ホームへの帰還とBBQパーティー?
「おかえり〜〜〜! もっとゆっくりしてきてくれてもよかったのに!」
すっかり真っ暗になった中、無事にホームのある浮島上空まで戻った私とグレイさんを、満面の笑みのリッティが出迎えてくれた。
どうやら上空で私達が戻るのを待っていてくれたみたい。
そして、私が着ている服を見たリッティがもうこれ以上ないくらいの笑顔になり無言で拍手しているのを見て、私は耳まで真っ赤になったわ。
「ええと、一応確認だけど、二人は両想いになったと思っていいのよね?」
「ああ、二人で一緒に聖なるドラゴンに報告してきたぞ」
胸を張るグレイさんの言葉に、甲高い悲鳴をあげて私に抱きついてくるリッティ。
「おめでとう! ルリが妹になるなんて嬉しいわ!」
二人で一緒に聖なるドラゴンに報告してきた。これで意味は通じたみたい。
「ええと、改めまして、よろしくお願いします。お姉さん」
恥ずかしくて真っ赤になっている自覚はあるけど、一応ちゃんと挨拶しておかないとね。
空中で抱きつかれたままだったけど、なんとかホバリング状態のまま私がそう言うと、もう一度甲高い悲鳴をあげたリッティが私に抱きつきながら無駄にバタバタと翼を羽ばたかせる。
「おっと危ない。リッティ、はしゃぐ気持ちは分かるが無茶するなって」
流石にこれは支えきれずに姿勢を崩して落ちそうになった私とリッティを、当然のようにグレイさんが二人の腕を掴んで守ってくれた。
「ルリにそう言ってもらえる日が来るなんて! 我が弟よ、よくやったわ!」
笑ったリッティが手を離してくれたので、笑顔で頷き合った私とグレイさんは、リッティも加わった三人で、とにかくホームへ飛んで戻って行ったわ。
「おかえり。準備出来ているぞ」
「おかえりなさ〜〜い。もう準備万端よ!」
笑ったワルターさんとチムタムに出迎えられて、驚きすぎた私は咄嗟に返事が出来なかった。
何故かホームの庭にはいつもよりも多くの篝火が焚かれていて、大きなテーブルがいくつも並べられている。
そして、以前にも見た大きな焼き台がいくつも並べられて、そこでは分厚く切ったお肉や大きな塊の肉が焼かれていたんだもの。
「ええと、これは一体……?」
聞いていなかったけど、今夜はバーベキューパーティーをする予定だったのかしら?
首を傾げる私に、笑ったチムタムが教えてくれた。
「ほら、ルリが流砂に巻き込まれた後、かなり長い間入院していたでしょう?」
その通りだったので素直に頷く。
「その間に、一度地上との取引があったの。ちなみに今回は、落としたワイバーンは二頭だったの。もちろん、お肉はたくさん持って帰ってきたわ。でも、ルリは入院していたから食べられなかったでしょう? それで、せっかくだからもう一回お肉を焼く事にしたの。ほら、行きましょう!」
笑って手を引かれて、ようやく復活した私も歓声を上げてチムタムに続いた。
リッティとグレイさんも、その後に続く。
「ルリ〜〜早く早く! もう焼けてるよ〜〜!」
削ぎ切りにしたお肉を山盛りにしたお皿を両手に持ったチムニーが、笑いながらそう言ってくれる。
「ルリさ〜〜ん。串焼き肉もたくさんあるよ〜〜!」
「切ったお肉もたくさんあるからね!」
カーク君とキース君も、山盛りの串焼き肉とステーキサイズの切ったお肉がこれまた山盛りになったお皿を手に、こっちに向かって手を振ってくれている。
「ありがとう。うわあ、どれも美味しそうね」
周囲に漂う、焼けたお肉の香ばしい香りに思わず深呼吸する私。
隣では、グレイさんとリッティも深呼吸していてちょっと笑っちゃったわ。
お皿を置いて、また別のお肉を取りに行ってくれたチムニーとカーク君とキース君にお礼を言って、とにかく空いた席に座らせてもらった。
「はい、これもどうぞ。以前飲んだのよりもかなり酒精は弱いらしいから、これなら大丈夫かな」
苦笑いしたワルターさんが、大きな瓶を手にそう言って私にその瓶を見せてくれる。
「そうでしたね。前回飲ませてもらったお酒は、美味しかったんですけどかなり強かったみたいですし」
前回酔っ払ってリッティの部屋に泊まった時の事まで思い出してしまい、ちょっと遠い目になった私だったわ。
「そう言えば、あの聖なるドラゴンの声を聞いて思い出したけど、結局、あの時にもらった首飾りが私が飛べなくなった直接の原因だったみたいね」
ごく小さな声でそう呟き、今首にかけているタルカムさんと交換してもらった、以前のものよりもひとまわり大きな螺鈿細工のペンダントトップを見る。
「地上の妄執かあ……どういうものだったのかなあ」
「ん? どうかしたか?」
隣に座ったグレイさんが、急に黙り込んだ私を心配したのか、そう言って覗き込んでくれる。
「ああ、何でもないです。ちょっと流砂に巻き込まれた時の事を思い出していました」
誤魔化すように笑ってそう言うと、グレイさんは納得したのか一つ頷いてから大きなため息を吐いた。
「無事だったから良かったが、本当に知らせを聞いた時には気が遠くなったよ。タルカムには本当に感謝しないとな。ほら、ルリもグラスを」
ため息と共にそう言い、最後は笑顔でお酒の瓶を手にしたグレイさんが私にグラスを渡してくれる。
「ありがとうございます。ああ、これは発泡酒なんですね」
グラスの内側に小さな泡がいくつも付くのが見えて、思わず笑顔になる。
「これも、今回の取引で買ったお酒のうちの一つだよ。美味いぞ」
笑ってこっそり乾杯しようとした時、向かい側に座っていたリッティとチムタムが、グラスを高々と掲げながらいきなり立ち上がった。
「「じゃあ、相思相愛になったルリとグレイさんの二人を祝して、かんぱ〜〜い!」」
そして、大声でそう言ってグラスを打ち合わせたのよ。
その乾杯の声を聞いて、何故か周囲の人達から一斉にどよめきの声が上がる。
「おい、その話、詳しく!」
「お前、もしかして、聖なるドラゴン様のところへ行ってきたのか!」
「おい、この野郎! ルリちゃんに何しやがった!」
狩猟組のお仲間の人達なのだろう、大柄な鷹族の人達がそう言いながらグラスを手に駆け寄ってきて、グレイさんの背中や腕をバシバシと叩く。
あれ、冗談抜きで、本気で痛いだろうと思うくらいの音がしているわ。
ついでに言うと、私の周囲にもグラスを手にした女性陣が一斉に集まってきて、周囲は甲高い歓声に埋め尽くされたわ。
そして私とグレイさんは、そのまま揉みくちゃにされて周りの人達とはまた違う意味で悲鳴を上げる事になったのでした。




