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空の彼方に  作者: しまねこ


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結婚式と祝賀会

 日々はあっという間に過ぎていき、気がつけばもう結婚式当日!

 私は、早朝から張り切ったリッティを始めとする女性陣に捕まり、身ぐるみ剥がされて頭の先から爪先まで文字通り身体中ピカピカに磨き上げられて、仕上がったばかりのドレスを着せられたわ。

 そして当然のようにお化粧もね。

 全部終わったところで、特別な時にしか出さないのだという全身が映るサイズの大きな鏡が運んでこられ、その鏡に映る、まさにウエディングドレス以外の何物でもない真っ白なドレスを着た自分を見て、割と本気で「これ誰?」って思った私だったわ。

 ついでに言うと、翼のある自分の姿をこんな風に全身で見たのも初めてだったから、思わず回れ右をして背中側も鏡に映してじっくり見たわ。

「もう最高に綺麗よ、ルリ。本当におめでとう」

 目を潤ませたリッティにそう言われて、私もちょっと感動で出た涙を堪えつつ、こちらこそありがとうと言ってなんとか笑ってリッティに抱きついたのでした。



 その後、リッティに手を引かれて建物の外に出る。

 ホームの庭には、いつもよりもちょっとおしゃれをした人達が大勢待っていて、私が顔を出した瞬間に、何故かもの凄く大きなどよめきが起こった。

「え?」

 驚きのあまり、私とリッティの足が止まる。

 私達と一緒に出てきた準備を手伝ってくれた女性陣は、こちらも何故か大喜びでキャーキャーと歓声を上げながら手を叩き合っている。



「おい! グレイ! 何やってる!」

「ほら、出迎えに行け!」

「何ぼさっと突っ立ってんだよ!」



 その時、ワルターさんや狩猟組の男の人達の笑う大きな声が聞こえて、その直後にグレイさんがその中から放り出されるみたいに飛び出してきた。

 今日のグレイさんは、グレーと白のややかっちりとしたスーツっぽい服を着ていて、何というか……めっちゃ格好良い。

 もうどこのモデルですか? って言いたくなるレベル。

 いつもはややボサボサで軽く上げているだけな前髪も、今は艶のある脂で整えた綺麗なオールバックになっていてこれまた格好良い。

「おっと!」

 突き飛ばされるみたいにして出てきたグレイさんは、慌てたようにそう言って数歩進んだところで足を止め、顔を上げてすぐ目の前にいる私を見て……唐突に固まってしまった。

 そして私も、頭の中ではグレイさんの格好良い姿を見て感動していたんだけど、実際にはポカンと口を開けたまま、こちらも完全に固まってしまっていたのでした。



 しばしの沈黙の後、あちこちから黄色い歓声と笑い声が上がり、ワルターさんが駆け出してきてグレイさんの腕を横から思いっきり叩いた。

「お前が固まってどうするんだよ! この馬鹿が! しっかりしろ!」

 そう言ってもう一度力一杯叩いた。

 あの音、服の上からとはいえかなり痛いと思う。

「痛え! 何しやがる!」

 予想通りに仰け反ったグレイさんが、そう言ってワルターさんに向き直る。

「お前が向くのはこっちじゃあないだろうが!」

 今度はグレイさんの胸板を軽く拳で叩いたワルターさんが、グレイさんの肩に手をかけて、強制的にぐいっと九十度向きを変える。

 もう一度正面から向き直る形になり、またしても絶句する私とグレイさん。

 周りの人達は、もうキラッキラに目を輝かせている女性陣と、遠慮なく大爆笑している男性陣とに見事に分かれている。

 ちなみに子供達は男女問わず、全員揃ってさっきから大喜びでキレイ! キレイ! 格好良い! 格好良い! と口々に言っては、飛び跳ねながらずっと拍手をしてくれている。



「あ、ああ……とても綺麗だよ。ルリ」

 ここでようやく我に返ったグレイさんがそう言い、少し苦笑いしながらそっと右手を差し出してくれる。

 怪我そのものは治ったんだけど、実は私の右の手首にはまだ結構大きな傷跡が残っているの。

 私は気にせず包帯を巻いていようと思っていたんだけど、その右手首から肘にかけては、パムが先日の商人さんから買ってくれた幅広なレースのリボンが幾重にも巻かれて傷を隠してくれている上に、右手首の甲側で大きな蝶々結びになっている。

