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空の彼方に  作者: しまねこ


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両替と初めて見る硬貨

「ああ、本当に楽しかったわ。思った以上に色々と手に入れられたし、代理交渉をありがとうねリッティ」

 たくさん買ってくれた基礎化粧品を収納した私の言葉に、リッティは笑って胸を張った。

「私も楽しかったわ。じゃあ、明日の採取はお休みだから、口紅の色合わせは明日ね」

「ええ、よろしくお願いします」

 リッティの言葉に私も笑顔でそう言って頷く。

 どうやら、私が見たあのバリバリ原色などう見ても使えそうにない口紅は、そのまま使うのではなく混ぜて使うものだったらしい。

 リッティが教えてくれた話によると、真っ白な硬めのクリームがあるので、それに自分で好きな色の口紅を混ぜて自分に合う色を作るんだって。

 一応、リッティに勧められて戸惑いつつも、ややピンク寄りの赤と薄めの紫を買った私に、小さな陶器製の蓋付きのケースを1ダースも付けてくれた理由が分かったわ。

 これは商人さん達が帰った後、女性棟にあるあの広い会議室に皆で集まって、それぞれの口紅を作るんだって。自分で口紅を作るなんてちょっと楽しそう。

 でも、ここではほとんどお化粧をしている人を見なかったので聞いてみたところ、例えば恋人と二人きりで出掛ける、つまりデートに行く時や、何らかの祝い事があった時みたいな、いわゆるハレの日にはお化粧するのが一般的らしい。普段は、お化粧するとしてもごく薄い色の口紅程度。

 言われてみれば、確かにそれなら口紅を塗っているっぽい人もいたわね。

 それを聞いて思わず固まる。

 ええ、ちょっと待って。

 私って、あの日もすっぴんのままでグレイさんと一緒に飛んだんだけど、それって良かったのかしら?

 知らなかったとはいえ、グレイさんにすっごく失礼な事をした気がして、なんだか申し訳なくなった私だったわ。



「そろそろお昼だし、ルリは何が食べたい?」

 にっこり笑ったリッティの言葉に驚く。

「ええ? 何が食べたいって……ああ、そういう事なのね!」

 リッティが指差している方を見て、何が言いたいのかわかった私は満面の笑みになる。

 その一角には、いろいろな料理を出す屋台が集まっていたんだもの。

 しかも、よく見ればパスタっぽい料理や、汁そばっぽいものもある。

 他にも何かのお肉の串焼きやお団子っぽいものまであって、一気に私のテンションが上がったわ。

「ちなみに、料理の屋台で買い物をする時には、あの受付で両替してもらうの」

「両替?」

 貨幣の無いこの世界で、何を両替してもらうのだろう?

 不思議に思いつつリッティに腕を引かれてその両替をするのだという受付へ向かった。



 料理を提供している場所は他と違って円状になっていて、外周には屋台が円の内側に向けて設置されている。

 中央部分の島にもぎっしりと屋台が並んでいて、こっちは逆に円の外側に向けて設置されている。

 とりあえず言われるままに両替の受付に並んでいて、何を両替するのか分かった。

 他と違ってここでは専用の硬貨のようなものが用意されていて、交換用に出された物を、受付の人が判断してその硬貨をまとめて渡している。

 グレイさんもワルターさん達と一緒に並んでいて、大きな水石を渡して私なら両手でないと持てないくらいの大きな袋に入った硬貨と交換していた。

「ルリもあの大きな水石を交換してもらうといいわ。ここの料理はどれもすっごく美味しいから、新生活用にしっかり買っておいてね!」

 満面の笑みでそう言われて納得したわ。

 収納しておけば時間停止なので、確かにここの料理を買っておくのはいいかもしれない。

 ちょっと嬉しくなって出来るだけ大きな水石を取り出した私だったわ。



「おお、これは素晴らしい。重さは……じゃあこれだな。はいどうぞ」

 どこから見ても天秤はかりのような物の片方に私の水石を置いたその男性は、用意してあったこれまたどう見ても分銅にしか見えない形のおもりを次々に反対のお皿に載せていき、釣り合ったところで手を止めて載せた分銅を数え始めた。

 どうやら水石は重さで換金してくれるみたい。

 うんうんと頷いたその男性は、机に貼ってあったリストを確認してから大きな袋を二つも渡してくれた。

 もちろん、中には硬貨がぎっしりと入っている。

 ううん、さっきのグレイさんが貰った硬貨よりも絶対に多い気がする。ちょっと出しすぎたかも……。



「これって……他のお店では使えないの?」

 私の知る500円玉よりもまだ一回り大きなそのコインを一枚袋から取り出して見てから、思わずそう聞いてしまう。

 これがあれば、私でも買い物出来そうなんだけどなあ。

「一応、それはこの料理の屋台専門ね。それって地上で使われている物らしいけど、何度見ても不思議よね。そんなよくわからない物と料理を交換してくれるっていうんだからさ」

 貨幣価値について知らなければ、確かにこのコインは不思議な物だろう。

 苦笑いしつつ、ちょっと遠い目になった私だったわ。

 ちなみにその硬貨には100って数字が書かれていて、反対の面には女性の横顔が立体的に彫られていた。

 これを作れるって事は、地上の文明もそれなりに高いって事よね。

 明らかに銅貨っぽいそれを眺めつつ、ちょっと地上の街にも行ってみたいなあ、なんて呑気に考えた私だったわ。

 もちろん、背中に翼がある今の私では、地上の街になんて絶対に行けないだろうけどね。

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