産まれた〜〜!
「ああ、こっちにもヒビが!」
カタカタと小さく震えるみたいに揺れ動いていた小さい方の卵にも、一瞬で細いヒビが入って思わずそう叫んで卵を押さえた。
でも、まだどちらもヒビが入ったきりそれ以上の動きはない。
もう部屋にいる全員が固唾を飲んで卵を見つめている。
「もう生まれたか!」
その時、勢いよく扉が開いてグレイさんが文字通り飛び込んで来た。
「おかえり、間に合ったわね。ほら、こっちこっち!」
笑って振り返ったリッティの言葉に、歓声を上げたグレイさんが私の横に駆け込んでくる。
「さっき、こっちの小さい方の卵にもヒビが入ったの。きっともうすぐね」
「ああ、本当に間に合ってよかった。呼びに来てくれたシンシアさんに感謝だな」
そう言って笑った私に横から抱きついたグレイさんは、嬉しそうに笑って背後を振り返った。
そこには、グレイさんからかなり遅れて到着したシンシアさんが入って来て扉を閉めたところだった。
「狩猟組は、飛ぶのが速いとは聞いてたけどあれほどとはね。待機部屋からここまでなんてほんの少しの距離なのに、全然追いつけなかったよ」
笑ったシンシアさんの言葉に、苦笑いしているグレイさん。
全力ですっ飛んできたであろうグレイさんの様子が目に見えるようで、私も思わず吹き出したわ。
しかし、ここからが案外長かった。
確かに大きくなった卵の殻は、かなり分厚くなっているので割るのは大変みたいで、時折大きくカタカタと動いたり揺れたりはしているんだけど、ヒビが大きくなる様子は一向に無くて、もう全員待ちくたびれてしまっていた。
でも、誰も席を立とうとしない。
ちなみにお姉様達は、いつ生まれてもいいようにと交代でキッチンでお湯を沸かし始めている。
産湯を使う習慣はこっちでもあるみたい。
せっかくなので手伝おうとしたんだけど、私とグレイさんは卵から離れないでと真顔で言われてしまい、準備は全部お姉様方にお任せする事になったのでした。
「お、ヒビが増えたぞ」
グレイさんの言葉に、その瞬間を見ていた私も笑顔で頷く。
大きい方の卵は、さっきから動きが激しくなっていて水平に入っていた細いヒビと交差するみたいに、今度は縦にヒビが入ったのよ。
その直後に、ちょうど十字になったヒビが交差した部分がポロって感じに大きく剥がれて落ちた。
「産まれる!」
グレイさんと手を取り合った私は、そう叫んで卵に顔を寄せる。
すると、それが聞こえたかのようにもう一つの少し小さい方の卵も大きく動いて、入っていたヒビの部分がパカって感じに少しだけ開いた。
その直後、まず大きい方の卵が上下にパカっと分かれて中から赤ちゃんが転がるようにして出てきた。
その背中にごく小さな翼が見えて、思わず声を上げた私だったわ。
「産まれた〜〜!」
そう叫んだグレイさんが、手を伸ばして卵の殻から転がるように出て来た赤ちゃんを受け止める。
それを合図にしたみたいにもう一つの卵も一気に開いて、こちらからも赤ちゃんが転がり出てきた。
「わあ、待って待って!」
慌てたように手を伸ばして、卵の殻から出て来た赤ちゃんを受け止めてやる。
「うわあ、小さい」
予想以上の小さな体に思わずそう呟く。もちろん、この子の背中にもごく小さな翼がある。
「お、おぎゃあ! おぎゃあ!」
「ほぎゃあ! ほぎゃあ!」
そして赤ちゃん達は、ほぼ同時にとても元気な声で泣き始めた。
「おめでとう!」
「おめでとう!」
「ほらこっちへ!」
見ていた皆が歓声を上げて拍手をしてくれる。
そして、大きな湯桶を二つ用意してくれたお姉様達が、笑顔でそう言ってくれる。
「ありがとうございます! よろしくお願いします!」」
私とグレイさんがそう言って立ち上がり、それぞれ赤ちゃんを抱いて湯桶の横へ行く。
たくさんの布も用意してくれてあって、お姉様方の手により産湯を使った赤ちゃん達は、それはもうツヤツヤのピカピカになった。
「ああ、可愛い……」
当然のように用意してくれてあった産衣を着せてもらった赤ちゃん達が、私とグレイさんの手に返される。
「予想通り、男女の双子だったわね。おめでとう、グレイ、ルリさん。この子達とのこれからの暮らし、私達が全力で応援するからね。一人で抱え込まない事。困った事や分からない事があれば、いつでも遠慮なく相談してちょうだい。それに赤ん坊はいきなり体調を崩したりするから、例え夜中であっても、呼んでくれればすぐに駆けつけるからね」
頼もしいその言葉に、グレイさんと揃って何度もお礼を言った私だったわ。




