BBQパーティー後半戦?
「待ってくれって! ってか、叩くな! 痛い!」
狩猟組のお仲間達に取り囲まれてバシバシと背中や腕を叩かれたグレイさんが、グラスを置いてそう叫んでいる。
でも、私の方も目を輝かせて集まってきたおばさま達に取り囲まれて揉みくちゃにされているので、グレイさんを助けに行く余裕なんて全くない。手にしたグラスのお酒をこぼさないようにするだけで、もういっぱいいっぱいだったわ。
「ねえ、それでなんて言って求婚されたの?」
「チムタムから聞いた話によると、一緒に手を繋いで飛ぼうって、グレイの方から言ったそうよ」
「きゃあ! 素敵素敵!」
「その言葉、私も言われてみたい!」
「それで今日、一緒に飛んでいったのね」
「きゃあ、素敵素敵!」
一人の女性が満面の笑みでチムタムから聞いた話をしていて、そしてそのまわりでは、おそらく十代後半の女の子達がそれはもうキラッキラに目を輝かせて素敵素敵と叫んでは歓声を上げている。
もう、私は多分、顔や耳どころか身体中全部が真っ赤になっていると思う。
恥ずか死ねるって、きっとこういう状態を言うのよね! もう、冗談抜きで穴があったら入りたい気分だわ。
結局、私達が解放されたのは、もうバーベキューパーティーも終盤に差し掛かった頃だったわ。
「ルリ、お疲れ様。はい、これは貴女の分だからしっかり食べてね!」
満面の笑みなチムタムが渡してくれたのは、一口サイズに切られた焼き立てのお肉が山盛りになったお皿。
いっそ清々しいくらいに、お皿にはお肉しか無い。
「ありがとうね。実を言うと、まだ何も食べていないからお腹ぺこぺこなの」
笑って素直にお皿を受け取り、早速食べ始める。
「んん、やっぱりワイバーンのお肉は美味しいわね」
スパイスを振って焼いているだけのシンプルな一切れが、もう最高に美味しい。
少し離れたところでは、ようやく解放されたらしいグレイさんもワルターさんから渡された山盛りのお肉を食べ始めている。確か最初は隣に座っていた筈なんだけど、いつの間にあんなに離れたのかしら?
「ルリ、食べているか?」
思わず食べる手を止めてグレイさんを見ていると、顔を上げたグレイさんが私の視線に気付いたのか、笑いながらそう言って自分のまだまだお肉が山盛りになったお皿を指さす。
「今、ようやくお肉にありつけたところです。やっぱりワイバーンのお肉は美味しいですね」
私も笑いながら、自分のお皿を指さす。
苦笑いして頷き合い、あとはそれぞれ黙々とお肉を食べたわ。
「まだまだあるから、しっかり食べてね! はい、これが串焼き肉で、こっちはタレに絡めて焼いたやつ。それでこっちがバター焼きね。足りなければ、追加を焼いてくれるから遠慮なく言ってね」
満面の笑みなリッティとパムが持ってきてくれた量を見て、思わず吹き出す。
「待って、待って。その量は、私一人では絶対に食べきれないわよ!」
次々にテーブルに置かれる山盛りの肉を見て、割と本気で叫んだ私だったわ。
「食べきれなければ収納しておけばいいわ。これはルリの分だからね」
これまた満面の笑みなチムタムにそう言われて、思わず到底食べきれない量のお肉の山を見る。
「収納しておけば傷む事もないからね。これから始まる二人での生活の足しにしてちょうだい」
にっこり笑ったパムの言葉に、唐突に真っ赤になった私だったわ。
そしてグレイさんにも今のパムの言葉は聞こえていたみたいでこちらもいきなり咳き込んでいて、大笑いするワルターさんに、また背中をバシバシ叩かれていたのでした。
「それで、この後の予定は決まっているのかい?」
グラスを手にしたパムが、そう言って私の隣に座る。
「ええと……」
そんな事を聞かれても、実際ようやく両思いになれたばかりで、それ以上の事なんてまだ何も分からない状態。
それを正直に言っていいかどうかの判断が私にはつかず、パム越しにチラリとグレイさんを見る。
グレイさんにも今のパムの声は聞こえてきたみたいで、少し赤い顔をしたグレイさんがこっちに向き直った。
「出来れば、早めに引っ越したいのですが、夫婦棟に空きはありますか?」
「もちろん。じゃあ管理担当に連絡しておくよ。ちょうど、明後日には商人が来るから、新居で必要なものがあれば二人で買うといいよ」
「そうなんですね。では楽しみにしています」
笑ってこっちに手を振ったグレイさんの言葉の意味が、ここでようやく頭まで届き、それと同時にチムタムとリッティの甲高い歓声が聞こえた。
そして、私はもう一回真っ赤になって恥ずかしさのあまりテーブルに突っ伏したのでした。
待って待って! いきなり押し寄せてくる怒涛の現実に、私の頭がついていかないわ!




