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空の彼方に  作者: しまねこ


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驚きの出産方法について

「夫婦棟滞在、最短記録かもね」

 その日、せっかくだから一緒に食事にしようと誘われた私は、久しぶりに女性棟の食堂へ来ていた。

 ちなみに今夜は、グレイさんも狩猟組の皆さんと一緒に食事をするんだって。

 用意してもらったお茶で乾杯した後に笑ったリッティにそう言われて、私も苦笑いしながら頷くしかなかったわ。

「じゃあ、時間のある時に家族棟に引っ越すとして、卵の置き場を決めないとね」

「そうね。せっかくだから卵を守るカゴは私達に贈らせてよ。頑張って大きいのを作るからさ!」

 目を輝かせたチムタムの言葉に、私も参加したい。私も参加すると、チムタムの友達が次々に手を上げてくれる。

 お礼を言いかけて、お茶のカップを置いた私は、聞き慣れない言葉に気付いて動きを止めてしばし考える。

 だけど、どう考えても意味が分からなくて首を傾げながらリッティを見る。

「ねえ、ちょっと質問なんだけど、卵の置き場って何? 卵を守るカゴって、それを作るってどういう事?」

 私の質問に、今度は周りにいた全員の動きが止まる。



 沈黙。



「ええと……」

 困ったように私がそう呟くと、私の両横に座っていたリッティとチムタムが真顔になった。

「ねえ、ちょっと確認なんだけど、ルリはどうやって子供が生まれるか知っているわよね?」

「え? どうやってって……十ヶ月くらいお腹の中で育てて、ここから産むのよね?」

 そう言って、自分の下半身を指差す。

「まあ、産む場所はそこだけど、ええ? 十ヶ月もお腹の中で育てる?」

 不思議そうにそう呟いたリッティは、困ったように向かいに座るパム達を見た。

 真顔で頷いたパムが、座り直して手にしていたグラスを置いた。

「ねえルリさん。私達翼人の出産について説明させてもらうわね、私達は、赤ちゃんが授かってから二月くらいで卵を産むのよ。真っ白でちょっと楕円形をした綺麗な卵よ。生まれた卵は、最初はこれくらいの大きさね」

 そう言って、両手で10センチくらいの円形を作る。

「ええ? 赤ちゃんを産むのではなく、卵を産むんですか?」

 初めて聞く衝撃の事実に、思わずそう叫んだ私はまだ平らなままの自分のお腹を見た。

「生まれたての卵は、特にとても繊細なの。だから家の中で静かな場所を決めて、卵専用のカゴを置いてそこに生まれた卵を入れておくのよ。必ず毎日誰かが撫でる事。そして水を与える事。卵を産んだ母親は、基本的に仕事はお休みにして卵を守る事が最優先とされるわ。父親も、基本的に遠出するような仕事からは免除される。グレイさんの場合なら、待機の仕事はあるけれど、他の浮島へ行くような仕事は、子供が生まれるまでは免除されるわね」

「卵を産む? 私が?」

 予想外の展開に、正直言って頭は真っ白よ。

「ねえ、逆に質問! じゃあ地上の人は、どうやって子供を産むの?」

 興味津々って感じのチムタムにそう聞かれて、私は戸惑いつつも知る範囲の事を説明したわ。

「ええ、お腹の中で直接子供とつながっていて、産む時にその管を切るの? しかも、育った赤ちゃんが直接お腹から、あの穴を通じて出てくるって……それ、本当に大丈夫なの?」

「一応大丈夫だと言われているわね。まあ、もの凄く痛いとは聞くけれどね」

 ドン引き状態なチムタムの質問に誤魔化すように私がそう答えると、周りで聞いていた何人もの女性が痛そうにお腹を押さえながら顔をしかめたり、嫌そうに首を振ったりしていたわ。



 見る限り、翼がある事以外は以前と基本的な体の作りは同じだし、一応軽いけれども月のものだって普通にあった。男女でするあの行為だって、翼があるせいで対位に違いはあったけれど、少なくとも行為自体は私の知る限り同じだった。

 それなのに、まさか出産方法がここまで違っていたなんて!

 驚きのあまり言葉も無い私を見て、パムは困ったように笑っている。

「ミルキー先生も、まさか地上の人間と翼人で出産方法が違っていたなんて思わなかったんでしょうね。後で施療院へ行って知らせておくわ。何ならミルキー先生から、出産についてもっと詳しく教えてもらうといいわ。ちなみに、これくらいの大きさで産んだ卵は、半年くらいでこれくらいまで育って生まれるわよ。卵にヒビが入り始めて一日から二日くらいね」

 笑ってそう言い、50センチくらいに手を広げて見せる。

「ええと、つまり産んだ最初の時にはこれくらいの大きさだった卵が、半年かけて殻ごと成長するって事?」

 これまた予想外の説明に、思わず私もそう尋ねる。

「そうよ。だからカゴはしっかりとした大きなものが必要なの。チムタム達は、これまでも何個もカゴを作っているから、そこは任せていいわよ」

 笑ってカゴについては任せてと言って胸を叩くチムタム達を見て、もう笑うしかない私だったわ。

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