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空の彼方に  作者: しまねこ


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商人達の到着と市場の準備

「ああ、来たみたいだな」

 空を見上げるグレイさんの呟きに、退屈して地面に咲く小さな花を見ていた私は、慌てて空を見上げた。

 単に商人、と言っていたからてっきり一人で来るんだと思っていたら、なんと飛んで来ていた人達は団体だったわ。パッと見ただけでも五十人以上は確実にいる。

 全体にやや男性が多いように見えるけれど、女性もかなりいるみたい。

 私にはちょっと種族までは分からないけれど、男性も女性もやや大柄な人が多いように見える。

 商隊(キャラバン)なら、普通はここに荷運び用の荷馬車や台車なんかがありそうだけど、いわゆるアイテムボックス的な収納があるこの世界では、商人さん達は至って身軽。ほぼ全員が手ぶらよ。

 もしかして、大容量の収納持ちだと高い給料で雇ってくれたりするのかしら?

 自分の収納は、もしかして無限容量なんじゃあないかと最近本気で疑い始めている私は、小さく笑ってまだ遥かに遠い商人さん達を眺めていたわ。



 しばらくして、団体様ご一行がホーム前の庭に到着した。

 それを見て、集まってきていた人達が一斉に下がる。中には建物の中へ入って行く人達までいて、驚きつつ周りを見回した私だったわ。

「市場が始まるまで準備に少し時間がかかるからな。どうする? 建物の中で待っていてもいいし、ここなら邪魔にならないから見ていてもいいぞ」

「せっかくなので、どんな風なのか見てみたいです。ここにいてもいいですか?」

 笑ってそう言うと、グレイさんも笑顔で頷いた。



 到着した商人さん達に、パムと一緒に男性が数名駆け寄って行き、笑顔で握手を交わした後に、その場に立ったまま数人の商人さん達と書類の束を見ながら真剣な様子で話を始めた。

「あれは何をしているの?」

「何って……ほら、以前地上の商人達との取り引きの時にも最初にやっていただろう? あれと同じだよ。お互いの欲しい物や、売りたい物なんかを、先にああやってある程度知らせて打ち合わせておくんだ。あの、今パムと話をしている黒髪で背の高い鷹族の男性が、ハリスと言って商人側の代表だよ。こっちもパムや世話役の何人かが、いつも最初にコロニーの代表として彼らとああやって交渉するんだ。実際の品物のやり取りは、ここではなくあっちの建物の中で行われる」

 そう言ってグレイさんが示したのは、本部棟と呼ばれる、このホームのいわば中心になる一番大きな建物。

 資材倉庫や食堂、氷室と呼ばれる冷蔵庫の部屋があるのもここよ。

 グレイさんに連れられて私がここへ来た時に初めて入った建物で、私の滞在を許してくれた長老と呼ばれる年配の方達がいるのもここ。

 ちなみに長老と呼ばれる人達は全部で十人ほどいて、基本的に彼らが相談しながらこのコロニーを運営している。選挙は無いけど、言ってみれば議会制民主主義に近いかな。

 もちろん誰でも長老になれるわけではなく、推薦人と呼ばれる人が最低でも三十人くらいは必要らしい。

 このコロニーには相当な数の人がいるので、その三十人の推薦人は少ない気がするんだけどね。

 この際だから、コロニーにいる人達全員で誰を長老にするのか決める為の選挙的なものをすればいいのに、ってちょっと思った私だったわ。



「それが全部終われば、俺達も参加出来る市場の時間になる。聞いているかと思うが、品揃えは凄いぞ」

 笑ったグレイさんが示す一角には早くもいくつもの屋台が組み立てられて始めていて、広い庭の一部はみるみるうちに本当に市場みたいになっていった。

 一応、取り扱う商品の種類別になんとなくお店が集まっている。

 様々な服や靴、装飾品を扱うお店もたくさんあるみたいだし、あのおしゃれなガラスの小瓶が並ぶ店は何? もしかして、あれが噂のお化粧品だったりするのかしら?

 興味津々で準備する商人さん達を眺めていると、どうやら話し合いは終わったらしく、パム達が建物の中へ下がっていった。

 それからしばらくして、ハリスさん達商人の代表の人達が建物の中へ入っていった。

 それと入れ違いになるように、建物の中にいたコロニーの人達がゾロゾロと出てくる。

「ええと、もう始まるのかしら?」

 お店の前まで進み出る人達も大勢いて、広かった庭はもう人で埋め尽くされているし、あちこちの店では早くも行列が出来始めている。

「売買が始まるのはもう少し後だが、皆、品揃えを見たいからな。じゃあ俺達も行こうか。何か気になるものがあれば、言ってくれればいい」

 笑ったグレイさんが左手を差し出してくれたので、頷いてその手を握る。

 手を繋いだ私達は、早くもお店を見て回る人達で大賑わいになっている市場の中へとワクワクしながら足を踏み入れたのでした。

 ううん、どんな物があるのかしら。楽しみだな〜〜!


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