嬉しい報告!
「ミルキー先生! あの、もう一度言ってください!」
初めて見るくらいに焦った様子のグレイさんの叫ぶ声に、ミルキー先生はにっこりと笑って口を開いた。
採取へ行っていた最中に酷いめまいと立ちくらみを起こしてしまった私は、急遽迎えに来てくれたグレイさんに連れられて施療院に駆け込んだわ。ちょうど急患担当だったミルキー先生の診察を受けた後、何故かグレイさんまで診察室に呼ばれて、そして、私達二人を見たミルキー先生は、これ以上ないくらいの笑顔でこう言ったのよ。
「おめでとう。ルリさんのお腹には新しい命が宿っているわよ」って。
そ、そりゃあ、ああいう事をしていれば、いつかは授かるだろうとは思っていたけど、それはまだまだ先のことだと思っていた。
月のものが遅れがちだったのは、単に、急に生活環境が変わったせいだと思っていた。
それなのに、まさか……まさか、新しい命を授かっていたなんて!
驚きすぎて言葉が出てこなくてただただ呆然としていた私を、グレイさんが横から手を伸ばしてそっと抱きしめてくれた。
「ああ、夢みたいだ……俺とルリの子供……ありがとう、ルリ。どうか大事にしてくれ」
ごく小さな声で、何度もありがとうと言ってくれるグレイさんを見ていると、本当に命を授かったんだって実感がじわじわ湧いてきたわ。
「私の方こそ、ありがとうグレイさん。改めてこれからもよろしくお願いします」
私も腕を伸ばしてグレイさんをしっかりと抱きしめる。
それから、手を離して向かい合った私は、グレイさんとそっとキスを交わした。
「はいはい、嬉しいのは分かったし、仲が良いのも分かったから、とりあえずそこまでね」
呆れたようなミルキー先生の声が聞こえて、我に返った私とグレイさんは、文字通り耳までどころか見えている場所全部真っ赤になったのでした。
「ルリ! ねえ、大丈夫だったの?」
「ルリ! もう歩いていいの?」
少し休ませてもらってから、ミルキー先生から日常生活での注意事項なんかの説明を聞き、外に出たところでちょうど採取から戻って来たチムタムとチムニーが来てくれた。
「ルリ! 倒れたって聞いたけど、大丈夫だったの!」
そして、文字通りすっ飛んで来てくれたリッティも、チムタムの横に綺麗に着地してから私のところへ駆け寄って来てくれた。
無言で顔を見合わせた私とグレイさんは、笑顔で頷き合ってからリッティやチムタム達に向き直った。
「報告があります!」
まだちょっとふらついていたので、少しだけグレイさんの方にもたれかかるようにしながら私が口を開く。
グレイさんは、何も言わずにしっかりと私を支えてくれている。
「ミルキー先生に診察してもらって分かりました! 私、新しい命を授かりました!」
笑顔でそう言って、まだまだ平らな自分のお腹をそっと撫でる。
沈黙……。
何故かチムタム達からの反応が全くない。
「ええと……?」
予想外の反応に戸惑うように私がそう呟いた瞬間、チムタムとリッティの甲高い悲鳴が重なった。それから、チムニーの、二人よりもやや少し低い悲鳴がそれに続いた。
おお、チムニーったら、もしかしてそろそろ声変わりだったりするのかしら?
若干明後日な方向の感想を思っていると、目を輝かせたリッティが私に抱きついてきた。
「きゃあ〜〜〜〜〜〜〜おめでとうルリ! 甥っ子か姪っ子が生まれるのね! きゃあ〜〜〜〜〜〜〜夢みたい! 嬉しい嬉しい!」
「おめでとうルリ! 私も嬉しい!」
ここで復活したチムタムも、そう言いながらリッティと反対側から抱きついてきた。
大柄なリッティと、彼女ほどではないけれども私よりすっかり大きくなったチムタムの二人に抱きつかれた私は完全に二人の間に埋もれてしまい、もう笑うしかない状況だったわ。
しかも、二人の叫びを聞いた周囲にいた人達までが集まって来て、ホームの庭はちょっとした大騒ぎになったのでした。
でも、皆我が事のように喜んでくれ、口々におめでとうと言ってくれて、私は感動に目を潤ませながら何度もお礼を言っていたのでした。
その後、身寄りのない私と両親のいないグレイさんを心配して、やや年配のお姉様方による自称保護者の会が発足したらしく、生まれる前から子育てサポート体制は万全の状態になったのでした。




