそんなに距離はないけど……」

「し、慎重に行きませんか?片足を乗せて……」

『無理ですよ〜。一定の重さをかけないと作動しません』

「それは先に言ってくれよ」


 陸は数秒考えた後、一歩前のタイルに進む。両足を乗せて体重をしっかりかけるが落ちることない。

 ホッと安堵の息を吐きながらキフシとローキスの方を振り返った。


「おーい!ここは行けるぞ!次に行けそうな場所も見つけるから、付いて来てくれ!」

「い、いやいや!危ないですよ陸さん!怖くないのですか?」

「怖いけど、それは皆一緒だろ?大丈夫、オレ運動神経いいから!落ちそうになったらピョンと隣のパネルに移るよ!」

「無茶ですよ……」

「中々に強気じゃないか。飛び移った先にも罠があるかもしれないのに……っと」


 ローキスも陸の乗っているタイルに乗る。少し狭くなったが、詰めればキフシも乗れそうだ。

 続いて陸は斜め前のタイルに移動した。……罠が発動することはない。


「ここも問題ないな」

「凄いな。正解がどれか分かっているのか?」

「全然。勘です。だからもし落ちそうになったら助けてくださいね」

「……ふむ、分かった」


 それからも陸は慎重に、しかしできる限り最短ルートで入り口に向かう。途中1回だけ落ちそうにはなったが、ローキスの助けもあり、扉の元まで行くことができた。

 扉の前にはタイルがない。安心してキフシとローキスが来るのを待つことができそうだ。


 ローキスは陸と共に来ていたので直ぐに扉前までやって来た。キフシは数歩遅れでやって来ていたので少し遅いが、後はタイル1枚分くらいだ。


「遅くてもすみません、今行きますね」

「大丈夫大丈夫、ゆっくり──」

「へっ?」


 キフシが最後の1枚に足を乗せた瞬間、タイルがパッと消えた。キフシは下を見る。穴の中いっぱいに、何本もの槍が穂先をキフシに向けていた。早く役目を果たしたいと、早く落ちて来いと、そう望んでいるように。


(あっ、まずいかも……)


「キフシ!」


 諦めたかけたキフシの手を陸が握る。危機一髪で間に合ったようだ。

 陸が全力でキフシを引っ張っていると、ローキスも力を貸してくれた。そのおかげもあってキフシは何とか助かることができた。


 座り込んだ状態でキフシは陸達に頭を下げる。


「あ、ありがとうございます。ごめんなさい」

「何で謝るんだよ。お前は悪くねぇって」

「まさかタイルが消えるとはな。俺達が通った時は平気だったが……」


 ローキスの疑問に答えたのは、何やらテンションの高いビラだった。


『ふふふ、どうですか?そのタイルは3人目で落ちる仕様です!誰かが切り開いた道を歩くだけでは驚きも楽しさもありません!ゲームはスリルあってこそ。最後までドキドキをお届けし、喜んでもらいたいという私の粋な計らいです!』

「ふざけんなって……はあ、心臓が止まるくらい驚いた」

『何と嬉しい賞賛のお言葉でしょう!考えた甲斐がありました。それでは次に……と言いたいところですが、一旦お休みになられますか?向こうのチームはまだ第二ステージをクリアしていませんよ?』

「えっ!マジで!?じゃあ、休まなくていいから先に進みたい……ってオレは思ってるんだけど、2人はどうだ?」


 恐る恐るキフシとローキスの方を見る。キフシは立ち上がり、「行けます」と返事をした。


「休んでいる時間がもったいないですから」

「俺は元々疲れていない。お前達がいいのなら進もうか」

「本当にありがとうな!次のステージでもオレ頑張るよ!」

『皆様やる気があって大変素晴らしいです!ならば次に進みましょう!ふふっ、次のステージはもっともっと、ドキドキできますからね!』

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