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空の彼方に  作者: しまねこ


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採取と危険

「ルリ〜〜集めた薬草の回収をお願いしま〜〜す!」

「はあい、了解。カーク君、お願いします」

 すっかり日常が戻り、いつものように子ども達と採取に出掛けていた私は、笑ったチムタムの声に返事をしてから来てくれたカーク君の手を握った。

 反対側を飛んで来てくれたチムタムが握ってくれて、私は二人の間でぶら下がるようにして運ばれていった。

 結局、入院中はほとんど寝たきりだった為に体力は相当落ちてしまい、最初の頃は、羽ばたきどころか歩く事さえ出来ない有様だった。

 その為、当然羽ばたきの練習は全く出来ず、そのせいでせっかく体が浮くようになったのに、また一からやり直しになってしまったのでした。

 ようやく体力が少し戻ってきたようなので、昨日から羽ばたきの練習を再開したところ。

 なので、今の私は完全なるお荷物。

 カーク君かキース君と一緒にチムタムが来てくれるのは、万一何かあった際に飛べない私を一人だと守れないからなんだって。

 申し訳なく思いつつ、早くまた飛べるようになりたいと本気で考えるようになっていた私だったわ。

 これは、以前とは違うところね。



 以前の私はもう、毎日羽ばたきの練習をしつつも飛べるようになる事をほぼ諦めていた。

 羽ばたきの練習だって、惰性でしていただけ。

 でも今は違う。

 飛びたい。

 流砂に流されて死ぬような思いをして、心の底からそう思えるようになった。

 なので、お荷物状態で運ばれている間、私も翼を広げて少しだけど羽ばたいたり滑空するように翼を広げたりしている。

 心得ている皆も、私を運ぶ時には少し高度を取ってわざと遠回りして飛んでくれたりもしている。

 聞けば、飛んでいる時の感覚を思い出すのも、また飛べるようになるには重要な事なんだって。



「ルリ姉さん、これをお願い!」

「ルリ姉さん、こっちにもありま〜〜す!」

「終わったらこっちもお願いね」

「はあい、順番に行くから待っていてね」

 笑顔で声をかけてくれる子達に、私も笑顔で手を振りながらせっせと集めた薬草や水石をを収納して回った。

「お弁当を食べたら、今日は森の奥まで行くから、また子供達の面倒を見てね」

 最後の水石が入った包みを収納していると、笑ったチムタムにそう言われて私も笑顔で頷く。

「ああ、聞いているわ。ちょっと今日の場所は遠いらしいから、到着するまで頑張って歌わないとね」

 子供達は、手を繋いで歌いながら歩くのがすっかり気に入ったらしく、次々に新しい歌をせがまれてしまい、実はちょっと困っていたりする。

 何しろ子供向けの歌や童謡はほぼ出尽くしたし、アニソンも、子供達でも簡単に歌えそうなものはほぼ出尽くしている。

「あとはポップスとかで、歌えそうなもの……」

 さすがにラブソングを子供達に歌わせるわけにもいかず、あとは何があるか必死になって考えていた私だったわ。



 結局いい曲は思いつかなくて、いつもの童謡や子供向けの歌を時折歌詞をちょっと変えて変化をつけて歌いつつ、必死になって子供達を飽きさせないようにしたのでした。

 うん、今度他の大人達にも聞いて回って、歩く時に使えそうな歌がないか探してみよう。

 そんな事を考えながら歩き、かなり森の奥まで入ったところでようやく今日の目的地に到着したのでした。

「じゃあ、手分けして採取してくれよな」

「足元には注意するようにな」

「もしも枯れているところを見つけたら、すぐに大声を出して知らせてくれ」

「絶対に枯れた場所には踏み込まないように!」

「はあい!」

 真顔で注意するカーク君やキース君をはじめとする達護衛の子達に、ここだけは真面目な顔になった子供達が口々に返事をする。

 さすがに、私が流砂に飲み込まれたのは子供達も大ショックだったらしく、これに関しては結果的に良い教訓になったって、後でチムタムに苦笑いしながら言われたわ。

 ここからは班別に分かれ、張り切ったチムニーが教えてくれる初めて見る薬草を、私も子供達と一緒に集めて回った。



 この辺りは、大きな木が鬱蒼と生い茂っていて視界が非常に悪い。

 護衛の子達は、常に声を掛け合ってお互いの場所を確認したり、子供達のいるところを見て回っては何度も点呼を取って、誰かいなくなったりしていないかを何度も確認してくれていた。

「流砂の前兆である枯れ草にばかり気がいっているけど、実はこういう視界が悪いところは、ジェムモンスターに出くわす危険が高いんだ。ルリも周囲に気をつけて、遠くから変な音が聞こえたり、茂みから急にガサガサ音がしたりしたら絶対に放置せずに確認してくれよな。万一何か見つけたらすぐに大声を出して逃げる事!」

 食堂で走り回っている時とは全く違う、しっかりした様子のチムニーにそう言われて、私は慌てて周囲を見回す。

「うん、大丈夫だと……思います」

「おう、俺も今は大丈夫だと思うよ。でも、ジェムモンスターが湧き出るのは突然だし、何処からか湧き出るかなんて分からないからね」

「わ、湧き出るって、どういう意味?」

 生き物を表すのにちょっと不自然な表現で言われて、思わずそう尋ねる。

「あれ、聞いてない? ジェムモンスターは、文字通り湧き出してくるんだよ。大抵は地面から、キラーバグは木の隙間から出てくる事もあるぞ」

「ええ、何それ! 生き物なのに、地面から湧いて出るの?」

 これまた私の常識では有り得ない。驚きのあまり声が大きくなったら、近くにいたカーク君とチムタムが驚いたみたいに振り返った。

「ええ、知らなかった?」

 二人の声が綺麗に重なる。

「今、初めて聞きました!」

 力一杯そう答え、チムタムと顔を見合わせてほぼ同時に吹き出した私達だった。



 その後でチムタムやカーク君から詳しい話を聞いたところ、ジェムを核に持つジェムモンスターは、聞いたように大抵は地面から、あとは樹木の隙間などから文字通り湧いて出てくるものらしい。

 それを聞いて思ったわ。ジェムモンスターも、恐らくだけど巨人の遺産の一つなんだろう。

 だって、ジェムは巨人の作った装置である冷蔵室を稼働させるのに絶対に必要なアイテムで、他にも、いつも水浴びをする時に使っている温かいお湯が出る噴水や、洗濯する時に使っている滝も可動装置にジェムを使っているんだっていうからね。

 まあ、ジェムはかなり長持ちするらしいのでそれほど必死になって集める必要はないけれど、グレイさん達狩猟組の人達は、ちゃんと数を管理して定期的にジェムモンスターも狩ってジェムを確保してくれているんだって。

 出現数が少ない最近では、定期的に他の浮島へチームを組んで狩りに行ったりもしてくれているんだって。

 そんな話を聞きながら、来てくれたチムニーから教えられた初めて見る真っ赤な色をした薬草を採取するのに夢中になっていた私は、近くにあった背後の大きな茂みが不意にガサガサと音を立て始めたのに気が付かなかったのでした。

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