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空の彼方に  作者: しまねこ


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戻ってくる日常と私の体調不良

「ルリ姉さん、こっちにたくさんあるからお願いね!」

「はあい、順番に行くから待ってね」

 チムタム達の笑う声に、カーク君と一緒に飛び回っていた私は、笑いながらそう答えて目の前に積み上がっている大量の薬草を大急ぎで収納していったわ。



 グレイさんとの結婚式を無事に終え、夫婦棟での新しい二人での生活が始まった私だったけど、とりあえず日常生活にそれほど大きな変化はない。

 グレイさんと一緒に夫婦棟にある食堂で朝食を食べた後、私はいつものように子供達と一緒に近場へ採取に出かける。

 グレイさんは、定期的に周辺の浮き島へ狩猟組の人達と一緒に狩りに行く時以外は、基本的にホームにある訓練場で仲間達と一緒に訓練しながら待機して過ごしているんだって。

 もちろん、どこかでジェムモンスターが出たら即座に緊急出動するから、待機と言っても別に休んだり遊んだりしているわけではない。

 聞いた限りワイバーン狩りには、結婚してからはまだ一度も行っていないんだって。

 正直に言うとワイバーンはめっちゃ怖いので、出来ればそのまま行かないでいて欲しいわ。

 一緒に採取に行く子供達からは、新しい生活がどんな風なのかってよく聞かれるけど、別にそれほど変わらないわよって答えて笑って誤魔化しているわ。

 まあ、そんな感じで新生活といってもいつも一緒にいるわけではないし、遠くの浮き島に行く際には、グレイさんはそこで野営する事だってあるから、独り寝の夜だってもちろんある。

 寂しくないと言えば嘘になるけど、それは最初から分かっていた事なのでそういうものだと思っているわ。

 グレイさんが留守をする時には、リッティやチムタムが泊まりに来てくれる事もあるし、逆に誘われて私の方から泊まりに行く事もあったわ。



 そんな感じで、毎日が本当に楽しくて楽しくて、日々はあっという間に過ぎていった。

 この浮き島では、季節の変化はほとんど無い。

 春先くらいの過ごしやすい安定した気温と雨のない日々。

 早朝に濃い霧が発生して文字通り何もかもが水滴まみれになるので、植物はそこでしっかりと水分を補給しているから、雨がなくても植物はちゃんと育つのよね。

 それでも多少の気温差はあるので、なんとなく季節は冬に向かっているみたい。

 最近では特に早朝にかなり気温が下がってきていて、風邪をひかないようにベッドに毛布を追加で入れてもらったくらいだった。



「あれ? やっぱり風邪引いたかも」

 その日、いつものように採取に行っていた私は、子供達と一緒に歌を歌っていてなんだか酷くだるくて密かにため息を吐いた。

 歌だって、いつもみたいに大きな声が出ない。

 その時は、まあそう言う日もあるかと思ってあまり気にしていなかったんだけど、採取の途中で突然酷い立ちくらみを起こしてしまい、側にいたチムタムとキース君が咄嗟に支えてくれなかったらそのまままともに受け身も取れずに倒れるところだった。

「ちょっと大丈夫?」

「ルリさん、顔が真っ青だよ。ほら、ここに座って!」

 私を見たキース君が、慌てたようにそう言って収納していた折りたたみ式の椅子を出してくれた。

「ご、ごめんね。ちょっと借ります」

 なんとかそう言って、用意された椅子に座る。

 でも、何故か体をまっすぐに保てなくて、背もたれのない椅子から転がり落ちそうになってもう一度チムタムに支えてもらったわ。

「ねえ、本当にどうしたの。ああ、シートを用意してくれたからここに座って横になるといいわ!」

 気づいて駆けつけて来てくれたカーク君が、皆でお弁当を食べる時なんかに使う大きなシートを即座に地面に敷いてくれたので、それを見たチムタムが私を支えながら移動してくれてシートに座らせてくれた。

「ありがとう。ちょと待ってね。なんだか世界が回っているわ……」

 地面に敷かれたシートに座った私は、そのままパタリと横向きに倒れて目を閉じたままなんとかそれだけは答えておいた。

「ええ、ルリどうしたの?」

 私の異変に気付いて遠くから駆け寄って来てくれるチムニーの声も聞こえたけど、今の私に答える余裕はない。

「いざとなったら、俺とカークでルリさんを運ぶよ。これはちょっと具合が悪いって程度じゃあないと思う」

 心配そうなキース君の言葉にチムタムも何か答えていたけど、まだ私は酷いめまいと貧血のせいで目を開ける事も起き上がる事さえも出来ないでいたわ。



 結局、そのまま採取が終わるまで寝転がったまま休ませてもらい、そろそろ撤収の時間になったところで少し回復した私は、なんとか起き上がってシートに座った。

 しかも私が休ませてもらっている間に、どうやらカーク君達がホームに知らせてくれたみたいで、訓練所にいたグレイさんが心配して迎えに来てくれたの。

 なんだか申し訳なくて平謝りだったんだけど、その時の私はまだ若干貧血が残っていて、自力で立つ事すら出来なかったから、正直に言ってグレイさんが来てくれてちょっと安心したのよね。

「悪いが、とりあえず先に帰らせてもらうよ。このまま施療院へ連れて行かせてもらう」

 私をお姫様抱っこで抱き上げたグレイさんが、心配そうにしているチムタムにそう言っている。

「お願いします。明日以降の採取も、ルリさんの体調を第一に考えて無理せずお休みしてください」

 チムタムの言葉に頷いたグレイさんは、その場から予備動作もなしに飛び上がり、そのまま一直線にホームへと飛んでいった。

「手間をとらせてしまってごめんなさい」

「ルリは悪くない。突然体調が悪くなる事は誰にだってある。そんな時の為に俺がいるんだから、遠慮なく頼ってくれ」

 笑いながらそう言われて、なんだか胸がいっぱいになって何度もお礼を言った私だったわ。

 でもって、そのまま施療院へ担ぎ込まれたんだけど、大白鳥の翼を持つミルキー先生に診てもらって、告げられたその診断結果に、私とグレイさんは揃って驚きの声を上げる事になったのでした。

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