 ブーケは無いけど、これのおかげで何だか凄く華やかになったのよね。

「せっかくのドレスに包帯は似合わないからね。これなら飾りみたいに見えるかと思って」

 このレースを巻きながらそう言ってくれたパムの気遣いに、感動のあまりちょっと泣きそうになったのは内緒ね。



 笑顔で頷いて、差し出されたグレイさんの右手を取る。

 そのまま進み出て、庭の建物の前に用意された少し高い台の上に二人で上がる。

 階段三段分くらいの高さのその台の上には、もちろん揃って飛んで上がったわ。

「狩猟組所属グレイと」

「採取組所属ルリは」

「「これからの人生を共に歩んでいく事を皆様に報告いたします。まだまだ未熟な二人を今後ともどうぞよろしくお願いいたします」」

 最初にそれぞれ名乗り、そのあとは教えてもらったセリフをグレイさんと声を揃えて唱える。

 最後に揃って深々と一礼すると、どっと拍手が沸き起こった。

「おめでとう!」

「おめでとう!」

 揃って台から降りると、もうそこからは怒涛のおめでとうの嵐。

 グレイさんは、またしても狩猟組の皆様におめでとうと言われるたびにほぼ袋叩きに近いような状態でバシバシと叩かれていたわ。

 まあ、痛い痛いと言いつつ本人も笑っていたから、大丈夫なんだろうけど……割と本気で大丈夫なのか心配になったのは内緒ね。



 その後、庭に用意されていた立食式の祝賀会は、もうちょっとびっくりするくらいにお料理やお酒なんかが並んでいて、もう飲めや歌えの大騒ぎになったわ。

 私達用には、さっき挨拶をした台の横に大きなテーブルと椅子が用意されていて、そこに並んで座ってお祝いを言いにきてくれる人達の対応をしたわ。

 それで何度も乾杯していたので、ごく少量ずつしか飲んでいなかったのに途中でちょっと酔っ払いそうになってしまい、慌てて私も少しだけど食べさせてもらったわ。

 うん、お祝いの乾杯とはいえ、空きっ腹に飲むのは駄目よね。

 もちろん、料理はリッティやチムタムが交代で取ってきてくれたので、お礼を言って有り難く頂いたわ。



「本当に綺麗なドレス。いいなあ。私もこんなふうに綺麗なドレスを着て素敵な彼氏と一緒に皆から祝われたいよ〜〜〜!」

 さっきからチムタムと彼女の友人達は、揃って満面の笑みで私のドレスを撫でたり触ったりしながら、何度も同じ事を言ってはキャーキャーと歓声を上げている。

 でもって「相手もいないのにいきなりそこ?」って、真顔になったリッティやパムが突っ込み「乙女の夢だからいいの!」とチムタム達が笑って言い返すところまでがお約束の展開。

 もう、途中からは私も一緒になってパム達と一緒に突っ込んでは笑っていたわ。

 お料理もお酒も、子供達用の果物を使ったジュースや紅茶、それからいろんなお菓子なんかも次から次へと追加されて、結局、日が暮れた後もそのまま祝賀会は続き、ようやくお開きになる頃には、あっちこっちで寝落ちする人が続出していたわ。

 もちろん、酔っていない人達が笑いながら酔い潰れた人達を引っ張っていっていたから、きっと大丈夫よね。

 次々に手際良く運ばれていく人達を見送り、最後にグレイさんと顔を見合わせて揃って吹き出した私だったわ。

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